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Carmilla! 〜Crimson Lip Like Blood〜  作者: 隠埼一三
Episode Ⅰ 『彼女の唇は鮮血のように赤く』
2/14

1-2⊕

「私、吸血鬼と人間のハーフなんだ──」


 その衝撃的な告白を本人の口から聞いた恭介は、にわかには信じられず、戸惑っていた。

 常識に照らせば、そんな話は冗談と受け取るべきだろう。だが、彼女は笑いもせず、ごく自然な口調でそれを口にした。からかいや演出のような気配は微塵もなかった。


 伝説や民話の中にしかいない存在が、まるで現実に存在するのが当たり前かのような振る舞い──それが恭介の理解を遠ざけていた。

 見た目はすごくすごくかわいいが、実はネジが一本抜けたおかしな子なのか。それとも、自分を本気で吸血鬼のハーフだと信じ込んでいるだけの天然か。

 どちらにしても、「自分は吸血鬼の血を引いている」なんて平然と言ってのける人間を、まともに相手にするのは気が引ける。普通は、そう考えるだろう。


 そんなことを思いながら、恭介は深憂の家の前で、冷たい玄関ドアと無言のにらめっこを続けていた。

 腕時計に目を落とすと、時刻は朝の7時40分。彼女と一緒に登校しようと、いつもより早めに家を出てバイクを走らせたのだった。眉間には、深く険しいしわが刻まれていた。


 悩みの種は、彼女が頭のおかしな人だからでも、吸血鬼とのハーフだからでもなかった。もっと単純なこと──どうやって彼女を「一緒に学校行こう」と誘うか、それだけだった。


(そりゃ、ちょっとは気にしたけど……深憂さんは深憂さんだしな)


 結局、彼女が何者かなんてことは、恭介の中ではどうでもいいことになっていた。

 思春期真っ只中の彼にとっては、彼女が吸血鬼だろうが妖怪だろうが関係ない。そんなことより、彼女と並んで歩くことの方がずっと大事だった。


 緩んだ制服のネクタイを、ぎゅっと締め直す。緊張で何度も手を握り直していたせいで、ゆるんでしまっていたのだ。

 一度大きく深呼吸し、気持ちを整える。


(よし、行ける……!)


 自分にそう言い聞かせて、インターホンのボタンを押す。今度は、指先も震えていなかった。


 チャイムが鳴って数秒後、スピーカーから深憂の声が聞こえた。


『はーい?』

「あ、深憂さん。おはよう。俺です、恭介です」

『恭介君? ちょっと待ってて、すぐ制服に着替えるから!』


 声とともにインターホンが切れ、玄関の奥からドタバタと音が聞こえる。

 ほどなくして、鍵がガチャリと開いた。


 ドアがゆっくりと開いていく。軋む蝶番の音とともに広がる隙間──

 そして、恭介はその光景を見て、言葉を失った。正確に言えば、見えなかったことに驚愕したのだ。


「おはよう、恭介君」


 明るく響く声。しかし、彼の視界には、その声の主の顔がなかった。

 深憂の頭部が、そこにいなかった(・・・・・)のだ。


 制服のスカートからは、白い脚がすらりと伸びて立っている。

 しゃがんでいるわけでもなく、上半身を前傾させているわけでもない。

 ──そもそも、その場には、腰から上の上半身(・・・)がなかった。


 深憂の下半身だけが、器用にローファーを履こうとしていたのだ。


「み、深憂さん……あ、あわわわ……」


 恭介は、頭から肩、そして太ももにかけて血の気が引いていくのを感じた。

 彼の顔は見る見るうちに青ざめていった。


 だが、それも無理はなかった。

 心臓も脳も存在しないはずの下半身が、元気に動き回り、しかも明るく会話しているのだ。


「どうしたの?」


 心配そうに問いかける下半身に、恭介はおずおずと尋ねた。いや、そもそもどこから声が出てるんだ。


「ど、どうしたって……こっちが聞きたいよ。深憂さん、上半身は……?」

「上半身……? ああ、これ?」


 深憂の足先が、くいっと踵を上げて見せる。


「ほら、私、吸血鬼と人間のハーフじゃない? 上半身は吸血鬼の血、下半身は人間なの」


 それをさらりと言ってのける彼女に、恭介は言葉を失った。

 上半身と下半身で種族が違い、それぞれ独立して動くなんて……。もはや変形ロボの一種かとさえ思えた。


 混乱する頭で、彼はさらに尋ねる。


「じゃ、じゃあ……上半身はどこに?」

「えっとね、上半身はね……」


 彼女の足先が、ちょいちょいと恭介の後ろを指した。


 ふと、恭介が振り返る。


 ──その瞬間。


 がしっ、と肩を掴まれた。

 振り向いた先には、深憂の不敵に笑う顔が、至近距離で迫っていた。

 開いた唇からは、鋭い八重歯がきらりと覗いている。


 間違いない。吸血鬼の血を持つ深憂の上半身だった。


「動かないでよ、恭介君」


 その細い腕が、信じられないほどの力で恭介の肩を締め上げる。

 背後から、彼女の下半身の声が言った。


「あたしの上半身、今から食事タイムなんだ。だから、大人しく食べられてよ」


 脚が、するりと彼の足に絡みつく。


 逃げ道はなかった。

 口を大きく開けて迫る彼女の上半身が、笑いながら言った。


「いっただきまーす!」

「深憂さん!? お、お願いだからやめてくれ! う……、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 恭介の絶叫が、マンションの廊下にこだました。


