scene 5
ヨーロッパの街並みを思わせる整頓された石畳の道を進み、開かれている街の門を抜けた二人は、15分ほど歩いた林にあるという教習所に向かって連れ立ってあるいていた。
街の郊外に広がる畑で働く人々や遠くに見える霧のかかる高い山、現実の日本では、特に都心では絶対に見られない光景だ。
VRゲームならそう珍しい光景ではないが、建物に囲まれていないこの開放的な感じがアルフは好きだった。
「すがすがしい空気だな、暖かいというより涼しいくらいの気温で気持ちいい」
「まあ晴れてるならいいけど雨が降ると肌寒いらしいぜ」
「雨? 雨が降るのか? VRなのに?」
「ああ、晴れ、くもり、雨、風、雷雨、霧、ランダムで切り替わる機能が付いているんだ。
まあ半分は晴れらしいが」
「すごいな、そうなると珍しい天気には珍しいことが起きたりしそうだな」
「ああ、噂じゃ霧の日にはレアモンスターが出るとかイベントが起きるとか言われてるぜ、それに月の満ち欠けやら季節やらいろいろな要素が有るからな」
「そりゃあいい、楽しみだ。だけどその前に…」
アルフは言葉を切って、視線を目の前の門に向ける。
「まずはチュートリアル、だな」
林を少し入った所にある和風の塀。中はうかがいしれないが、達筆な字でかかれた《教習所》の看板がここを目的地であると主張している。
「つーか何故に和風なんだろうなぁ?」
コタマルが首をひねる。
「さあ、造った奴の趣味なんじゃないか?」
「まあ和風の街もあるしおかしくはないのか?」
「いちいち製作者の思惑なんて考えてたら日が暮れる、さっさと入ろう」
そういってアルフは木の門を開けて中へ入る。
「なーにいってんだよ、そういうのを考えるのもゲームをやる楽しみの一つだろ」
それに続いてコタマルも中に入った。
中にもやはり和風の建物が建っていたが敷地の大部分は何もない更地でちょうど学校の校庭くらいある広場となっていた。
その広場では指導員らしき人物のもと10人ほどのプレイヤー達が思い思いに走ったり、何かを探したり、ウサギ跳びや腕立て伏せなどをしていた。
「なんか、イメージと違う…なんかこう、道場的な場所で木刀振り回す様なのを考えてた」
「まあここでやるのはチュートリアルとアビリティ取得だしなぁ。スキルはまた別の場所だよ」
「? それってどう違うんだ? 似たようなものじゃないか?」
アビリティとスキル、ゲームでは似たような位置付けの場合が多いと、アルフは思う。
「ここではアビリティとスキルは似ているけど違うんだ。簡単に言うならスキルはジョブに依存して、アビリティは人に依存するんだ。まあ詳しくはここの教導員に聞け。」
「意味がよくわからないぞ」
「オレが説明するのもいいけどもっと詳しい人がいるんだからそっちに聞いたほうがいいだろ? さあいこうぜ」
コタマルは校庭に歩いていく、アルフも仕方なく後を追った。
だだっ広い更地の中心に、NPCの教導員が立っている。
種族は猫系ビースト性別は女、背は160ほどで服は和風のアレンジがされた軽鎧。小柄だが活動的でじっとしていなさそうな雰囲気だ。
「すみません、あなたがここの教導員ですか?」
「ん? 見ない顔だにゃ、新人かにゃ?」
アルフが声をかけると彼女は耳をピコピコさせながらこちらを振り向いた。
赤い眼がアルフを映す。
「ええ、それでギルドの受付でここに行くことを勧められまして。」
「にゃる程にゃ。じゃあはじめましてだにゃ。わたしはニャムニャ、ここの教導員にゃ。
新人はいつでも大歓迎にゃ、最近は一時期に比べると受講者も減ったから、少し暇してたにゃ。それで何をするにゃ?」
にゃーにゃーいうニャムニャにちょっと胸をキューンとさせるアルフ。
彼は猫好きだった。
「あーチュートリアルを受けに来たんだけど」
仕方なくコタマルが後を引き継いだ。
「チュートリアルにゃ? 二人一緒に受けるかにゃ?」
「ああ、できるならそうしてくれ」
「わかったにゃ、ならさっさと始めるにゃ《コール》【黒板】【チョーク】」
そういうと彼女はステータスカードを呼び出し、アイテムイベントリから黒板とチョークを取り出した。
モチベーション維持のために面白いVRMMO系ネット小説を教えてくれるとうれしいです。
既読は
Atlus-Endless Frontier-
初めてVRMMOをやってみる。
Only Sense Online
ONLINE
R.G.O!
≠ Unknown World Online
フリーライフ ~異世界何でも屋奮闘記~
- Arcana Online -
エデン
Noir
です。
感想も待ってます。




