第1飛 両親は私と同年代
「華菜ー、ご飯よー」
「はーい」
私は如月華菜、十二歳。
ちょっと機械が好きな普通の女の子。
ただ、とある事件をきっかけに私はその世界に深く入り込むことになる……。
「華菜はまた機械を?」
「自分の誕生日なのに籠りっきりで。
あの子の機械好きにも困ったものですねー」
隣の部屋からお父さんとお母さんが私のことを言っている。
だって機械が好きなんだもん、いいじゃない。
みんなが寝静まったら私の時間。
ちょっと自作の二輪車を走らせてラボへ。
そのときに前兆が起きた。
ガスの匂いがしない?
その時は深く考えずに家を出た。
ラボについてしばらく作業をしていたら何かが爆発する音がした。
それも大きい。
ラボまで揺れた。
嫌な予感がして家に向かうと……、多くの人だかり。
家がなかった。
遠くからサイレンの音がする。
何故かラボに行かなければいけない気がした。
ラボに戻っても現実を受け入れられず、
しばらく私はぎゅっと目を閉じてずっと息を殺していた。
朝になって、何をしたらいいか理解していない私の脳裏に浮かんだ一つの思考。
お父さんとお母さんを生き返らせよう。
その日からラボにこもりきりで機械と向き合う日々。
ひとつの機械が出来たら、その機械に機械を作らせる。
そんなことを続けて三か月。
出来た、出来てしまった。
タイムマシンが。
検証をしている暇はない。
あまりにも行くのが遅くなると未来が不確定になって、
お父さんもお母さんも生き返らせることができなくなる。
私は思い切って機械に乗り、スイッチを押した。
しばらく機械音がしていただろうか。
静かになったと思うと、外に出てみる。
……機械は煙を上げて壊れている。
粉々になっていて一人で直すのはちょっと難しそうだ。
家は? ここはどこ?
記憶の風景を頼りに家に向かうと私の思い描く家はなかった。
「ここは……、どこだろう」
「あら? 迷子ですか?」
振り返ると、私と同じくらいの女の子。
顔を見るとどことなく母に似ている気がする。
「あ。私、如月華菜って言うんですけどここがどこか分からなくって……。
お名前を伺ってもよろしいですか?」
「珍しい格好をしていますね……?
私、結月華澄って言います」
「ゆいつき……? かすみ……?」
「はい」
名字は旧姓だとして、華澄という名前に心当たりがある。
「……おかあ……!」
「ん?」
「ぐっ……、違う。ごめんなさい。
よく分かんなくてパニックになっちゃって……。
今って何年ですか?」
「一九九五年ですよ、どうかしましたか?」
「あー……、いえ」
過去には飛んでいたらしい。
私の居た時代は二〇二九年だった。
「……何か、私自身を見ているようですね。
よく似ている気がします」
「そ、そうですか? あははは……」
「華菜さん、お住まいはどちらなんですか?」
「あ、あれ、どこだろうな……?
ここに来て右往左往してて……」
「良ければ私の住んでいる教会に来ませんか?
施設長には私から話を通しますから」
「お邪魔じゃなかったらお願いしたいです……。
行くところが本当に無いので……」
教会。
「施設長、お話があります。」
「華澄さん、どうかしましたか?」
「華菜さんという方が、迷われています。
しばらくこちらにおいていただくことはできませんしょうか?」
「えぇ、構いませんよ」
「……? 理由は聞かれないのですか?」
「真面目なあなたがお願いをすることが珍しいですからね。
余程の事だと思いました。
ただ、責任はしっかり持つのですよ?」
「ありがとうございます!」
廊下を歩きつつ。
「あのー。おか……、じゃない。華澄さん?
どちらへ?」
「私の部屋と共同にしましょう。
結構広いんですよ?」
「あ、はい。」
部屋について。
「持ち物はないんですか?」
「そもそも何も持ってきてなくて……」
「もってきてない?」
「あ、いや、その、落とした?」
「ふふ、そうですか」
「華澄さん、おいくつなんですか?」
「十一歳ですけど……、同じくらいですよね?」
「同じくらいだね……。
私よりしっかりしてるなぁって……」
「そうですか?」
「昔から今とそんなに変わらないんだなって」
「え?」
「あ、違う。慣れないなこれ」
「余程の何かがあったんですね。
結構混乱されているように見えます」
「あはは、まぁ、あはは……」
「では次は私から聞いちゃおうかな?」
「ん?」
「華菜さんは名字は何と仰るんですか?」
「如月だけど……?」
「となるとお父様が如月姓……、とも限らないんですね。
失礼いたしました」
「ううん、お父さんは如月瞬だから如月姓だよ」
「何という偶然でしょう。
私の通っている学校に同姓同名の方が見えますね」
「げ! 同じ学校だったんだ!?」
「はい?」
「あぁ、違う!
両親の馴れ初め話を聞いたことないんだよ!」
「あの、馴れ初めって……?」
「あぁあぁあぁ……!」
「くすくすくす。
華菜さん、面白いですね」
「ご、ごめんねぇ……。」
「人にはその時を生きなければならない理由があります。
それは私も、華菜さんも。
どこから来てどこへ向かうのか私には分かりませんが、
華菜さんの行く先に大いなる光があらんことを」
「っ」
「華菜さん?」
目を丸くする華菜に華澄が首をかしげる。
「華澄さん、もうこの年齢の時からそういう考えだったんだね。
うん、素敵だと思う」
「華菜さんも面白い考えをされるようですので」
「わ、私のはいいんだ」
「何か……」
「ぎく」
「ううん、私の気のせいでしょう。
学校はどこに通われているんですか?」
「粟冠小学校だよ」
「……?」
「あれ?」
「この辺で小学校って言うと、滝川小学校しかないんですけど……?」
「はれ? そんな話あったかな」
スマホを取り出す華菜。
「あー。圏外かぁ、ここ」
「何ですか、その四角い機械みたいなもの」
「スマホだよ」
「すまほ……?」
「し、しまったー!」
画面を落としてポケットに仕舞う華菜。
「な、ないなーい……」
「あははははっ! 華菜さんおもしろーい」
「面白いかなぁ……?
あ、滝川小学校だっけ?」
「ここから歩いて十五分くらいですね」
「粟冠小学校もその辺りだな……。
ひょっとして名前が変わったのかな」
「あははは、華菜さんったらー。
いくらここが田舎の学校だからってそんなすぐに名前が変わるなんて」
「そ、そうだよねー!」
「でも同じくらいの距離に粟冠って地域は確かにあるんですよね……」
「ぎっくー!」
「華菜さん、不思議な方ですね」
「変わり者だとはよく言われるけども……」
「機械がお好きなんですか?」
「それは凄く」
「……ん? 指輪をされているんですか?」
「あー、これー?
スマートリングって言って心拍数だったり体温をって、こらーっ!」
「あははははっ!」
「華澄さん、私おかしいよね!?」
「不思議だとは思いますけど、おかしいとまでは」
「そ、そう?」
三十四年も巻き戻った私。
徐々に慣れていくしかないけど、うまくいくだろうか……?
今から自分のミッションに不安を感じるようになってきた。
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