第一話〜頼み〜
人間とは何だ。
下等な生物め。
俺は人間じゃない。
俺は神だ。
小汚い部屋。あちこちに物がちらばっていて、何が何だかわからない。
その汚い部屋にある机で男は本を読んでいる。
カーテンのない窓から朝日がさしこむ。
そして、その部屋にいた一人の少年が目を覚ました。
「ふぁぁ…」
あくびをする少年に男は本を閉じ口を開いた。
「やっと起きましたか。」
「ん…?…サムル!?なんでここに!?」
「いやぁ、あなたに伝えなければいけない事がありまして…」
少年がサムルという男に驚くと、サムルは冷静に、そして真面目な顔をして言う。
「ライラさんがお呼びですよ。…一時間ほど前から」
にっこりいたずらっ子を思わせるような顔で笑いながら言い最後の一言は小声で言う。
「サムル……覚えとけよ…」
少年は一言残して部屋を飛び出し走り出した。
少年がいるここはムアラという村。
ムアラは森の奥にあり、村の住人以外は誰も村に来る者はいないくらいの辺境の地だ。
少年はそこの住人だ。
そして今、少年を呼び出しているライラ。
このライラという人には、少年はいつも世話になっている。しかも怖い。
少年はライラのいる家に急いだ。
(そういや…変な夢だったな…)と思いながら。
と…その時、走る少年の前に急に男が現れた。
「おぉー、アイルじゃないかぁ!!なぁにしてるんだぁい?」
陽気すぎる感じで話しかけてきた男はムエカ。正真正銘のバカ男である。
少年アイルにはこんな奴かまってる暇はなかった。
「わりぃ、急いでんだ。」
そう言ってまた走り出した。
「あ〜つれないねー」
なんて言いながらムエカは自分の家へ帰って行った。
アイルは一度振り返りムエカがいない事を見て(何をしたかったんだ)なんて思っていた。
そしてやっとライラのいる家についた。
アイルは恐る恐るドアを開けた。
「…あのー」
「おそーい!!どれだけ待たせるつもりだぁ!!何してたんだぁ!!」
アイルがドアを開けたとたんにライラの怒鳴り声が耳に飛込んで来た。
「いやー…ちょっと…睡眠を…」
「ほぅ、なら私が睡眠を捧げようか?」
頭をぽりぽりかきながら言い訳しようとするアイルに満面の笑みでライラが言う。
アイルが苦笑ししばらく沈黙が続いた。
すると、ライラが口を開いた。
「たく…今回は多目に見てやる。」
「ほ…。あ…で、何の用なんだ?」
一安心して話を変える。
「あぁ…お前に頼みたい事があるんだ」
ライラはそう言いながら何かを取り出した。
「剣?何か狩るのか?」
ライラが取り出した剣を見ながらアイルは聞いた。
「いや…森の果実を取ってきてくれ。ムエカとエンナを連れてな」
ムエカの名前を聞いてものすごく嫌な顔をするアイルにライラは言った。
「エンナを連れてくんだぞ」
エンナはアイルと同じ年の女だ。おとしやかで静かな感じの女。
何故かエンナの前ではムエカはおとなしくなる。何故かはわからない。
「しょうがないな…」
アイルが何故か調子に乗る。
ライラはおもむろに剣を握った。
そして三人は森へ出かける事になった。