     ◆


 枕元から響くアラーム音に目を覚ますと、そこは見慣れた自室のベッドだった。


「……夢、か。いや、でも夢見悪すぎ……。下半身が人間で上半身が吸血鬼って、そういうハーフ? ……どんな夢だよ……」


 疲れているときによく見る、意味不明なくせに妙にリアルな夢。その原因は、今も鳴り続けるスマホのアラーム音に違いない。


 けたたましい大音量で流されるそれに乗せて響く、ダミ声のボーカルの身体の下半分さえあればいい的な歌詞を執拗に繰り返す。

 早朝に聞くにはあまりに露骨で、今のご時世なら間違いなく放送コードに引っかかりそうなレベルの曲だ。

 それが小鳥のさえずりと絶妙にミスマッチを起こして、完璧な朝の地獄ミックスを奏でていた。


 ──最悪だ。


 恭介はうんざりしながら、重たいまぶたをゆっくりと持ち上げた。


 まとわりつくような眠気。布団のぬくもりが、世界でいちばんの安らぎのように思えるこの朝に、平穏をぶち壊してきた爆音の正体。


 寝ぼけ眼のままスマホに手を伸ばし、画面を見ると──やはりアラーム音が勝手に変えられていた。

 よりにもよって、「実際に曲を作ったら微妙にデスメタルっぽく無くなった某悪魔系デスメタルバンド」の、あの曲。しかも、かなり古い。だいたい自分が生まれてくる頃合いの年代の作品だ。


 おじさんの家にあったCDをたまたま見つけ、なぜか妹がドはまり。そこから原作漫画や映画やアニメまで付き合わされて記憶に刷り込まれたが──

 今どき知ってる人間がどれだけいるんだって話だ。


 夢の内容を思い出しながら、恭介は深くため息をついた。


「……最悪の目覚めだ……」


 そして──どうせこんなくだらない悪戯を仕組んだのは、あいつしかいない。


 確信は疑う余地もなく脳裏に浮かぶ。

 それだけで怒りが再燃し、眠気など吹き飛んだ。


 布団を跳ね除け、勢いよくベッドを飛び出す。部屋を出ると、隣のドアへノックもなしに突撃。

 ノブをひねり、全力でドアを開け放った。


 ──バン!


 アクション映画さながらの音を立てて開いたドアの向こうから、甲高い悲鳴が炸裂する。


「きゃあっ!?」


 その声の主は、恭介の一歳下の妹、陽子だった。


 目を丸くして口を半開きにし、まるで幽霊でも見たかのように兄を見上げている。


 だが、これは別に彼女が着替え中だったとか、風呂上がりだったとか、そういうやましい状況ではなかった。


 ──それはそれで恭介的には助かったが。


 むしろ、今の妹の姿の方が、ある意味で数段おかしい。


 鍔の広い黒の三角帽子に、パジャマの上から羽織られた野暮ったい黒マント。とどめに正座。そして、部屋の中は──


 真っ黒な壁紙とカーテンに覆われた空間。四隅には蝋燭が立てられ、淡くゆらめく灯火が、室内を不気味に照らしていた。床の中央に広がる赤いカーペットには、複雑な文様の魔法陣が丁寧に刺繍されており、そこだけが異世界のような雰囲気を漂わせている。


 そして極めつけは、魔法陣の中心にぽつんと置かれた──


 男物のトランクスである。


 しかも、どう見ても自分のものであることに、恭介はひどく遅れて気づいた。


「……」

「……あの、えーと」

「……」

「あの……、お兄ちゃ……?」


 何かを言いかける妹の声を、恭介は完全に無視した。

 無言のまま、彼はそっとドアを閉めた。


 カチャン。


 静かに閉じたドアの前に立ち尽くし、腕を組み、しばらく考え込む。


(……わけがわからない。なんで朝っぱらから妹は俺のパンツ使って儀式みたいな事をしてるんだ……?)


