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scene 2

まるで空から自由落下しているような感覚。


「だ…………、で……?」


いつまで立っても地面にたどり着かない、終わらない浮遊感。


「だ…じ……です…?」


声が聞こえた。

だれかが呼んでいる?


「大丈夫ですか!」


俺は飛び起きた。



「よかった、うなされていたので起こしたのですが、大丈夫ですか?」


声の主は柔和そうな細目の男性だった。

白い布地に細かな刺繍が施された服を着ている。

イメージ的に近いのはゲームの神官服・・・そうだここはゲームだった。

石造りの部屋の中で、俺はベットで寝ていたようだ。

自分の姿を確認してみると、何やら曲線模様の入った薄い緑色の民族服と丈夫そうなズボンをはいていた。耳を触るとちゃんと長くなっている。

どうやらアバターはちゃんとしているようだ。

それにしてもVR世界で睡眠が可能だとは知らなかった。しかも夢まで見るなんて。

悪夢を見たのは絶対にガスパールのせいだとおもうが。

まったくなんなんだあの移動方法は、もっとましなのはないのか。


「あの・・・大丈夫ですか?」


「え? あ、はい、もう大丈夫です。起こしていただきありがとうございました」


なんにせよ冒険は始まっているのだ。そろそろストーリーを進めよう。

雪人はベットから立ち上がってみる。まだ倦怠感があるが問題はなさそうだ。しかし本当にVRなのか疑いたくなるほど体の感覚が現実と変わらない。


「すいません俺はどうしてここに? それにここはどこでしょうか?」


とりあえずは情報収集と、神官らしき青年に話しかける。


「ここはステイトにある教会です、ああ、ステイトは冒険者ギルドの本部がある街です。

あなたはこの教会の前に倒れていたので私が保護しました。

あっ、そういえば自己紹介がまだでしたね、わたしの名前はメルキオール。ここの司祭をしています。」


「そうですか、俺はゆき・・・いえアルフといいます」


「アルフさんですか。いいお名前ですね。それで、アルフさんは冒険者の方ですか?」

「ええ、まあ一応」


「もしかして冒険者ギルドに登録に来たのですか?」


「登録?」


「はい、冒険者として登録できるのはこの街だけですからね。違いましたか?」


「いえ、その通りです。」


次の目的地は決まりだな。

メルキオールの話を聞いて、アルフは頭の中でそう思った。


「そうですか、体も大丈夫そうですし、登録に行くのなら冒険者ギルドは外に出て右にまっすぐ行った先のつきあたりですよ」


「ありがとうございます、何から何まで世話になってしまって。」


「いいんですよ、迷えるものに手を差し伸べるのも教会の役割の一つですから。ではわたしはこれで」そう言ってメルキオールは出て行った。



「さて、と」


体をうーんと伸ばし、筋肉を解してみる。

筋肉が程よい痛みとともに引っ張られるが感じられた。

視覚・聴覚はともかくこういう肉体の感覚を再現するのは難しいと聞くが、あの直彦が言うだけあって体の感覚は痛覚を除いて殆ど現実と変わらない。

これは味覚も期待できるかもしれない、いやかなり期待できそうだ。


扉を開け外に出る。廊下には扉がいくつも並んでいる。ここは教会に住む人間の宿舎なのだろう。

あてずっぽうに歩いて行くと廊下を抜け外に出ることができた。


「これは・・・すごい!」

そびえる教会の荘厳なたたずまい、木々の自然な形、とてもVRとは思えない。

教会の門をくぐってもそれは変わらなかった。

様々料理の香りが漂う商店街を抜け、石畳の道路を走る馬車に驚き、NPC達のする雑談に耳をすませる。

そのすべてに眠っていた冒険心がくすぐられるようだ。

今すぐにでも走りだしたくなる気持。

わくわくがおさまらない。

だからこそまずは登録を済ませなければいけない。

アルフはほとんど走るように道を歩くのだった。


次回、アルフ冒険者となる。

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