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一人百物語 2

ストンと

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/08/08


昼休み、昼食を終えた赤尾さんが会社のビルの玄関先まで帰って来ると、赤尾さんの先輩が出かけてゆくところだった。

「行ってらっしゃい!」

と赤尾さんが声をかけると

「おぉ!」

と先輩は一度振り向き手を振って、通りを歩いて行った。

赤尾さんが数メートル離れたところでその姿を見送っていると、先輩の背後の右斜め上あたりから何か黒い物が飛んできて、そのまま先輩の背中の真ん中あたりにストン、と吸い込まれる様に消えてしまった。

それは小型犬くらいの大きさで、頭部らしき部分は人間の握り拳くらい、胴体の三倍以上はあるひょろ長い手足の、ゴワゴワとした黒い毛並みの、猿の様にも見えるものだった。尻尾は無かった。

黒い姿は宙でわぁっと異様に長い手足を伸ばしてX字形になり、先輩の背中に一瞬へばり付くと、そのまま背中へと入り込んでしまった。

赤尾さんは驚いて数歩先輩の方に歩み寄ったが、先輩は知らずにそのまま行ってしまった。


その後、先輩に異変はないらしい。



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