 それが、今の彼の脳内を支配する、偽りなき率直な感想だった。


 目覚ましの爆音、卑猥な歌詞、悪夢、そしてトランクス。組み合わさったピースは一つとしてまともなものがない。


 恭介は頭をかきながら、考えるのをやめた。というより、寝起きの脳では処理しきれなかった。思考のギアが空回りしすぎて、バウンバウンと空ぶかし音を立てながらもはや珍走族の騒音レベルで頭の中がうるさくなっていた。


 もう一度、意を決してドアを開ける。


「きゃあっ!?」


 同じリアクションを、同じトーンで繰り返す妹。


 恭介はそれを完全にスルーして、今度は眉間にしわを寄せ、重々しい口調で告げた。


「陽子、言いたいことは……いろいろあるんだけどな……」

「う、うん……」


 静かに、しかし確実に、怒りのスチームがこめかみから噴き出す恭介。その口から、今さっき頭の中を回っていた疑問と怒りを、勢いよく吐き出した。


「何で俺のスマホの目覚ましが、あんなひどい歌詞の曲に変えられてんだよ! おかげで凶悪に目覚めの悪い夢見たぞ、バカヤロォッ!! しかも選曲が(ピー)ス豚交響曲ってなんだよ!? お兄ちゃんを異常(ピー)欲者にでも仕立て上げたいのか!?」


 怒涛の第一声。なお、目覚ましはすでに止まっている。


「ていうか、何で俺のトランクス持ち出して怪しげな儀式とかしてるんだよ! しかも今時、黒マントに三角帽子? 怪し過ぎだろ! コスプレするならせめてゴスロリ程度にしなさい!」


 怒涛の第二波。


 その言葉をぶちまける恭介の様子は、まるで機関銃だった。正確に言えば、弾の代わりに不満と疑問と羞恥と軽い絶望が詰め込まれているタイプの、極めて個人的なマシンガンである。


 彼の足元には、すでに精神的なストレスによって生み出された涙の滝が、床に琵琶湖を再現している心境だった。大袈裟ではなく、本気でそう思っていた。


「お兄ちゃん、言ってることが支離滅裂だよ。とりあえず、おはよう」


 そんな兄の心の嵐を前に、妹──史門陽子は、まるで小鳥のさえずりのように軽やかに、笑顔とともに手を振ってきた。


「……おはよう」


 恭介はぶすっとした顔のまま、それでも律儀に挨拶を返した。


 史門陽子。恭介の一歳下の妹にして、自宅における混沌とトラブルの供給源。


 両親は、太陽のように明るく育ってほしいという願いを込めて「陽子」と名づけたが、その願いは……一応、半分は叶っている。確かに陽子は明るい。常に前向きで、朗らかで、人懐っこい。


 問題は、その明るさがオカルトというジャンルとがっちり手を組んでいることだった。


 陽子は幼い頃から、魔法や伝承、都市伝説に怪談、UMAに心霊現象といった裏世界に異様なほどの執着を見せてきた。年齢を重ねてもそれはまったく収まらず、今では高校のオカルト研究部で部長を務めるほどの筋金入りである。


 そんな彼女の部屋は、もはや一種の異空間だった。壁には黒いタペストリー、棚には意味深なマークが刻まれた魔導書。ろうそくが灯り、胡乱な石が並ぶテーブルでは、今日も儀式が行われている。


「また妖しい実験かよ……」


 恭介は溜息交じりに眉間を揉んだ。

 すると、陽子が得意げに人差し指を立てて叫んだ。


「わかってないなぁ、お兄ちゃんは! これは実験じゃなくて黒魔術! ブラックマジックってやつ!」

「お前が勝手に入部届け出して、無理やり俺をオカ研に引きずり込んだんだろ。しかもなんで俺のトランクスを……なんだこれ、祭壇? ──の中心に据えてんだよ……!」


 指摘された陽子は、悪びれもせずにあっけらかんと答える。


「だってお兄ちゃんが、××(ばきゅーん)くれないからでしょ。だから代用品として、香りのついたトランクスでどうにかなるかなって思って……」


 バキューン。あるいはピー音。

 どこからか効果音が響いたような気がした。ともかく、年齢規制的に言葉にできない類の言葉だ。


 陽子の口から飛び出したのは、思春期の少女が口にするには躊躇われるような単語だった。伏字の中に入るのは、生物の教科書でもお馴染みの、植物における雄しべの発生させる花粉的なアレである。


