第2話 エッチなやつでお願いします
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話をしよう。
魔王とは、恐怖である。
魔王とは、絶望である。
魔王とは、人類を脅かす絶対の災厄に与えられる称号であり、
“人を滅ぼす魔法”の擬人化である。
こんなものに対抗するには……、
……それこそ、喜劇の世界の住人のような、ふざけた存在でもない限り不可能だ。
我々はただ、滅びを待つしかないのである。
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およそ人体より発せられる芸術的な美しき駄音が鳴り響く。
極限まで我慢した後のトイレというのは、どうしてこんなにも心地よいのだろう。
カランカラン。
ジャー、ズゴゴゴゴ、ボットン。
そうして汚いメロディが終了した後、ようやく本題に入ることが出来た。
「……えっと、話を纏めると。
その異世界はレベルやステータスっていう、RPGみたいなシステムがあるファンタジー世界で、
定期的に活動する魔王軍に対抗して、他の世界から勇者となる人間を召喚するって話ですよね?」
トイレの後始末を終えた俺は、水道で手を洗いながら女神様の説明を纏める。
すると左側から、清純で可憐な声が引き気味に返って来た。
『……はい。
今回はこちらの世界のとある学級を対象に魔法陣が展開され、その場にいた39名の人間が、勇者として召喚されていかれました。
それが……黒江幸輝さん、貴方の所属するクラスだったのです』
女神様はトイレの入り口近くで、ふよふよ浮きながら補足する。
ちなみにまだ鼻をつまんでいたので、若干鼻声だった。
「なるほど」
俺は脳内で今しがた言われた事を要約する。
教室にいた39名の人間。
要するに学校のクラスメイト達と先生が、まるごとファンタジー世界に飛ばされた、と。
「おお……」
なんか人数的にハブられている奴がいるような気がするが、これはまさしく異世界テンプレ。
俺つえー的なアレだろう。
異世界へ召喚された高校生たちは、剣と魔法の世界で、時に笑い合い、時に涙を流しながら数多の冒険を乗り越える。
やがては魔王と対峙して、世界を救う本物の勇者として成長していくのだろう。
特別な力を手に入れて無双したり、ひょっとすると現地の人間と恋に落ちてロマンスやハーレムを体験するかもしれない。
ゲーム好きの俺としては、考えるだけで心躍ってくるってもんだ。
俺はワクワクしながら女神様に尋ねる。
「……で、俺は?」
『トイレへ行ってる間にハブられました』
「そうですか」
なるほど。
「……と言いつつも?」
『ズボンを下ろしてくねくね踊ってらっしゃる間にハブられました』
「さいですか」
ほどなる。
「――えっ!? じゃあ俺は……ッ」
『隣の個室の鍵を見て自分以外誰も居ない事を確認した後、ノリノリでアダルトビデオの語録を歌のように読み上げておられる間にハブられました』
「どっから見てたんですか」
泣るほど。
……どうやらもう異世界テンプレは始まってるらしい。
ここに一人仲間外れにされてる奴を除いて。
俺は青ざめた表情でわなわなと手を震わせる。
「……えっ……じゃあ何ですか? 俺はこのまま何か物語が始まる訳でもなく、一人寂しく誰もいない教室でゲームでもしてろって事ですか?」
『学校ならゲームでなく勉強をしましょう。そんなんじゃ良い大学に行けませんよ』
女神らしく正論だった。
「イヤだァァァァァァァァァ!! 俺も異世界でチート能力手に入れて、俺つえーやハーレムで人生イージーモードになりたい! あと受験なんて二度とやりたくない!」
『…………』
駄々をこねる俺に対し、女神様は手を前で組んで残念な子でも見るような表情だ。
その困ったような眼がたまらん。泣きそう。
でも俺だって健全な男子高校生な訳で!
楽して美少女に囲まれてチヤホヤされたいし、出来れば俺をお兄ちゃんと慕ってくれる妹系ヒロインや、弟クンと可愛がってくれる姉系ヒロインも欲しい!
