第二話〜森〜
森の中は木や草が生い茂っていて、光があまり届かず昼でも暗い。
しかも、ちゃんとした道もなく目印がなければムアラの住民でも迷うかもしれないほどだ。
その森をアイル、エンナ、ムエカの三人は果実を求めて歩いた。
アイルは13の時に初めてこの森に行った時、動物に出会い危険な目にあった。
その時はムエカとサムルが一緒にいて助かった。
ムエカは18歳でアイルより3つ年上だ。
サムルは16歳。
アイルとエンナが15歳だ。
三人は目印を作りながら森の奥へ奥へと進んで行った。
だが、果実が見付からない。
すると、エンナが木を見回しながら口を開いた。
「果実…ないね」
「おかしい…。この前はかなりあったのに」
エンナがいるせいなのか知らないが、いつもからは想像出来ないくらい冷静に言うムエカ。
アイルは二人の会話には耳もくれずにどんどん奥へ進む。
「ちょっと、アイル」
「一人で行くな」
二人がアイルを急いでついていく。
アイルはエンナはともかくムエカのあれは…調子が狂う…なんて思いながら奥の木を見ると果実がたくさんなっていた。
「あった!!」
アイルが果実を見つけ叫ぶ。
アイルの声にあわせ二人も果実を見つけた。
「こっちにもあるわ」
「あったあった」
と、二人ともせっせと果実をとりはじめた。果実を取るには弓を使う。
だから、ムアラの人はほとんど弓の使い方がうまい。
アイルはこの場は二人に任せてもうちょっと奥へ行く事にした。
二人が夢中になっているすきに奥へ進んだ。
すると、何やらもう少し先の方から音が聞こえた。
何かの鳴き声みたいな音や何かを噛み砕いてるみたいな音だ。
アイルはなんだと思いながら恐る恐る音の方へと進んだ。
「なんだ……!?うゎ…わぁぁ!!!」
そして、目の前の光景に驚き声をあげた。
なんとそこには大きさがサッカーボールくらいの、目が大きく、口も大きく、するどい歯がぎっしりはえていて、耳も大きく、黒い見たこともない奇妙な謎の生物が二匹もいて、しかも動物を喰らっていたのである。
そして、叫び声に気付いた謎の生物がアイルを見て動物の血と肉でどろどろな口を開いた。
「人間じゃ…人間じゃ…。カイン様に知らせなくては」
そうにごった声で言った後、動物の死体だけを残し姿を消した。
そして、エンナとムエカがアイルの叫び声を聞き付けて急いでやってきた。
「どうしたの!?」
「大丈夫か!?」
二人が息を切らしながらアイルの方を見た。
尻餅をついてるアイルと食い散らかされた動物の死体。
エンナがおもむろに口を開いた。
「アイル…何て事を」
エンナは視線を反らし震えた声で言った。
アイルも震えた声で否定した。
「俺…じゃない」
「そんなに腹が減ってたのか」
ムエカが口を開いたが誰も聞いてなかった。
しばらく沈黙が続いた。
アイルは落ち着いたのか今見たことを説明した。
「……一回村へ帰りましょ」
「そうだな」
二人はあまりにも衝撃的で動揺していたが、アイルのさっきの様子からしてまんざら嘘じゃない気もしていた。
そして三人はたくさんの果実を持って村へ帰った。