「陽子な……女の子がそんな言葉を平気で言うんじゃありません」


 恭介はこめかみを押さえてうめいた。


「だって黒魔術の材料って決まってるんだもん! 頼めそうな男性って、お兄ちゃんしかいないし」

「おい……紙コップ渡されてお願いって言われてもな。簡単に『はいどうぞ』って差し出せるわけないだろうが。しかも妙に生々しいわ」

「だから、私が出す(・・)の手伝ってあげるって、いつも言ってるでしょ? ほんと、お兄ちゃんってばケチなんだから~」


 陽子が唇を尖らせて、ぷいと顔をそむける。


 その姿は、一見すると小動物のようで可愛らしくもある……が、口から出てくる言葉の内容が全てをぶち壊していた。


「バ、バカ野郎! ケチとかそういう問題じゃないだろぉぉぉぉッ!」


 顔を真っ赤にして叫ぶ恭介に、陽子はケラケラと笑った。


 妹として兄が好き──という話だけなら、微笑ましいもので済んだかもしれない。

 しかし、陽子の好意は時としてスレスレどころか明確に越境してくる。はっきり言えば、これは逆セクハラだ。


「で、今日も朝っぱらから何の儀式なんだよ……」


 恭介が頭をかきながら尋ねると、陽子は「そうそう」と頷いて、マントの内側をごそごそと探り始めた。


「これなんだけどさ!」


 彼女が取り出したのは、くしゃっと折り曲げられた新聞の切れ端だった。


 地元紙『森彼方新聞』。地域密着型の紙面で、よく地元野球チームの話題や温泉の特集が組まれるが、たまに飛び抜けたゴシップ記事やオカルト記事が載ることで有名である。


「現代の吸血鬼か? 変な記事だな……なんだよ、これ」


 恭介は眉をひそめながら記事を読み始めた。


 現代の吸血鬼か? 女性会社員変死


 昨日午前八時ごろ、森彼方南公園にて「女性が倒れている」との通報が、散歩中の男性から110番で寄せられた。

 静岡県森彼方署の警察官が現場に駆けつけると、市内に住む会社員・原田まゆみさん(26)がベンチの上に倒れており、病院に搬送後医師により死亡が確認された。

 まゆみさんの首筋には、太く鋭利な針のようなもので刺された痕が二つ。これを受けて、県警捜査一課は殺人事件として捜査を開始している。


 調べによれば、まゆみさんは出血多量による失血死と見られている。しかし不可解なことに、現場には出血の痕が一切残っていなかった。

 顔面蒼白、まるで全身の血が抜き取られたかのような状態で発見されたという。

 この異常な状況に、一部の署員の間では「吸血鬼の仕業ではないか」という冗談めいた声も上がっている──

 


 恭介はその新聞記事を前にして、目を瞬いた。まるで脳に直接冷水をぶちまけられたような、そんな衝撃だった。


 当然だ。

 つい昨日、彼は「自分は吸血鬼と人間のハーフだ」と名乗る人物と実際に出会っていたのだから。


 その記憶が脳裏によみがえると同時に、背筋に嫌な汗がにじんだ。まさか、あの人が……?


「ね、ね、面白そうな記事でしょ?」

 

 隣で新聞を覗き込んでいた陽子が、にこにこと笑いながら声をかけてくる。

 

「今日の部活、この吸血鬼事件を調べてみようと思うんだけど──って、お兄ちゃん、聞いてる?」


 反応を見せない兄に向かって、陽子が頬をちょいちょいとつつく。

 

「むぅ~……無視しないでよー……」

 

 ぐいぐいと執拗に突っつき続けるその指先を、恭介はまるで感じていないかのようだった。

 彼は手にした新聞をただじっと凝視し、呟く。


「……まさか、な……はは……」


 乾いた笑いが漏れる。

 だが、胸の奥に広がっていたのは笑いとは程遠い、重たく黒い予感だった。

 そんなはずはない。

 深憂さんが、あんな優しい性格の人が、こんな事件を起こすなんて──。

 そう思いたかった。そう信じたかった。理屈ではなく、感情がそう叫んでいた。


「お兄ちゃん……? 一体どうしたの?」

「ん、あ……いや、なんでもないよ」

「……変なの」

 

 陽子は首を傾げるが、恭介は首を振って誤魔化した。

 

「本当に……なんでもないんだ」


 陽子の疑念をかわすように話題を切り替える。


「それで、お前。オカ研の活動でこの吸血鬼事件を調べるのは分かったけど、さっきの儀式は何だったんだ? 何かの願掛けか?」

「ううん、違うよ」


 そう言って陽子は、魔法陣の中央に鎮座していたアレ(・・)をつまみ上げる。

 ──恭介のトランクスである。



挿絵(By みてみん)



「こうやってね、お兄ちゃんの香りを嗅いでテンション上げてたの。ふわぁ~……ムラムラするぅ~」


 満足げにそれを顔に押し当てて深呼吸する陽子。頬を緩ませながら、恭介に甘ったるい視線を向けた。

 恭介の脳内で、プツンと何かが切れる音がした。


「ばっ……!」


 顔から火が出るほど赤面しながら、拳をぎゅっと握りしめる。


「バッカ野郎おおおおおぉぉぉぉぉッ!! それのどこが黒魔術の儀式なんだよおぉぉぉぉぉッ!!」


 その声は、朝の空気を突き破る雷鳴の如く響き渡った。

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