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毛虫混入

作者: 命野糸水

   毛虫混入


 一月、とある男が捕まった。彼はバイト先のスイーツ店でシュークリームの中にクリームと毛虫をすり潰したものを入れ一人の客に提供した罪に問われている。


彼がなぜそのようなことをしたのか。彼は取り調べの中で全てを話した。


 二年前、彼はスイーツ店でバイトを始めた。清掃業務から接客、レジ打ちなどを覚える日々が続き、一か月も経たないうちに彼は業務を覚えスイーツを少し任せてもらえるようになった。


 スイーツ店で働き始めて一年がたつ頃偶然彼の同級生が店を訪れた。数年ぶりにあった同級生は昔の面影を残しつつも少し変化していた。


「バイト終わり時間があればどこか行って話そうよ」


同級生はそう言った。男と同級生は学生時代特に仲が良かったわけではない。教室で挨拶を交わす程度の関係性だった。その同級生は積極的に人とコミュニケーションを交わすような人ではなかったし、遊びに行こうよと誘う姿なんて見たこともなかった。男は彼の変化に少し興味がわき「いいよ。三時間後にもう一回来て」と告げた。


三時間後同級生が再び訪ねてきた。男は同級生と駅前のファミレスに行き会話を交わした。

同級生は年を重ねるうちに自分から話すようにならないといけないという危機感を覚えたらしい。それから同級生は自分から話しかけることを習慣にしたとか。


「自分から話しかけることで会話に自信がついてさ、学生時代にマドンナいただろ。マドンナにも話しかけてさ仲良くなって。今マドンナ俺の彼女なんだぜ」


信じられなかった。マドンナを手に入れたことがとても信じられなかった。マドンナは俺のものだと男は学生時代から思っていたから、人の手に渡っていることが信じられなかった。


「そういえばお前マドンナの事好きだったよな。悪いな。俺が貰っちゃったわ」


その言い方には腹がった。それと同時に男は理解した。同級生が自分を誘ったのは話したかったのだ。マドンナを手に入れることが出来たという自慢話を。こいつにはなにか仕返しをしなくてはならない。罰を与えなければならない。男はその場で同級生と連絡先を交換し、一年間交流を続けた。同級生の情報を手に入れるために。マドンナの情報を手に入れるために。マドンナを守るために。


そして男は同級生が好きなシュークリームの中に嫌いな毛虫をすり潰したものを混ぜて男が注文したシュークリームとすり替えた。同級生は家に帰り一口食べたときにおかしいと思ったらしい。すぐに救急車を呼び、あとの始末をマドンナと警察に任せた。捜査の結果男が仕組んだことが分かり男は捕まった。


「同級生がいなくなればマドンナは解放される。私はマドンナを救ったヒーローになれる。いや、もともとマドンナは俺のもの。同級生が窃盗罪で捕まらないのがおかしい」


男は最後まで同級生が悪いと話したが、味方はだれも現れなかった。


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