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1-1

勇「よぉ、遂に来るな、転校生。」


緊張でお腹を壊し、大人しく席に着いていた慎一のところに、親友の日舘(ひだて) 勇気(ゆうき)がやってきた。


明らかにその顔は面白がっている笑みだ。


そう、充実した恋愛をスタートさせているクラスメイトにとって、慎一と転校生がくっつくか否かはただの面白イベントに過ぎないのである。


慎一はその余裕の態度に殺意が芽生えた。



慎「ワリィ、ちょっと腹痛いから…。」


勇「緊張しすぎだろお前。」


そう言って笑う。


慎『コノヤロウ…。』


早く何処かに行ってほしかったので、それからは何を言われてもだんまりをきめ込んだ。



そのうち勇気の彼女である蓮樹(はすき) 木葉(このは)が来ると、それ以上茶化しても無駄だと悟った勇気はそっちへ行った。



あとはただ、慎一の孤独な戦いだった。





十数分後、チャイムが鳴り、担任が入ってきて全員が席に着いた。


担「え~、今日は皆の新しい仲間が来ています。まぁ、皆の間でも結構噂になってたし、今更言うことでもないか。」



慎『ペチャクチャ喋ってないで早くその子を入れろおおおおおおおおおおお!!!』



担任のフレンドリーな口調でクラスが和む中、慎一ただ1人は鬼のような顔で担任を睨みつけていた。



担「んじゃ、早速入ってもらうか。」


慎『く、来るッ…!』


担「その前に室長、挨拶。」


慎『早速じゃな――――――――――い!!!』


木「きりーつ。」


朝から慎一の心がうざいぐらいに揺れ動く中、木葉の号令でいつも通りのやる気のない礼が終わる。




慎一の心臓は破裂せんとばかりに鳴っていた。




担「じゃあ南さん、入ってきて。」



慎一の緊張とは裏腹に、彼女はあっさりと教室に入ってきた。



















慎「………!」



















金髪で透き通ったサラサラの髪。





紺碧の大きな瞳。





白い肌。





どれを取っても慎一のストライクゾーンにどストレート(160km/h)で入ってきて、瞬時腹痛を忘れた。






慎「ま、マジか…。メッチャ綺麗じゃん…。」



慎一だけでなく、クラスの男子、更には女子までも魅了しながら、彼女はやわらかな笑顔で自己紹介を始めた。




咲「(みなみ) (さき)と申します。これからよろしくお願いします。」



声も、耳を癒すソフトなソプラノだった。





慎『あんな綺麗な人が俺みたいなのと付き合ってくれんのか…? …い、いや、弱気になっちゃだめだ! 絶好のチャンス、逃してなるものか!!』




慎一が決意を新たにしたとき、咲が一言付け加えた。


咲「それで、皆さんに1つお願いがあります。」



慎「ん?」











咲「私には、なるべく近づかないようにしてください。」











自然な笑みは健在だった。





しかし、教室中が凍り付いたのは言うまでもない。



無論、あれほど飢えていた慎一も例外ではなかった。




慎『近づかな……は? 今、近づかないでって言っ……は??』





慎一の望みは絶たれた。2秒で。



極度の人間嫌いかただの変人か、咲は転入直後に全ての人間との一切の交際を断絶したのだ。





担「…じ、じゃあ、とりあえず、南さんの席はあそこな。」



先生がうろたえながらそう言って指差すのは、慎一の隣の席だった。


慎「!?」


咲「はい。」


咲はあんな警告をしたというのに、涼しい顔で真ん中の一番後ろ、慎一の右隣の席までやってきて、おしとやかに着席した。




間近ではその魅力的なフェロモンが更に容赦なく降りかかる。








慎『あの一言さえ無かったら……。』





慎一はガッツポーズを取る予定だった心が体操座りしているのが分かった。









女神の計らいが裏目に出た。









悪魔が大爆笑していた。


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