退屈で花のない日常より、美少女に囲まれた冒険の方が絶対いいのだ。
『……そもそも私が言える立場ではありませんが、相手の都合で勝手に異世界へ呼びだされた挙句、命の危機に放り込まれるなんて不幸以外の何物でもないでしょう。それを回避できると言う事は、あなたはとても運が良いのですよ?』
「うっ……それを言われちゃ反論できませんけど……」
『それと、現実でモテない人間が異世界へ行っても変わらないと思います』
おっと流れ変わったな?
『まずは運動して筋肉をつけたり、髪型を流行りのものへ変える等、自分磨きで自信を持つことから始めましょう。大丈夫、女の子は頑張ってる男の子をちゃんと見てくれてますからね』
こちらを励ますように笑いかける女神様に対し、俺は心の中で呟いた。
さっきから何でこの女神様は正論ばかり言うんだろう。
それが出来ないから、俺はモテてないのに――。
『……何と言うか、ごめんなさい』
「いや……こちらこそダメ人間ですんませんでした……」
人生の辛い記憶がフラッシュバックしてくる……!
俺は女神様からトイレットペーパーを貰うと、涙と鼻水を静かに拭いた。
「……えっと。話を戻すと、結局俺はどうすれば良いんですかね?
クラスメイトの異世界召喚からハブられて。けど世間的には学級丸ごと消滅した集団失踪事件って扱いになると思うので、俺はその奇跡の生還者としてしばらくテレビで出演料を貰いつつ、念願のマイPCでアダルトなゲームを堪能すれば良いんでしょうか……」
『そうですね。ここまで話しておいてなんですが、普通なら記憶を消して何も知らない一般人として平穏に暮らして頂く事になります。
魔王が倒されれば、望んだ方はこちらへ帰って来られるので、あなたのお友達と再会できる可能性もあるでしょう。
あと女神的な超パワーで、戻るのを拒んだ方々は初めからこの世界に存在しなかった事になります。なので、世間的には失踪事件にはならないかと』
そうか……。
なんかサラッと怖い事言ってる気がするけど、結局異世界に行けない俺にとってはあんまり関係ない話だよなぁ。忘れちゃうみたいだし。
――いや、めっちゃ怖いな女神的な超パワーて。
あいつら大丈夫かよ。
『……と言いたいところですが。心苦しい事に、本来異世界へ召喚される運命であった貴方を、このまま地球へ留めておく事はできないのです』
「あ、結局異世界に行く流れなんですね」
じゃなかったら、わざわざ俺のとこまで尋ねて来ないか。
しかしアレだな。
いざ異世界に行くとなると、何かチート能力的な特典が欲しいとこだ。
意気揚々と異世界に行って、即死したらシャレにならない。
『世界を跨ぐ召喚魔法を使用する場合、管理者としての女神が予め召喚される人員を定めておく必要があるのです。ですからこの場合、勇者召喚としてではなく、別の方法で転移していただく事になるのですが……』
どうやらクラスの連中とは離れ離れになるようだ。
他にも何やら重要そうな事情を喋っているようだが、今の俺は小難しい話が頭に入ってこなかった。それより気になる事があるからだ。
「ところで異世界召喚の特典って何か貰えるんですか?」
俺は女神様が話し終わったタイミングを見計らって、一番大事な事を聞いた。
すると女神様は口元に手を当て、何やら考え込むような仕草をする。
『特典……ですか。そうですね、勇者として召喚する事ができない以上、特例ではありますが、不便の無いよう、いくつか望むものを差し上げましょう』
きたきたー!
これだよこれ!
「望むもの……それって何でも良いんですか!?」
『はい、何でもです。もちろん、私に渡せる範囲になるのですが……』
「女神様が欲しいです」
『あげません』
よよよ。
「まあ冗談は置いといて、異世界の言語とかって大丈夫ですかね?」
『勇者召喚を経由しないので、その辺りの対策は必要そうですね。黒江幸輝さんの初期スキルに【言語理解:EX】を私の権限で追加しましょう。これで会話と文字の読み書きに不便はないはずです』
おお! これはけっこう便利そうなスキルだ!
ひょっとして人間以外の種族の言語も喋れたりするんだろうか。
「あ、そうだ。身分証明とかは必要な世界観ですか?」
『ステータスカードと呼ばれるものがありますね。冒険者登録に必須で、カードを操作する事でスキルや魔法を覚えられます。一応、お金を払って審査を受ければ再発行が可能ですが、これも私の力で用意しておきましょう』
パチン、と指を鳴らせば、俺の手元に光の粒子が集まり、半透明のカードが収まった。
そこには身分証明書のように俺の名前や年齢が書かれており、スマホのように画面をスクロールする事で、色んな情報が見れるようだ。
俺はそこに書かれた内容を確認する。
「……クロエ・ユキテル。16歳。身長158cm、体重54kg……うん、一学期に計った時とあんまし変わってないな。……おっ、取得スキル欄に【言語理解:EX】がある!」
『取得スキル欄とは別に、装備スキル・魔法枠というのが、どんな人間でも十七個あります。覚えたスキルや魔法は装備しなければ意味がありませんので、早速装備しておいてくださいね』
「はい」
俺は言われた通りステータスカードを操作して、【言語理解:EX】を装備しておく。
これで俺はあと、十六個までスキルや魔法を装備できるって事か。
不要になったものは後で外せるみたいだし、万が一枠が溢れたら状況によって付け替えるのも重要そうだ。
「いやぁ、こういうお約束を体験してみると、なんだか楽しくなってきますね」
そのままRPGっぽい項目を見てみると、自分の現在のステータスとレベル、クラス(職業)などの情報が表示されていた。
俺はワクワクしながらそれらを順番にスクロールしてゆく。
すると、あることに気が付いた。
「……あの、女神様。俺のレベル1なのは置いといて、ステータスが軒並み一桁なんですけど、これって普通なんですかね?」
『はい。普通にゴミカスですね……』
女神様は気まずそうに答える。
「…………あのぅ、女神様。俺のクラス欄が空白だったり、所持スキルが【言語理解:EX】以外ないんですけど、これって普通なんですかね?」
『はい。普通に無職のゴミカスですね……』
なんてこった。
学生だった俺は、異世界だと無職のゴミカスになってしまうのか。
『ま、まあその……伸びしろの塊と言いますか、勇者召喚を経由しなければ皆さんこんなものですよ。
クラスはレベルを上げて条件を満たせば転職できるようになりますし、レベルアップでスキルポイントが貯まれば適性のある一般スキルや一般魔法を覚えられます。
それに良いクラスに就けば、専用スキルを覚えたり、ステータスに補正が入って、多少は見た目もよくなるはずですので……!』
「そ、そうっすよね! 最初が弱いからってずっと弱いままじゃないですよね!」
『…………』
「女神様???」
今の間はなんだ!?
『そ、それに、ここからあなたの望む特典が手に入りますので、それを加味すれば十分異世界でもやっていけると思いますよ。……たぶん』
「女神様、さっきからなんで俺の方を見てくれないんですか」
顎を突き出した顔芸をしても無反応だったので、よほど気まずいのだろう。
どうやら俺のステータスはマジで弱いらしい。
こうなってくると、特典で貰えるチート能力だけが頼りだ。
「しかし特典かぁ。例えばどんなのが貰えるんですか?」
『通常では覚えられない、特別なスキルでしたり、入手手段のない、我々だけが用意できる武具やアイテムですね。こんなものが欲しい、と言っていただけた物から、お渡しできる範囲で近い物を、一つだけお譲りできます』
「なるほど……」
要するに能力系チートか、アイテム系チートか選べって事か。
俺のステータスは貧弱みたいだし、常に手元に持っておかないと意味のないアイテム類より、常時発動できるような強力なスキルを貰った方が良さそうだな。
「俺としては、常に最適解が導き出せる能力とか。右手で触れた能力を無効にするやつとか、使いこなせばカッコよくて実用性のある奴が好みだけど……」
うーん。悩むなぁ。
『……水を差す様で申し訳ないのですが、黒江幸輝さんの能力スペック的に、あまり強力なスキルは現状では覚えられませんね。身体が耐え切れずに爆発四散します』
「マジですか」
『試してみます?』
「すんませんやめてください」
どうやら俺が貧弱すぎてスキル類は駄目っぽい。
となると、必然的にアイテム系にした方が良さそうかなぁ。
「ってなると、無尽蔵の魔力を秘めた封印生物とか、聖なる力を秘めた変形する黄金の衣みたいな、アイテム系のチートでカッコイイ&実用的なモノを……」
『そこも申し訳ないのですが、私はあまり位階の高い女神ではないので、神器級のアイテムを一存でお渡しすることは出来ないのです。罰として私が爆発四散します』
「マジですか」
『試してみます?』
「マジでやめてください。あ、でも服だけ爆発四散するならお願いします」
『……エッチなのがお好きなんですね』
「大好きです」
何でも好きなものを、と言ってもらった割には制約が多いらしい。
俺としてはチートを貰って俺つえーからのウハウハ美少女ハーレムライフを期待していたが、ズルは駄目ってことか。
「うーん……」
……しょうがない。ほどほどの強さの特典を貰って、地道にコツコツレベル上げでもするか。
ゲームだと思えば自分磨きも頑張れるかも。
「しかし、程よい強さの特典かぁ……」
『とりあえず思い浮かんだものを挙げてもらえますか? その都度、お渡しできるかどうか判断いたしますので……』
女神様はおずおずと尋ねてくる。
こうなってくると、選択肢が狭くて逆に悩むんだよなぁ。
言われた通り、思い浮かんだものを挙げていくが、俺の頭では極端な強さのチート系しか思いつかず、どれも俺のスペック不足で却下されてしまった。
却下されるたびに、なんだか女神様が申し訳なさそうに謝って来るので、こちらとしても心苦しくなってくる。
……もういっそ、女神様に決めてもらおうかな。
「すみません、何かオススメってありますか? できれば俺みたいな人間が喜びそうなモノで……」
我ながらふわっとした要求だなと思ったが。
それでも女神様は頬に手を当て、真剣そうに考え込んでくれる。
『オススメ……彼が喜びそうな…………あっ』
すると、何かを思いついたらしい。
しかし何やら頬を染めてモジモジし始めた。
『……その。ひとつ、良い案が思い浮かびましたが。ちょっと恥ずかしいので、やっぱり無かった事に……』
「……? 構いませんけど……」
……恥ずかしい?
チート能力的な奴で女神様が恥ずかしがるのって何だろう。
もしかすると……。
「……エッチなやつですか?」
『…………』
あ、顔真っ赤にして逸らした。
俺の股間見て恥ずかしがってたし、こういうのに耐性がない女神様なんだろうか。
とてもいいと思います。
「良いですね! エッチな特典大歓迎ですよ! 触手ですか? 服だけ溶かすスライムですか!? それともムフフなスキル……あっ! 別に言わなくても大丈夫ですよ! 向こうへ行ってからの楽しみにしますから! という訳で特典はさっき女神様が思いついたエッチなやつでお願いします!」
『ええ!? 本気ですか!? ……うぅ、分かりました……用意しておきますね……』
そう言うと、女神様は一旦トイレを離れて、壁の向こうで何やらゴソゴソし始めた。
いやぁ、何が貰えるんだろう。楽しみだなぁ!
「……あ、そうだ。今の内にスマホで俺の両親へ別れのメッセージを送ってもいいですかね? 異世界に定住したら今生の別れになるかもしれないので……」
ポケットからスマホを取り出しながら問うと、壁の向こうから静かな声が返って来る。
『……は、はい。どうぞご自由に……。こちらとしても止める理由はありませんので……』
その声色には恥ずかしさ以外に、何やら申し訳なさも混じっているような気がする。
平和な日本で生きている高校生を、魔王退治に巻き込むのだ。
やはり罪悪感が大きいのだろうか。
「……なんて送ろうかな」
俺はスマホのメッセージアプリを起動して、ほぼ野郎一色のアドレスを華麗にスクロールしながら両親とのグループメッセージを開く。
両親との関係性は、お世辞にも良かったとは言えない。
数え切れないほどの罵倒を浴びせられてきたからだ。
「――俺たちの遺伝子から信じられない程のダメ人間が爆誕した」
とか、
「黒江家の血脈もこれで終わりねぇ」
とか。
「次のテストで良い点取れなかったら、あなたのベッドの下に隠してあった妹モノの本を授業参観で朗読するからね」
……とか。
「もしお前に妹が出来たら、年の離れた兄としての特権を利用して毎日一緒にお風呂に入ったり、裸エプロンや猫耳メイド服を私服にさせたりしそうだから、絶対に子作りはしない」「だから毎日避妊してるわよ」とか一人息子に言っちゃう酷い親だったが、いざ会えなくなると思うと、寂しさがこみ上げてくる。
毎晩聞こえてくる生々しい叫び声に、床ドンで対抗したのは良い思い出だ。
「……妹、欲しかったなぁ」
『なにやら邪な感情が伝わってくるのですが』
俺は何だかんだ両親に嘘をついた事はなかったので、案外「異世界行ってくる(笑)」って打っても信じてもらえるかもしれない。
メッセージを送り終えると、準備が終わったのか、壁の向こうから女神様が帰ってきた。
『……では、そろそろ異世界へ送る魔法陣を起動したいと思います。準備はよろしいでしょうか?』
「はい、お願いします」
そう言うと、俺の足元に何やら紫色の模様が浮かび上がってくる。
紫の光に包まれると、俺の身体は重力が消えたようにふわりと宙に舞う。
おおっ、ほんとに今から異世界に行くんだな。
『最後にひとつ、いいでしょうか?』
「はい?」
実感が湧いてきた俺の横で、女神様は何やら大事なことを話したがっている。
『黒江幸輝さん。勇者としての宿命を背負う必要のない貴方は、これから異界の地で、何をするも自由です。冒険者として気ままに暮らしたり、日本での知識を活かして商いに精を出す事もできるでしょう。もちろん、クラスメイト達と合流して、魔王の討伐を目指して貰っても構いません』
「……それって俺が何したってどうでも良いくらい期待して無い、って意味じゃないですよね?」
『…………』
「困った顔で照れないでください!?」
『そ、そういう訳ではないんですけどね……?』
女神様はこほんと咳払いすると。
両手を合わせ、祈るような仕草で俺を見つめて――。
『しかし、これだけは忘れないでください。人はみな、良い心と悪い心を持っています。貴方の良い心が悪い心に負けないよう、胸を張って誇れるような人生を送ってくださることを、私は祈っています。つまり何が言いたいのかと言うと……』
頬を朱に染め、困ったような顔で笑いかけた。
『エッチなのはほどほどに、……ですよ?』
同時に俺のズボンのポケットに、何か布のような物がすっぽりと収まった。
「……? これがエッチな特典……?」
僅かに膨らんだポケットの中身を確認する間もなく。
『それでは……どうかあなたの旅路に幸運があらんことを――』
俺の視界は眩い光に包まれる。
――ああ、いよいよ日本ともおさらばか。
トイレのカビた匂いが遠くなり、意識が徐々に薄れてゆく。
お父さん、お母さん、親孝行もできない息子でごめんなさい。
せめて向こうでハーレムと妹枠ヒロインを作って、黒江家の遺伝子を断絶させないように頑張ります。
とりあえず5〜6人くらいハーレム欲しいな!
ついでに魔王も倒……メンドクサイから、クラスの連中に丸投げするか。あっちは初めからチートみたいだし大丈夫だろ。
そんな感じで誓いながら――俺は異世界へと旅立った――!
【本日の更新(2/4)】
一人称視点での没入感を増すため、主人公の外見について、あまり詳しく描写しませんでした。
一応作者の中では「お姉様方が唾吐いてビンタしたくなるような生意気な童顔」をイメージしております。やっぱ今の忘れてください。




