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一途すぎる公爵様は眠り姫を溺愛している  作者:


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14 アラベル 3

 そしてアラベルは成功した。リュシエンヌは眠り、証拠は何も出ず疑いも晴れた。マルセルは嘆き悲しみ、絶望の淵に立たされていたがアラベルは親友の立場を利用して寄り添い、5年経ったタイミングで惚れ薬を飲ませた。マルセルは君を愛していると言ってくれ、トントン拍子に結婚が決まった。アラベルは幸福の絶頂で、幸せを噛み締めていた……。


 しかし、いつまで経っても子供ができない。結婚して6年が経ち母の勧めで医者にかかったアラベルは衝撃の事実を知る。


「何年も生理がないということは、子宮や卵巣に異常があるのかもしれません」


(えっ……? 子宮と卵巣って、妊娠に必要な臓器なの……?)


 生理がないこともあまり気にしていなかった。楽になって良かったくらいに考え、妊娠と関係があるなんて思ってもみなかった。親はそんなこと、全く教えてくれなかったのだ。


(じゃあ私、マルセル様の子供を身籠ることができないということなの……? 許せない、イネス! 私を騙したのね!!)


 アラベルはあの部屋を探して街を彷徨った。しかし、何度歩いてもあの路地には辿り着けなかった。


(私が無知なばっかりに……子供を授かる機能を失ってしまったなんて……)


 真実は誰にも言えない。妊娠しにくい体だということだけ夫に話した。夫は「君のせいじゃない」と言ってはくれたが、それからすぐ愛人に子供を産ませるつもりだと言い出した。やはり自分の血を引く子供が欲しいのだろう。


(リュシエンヌを眠らせてマルセル様を奪った報いがこれ……)


 アラベルは夫のいない夜は泣いて過ごしていた。


 そんなある日、街で噂話を耳にした。


「ソワイエ家の眠り姫が目覚めたんですって」


 背筋を冷たいものが流れたような気がした。震えながら声の主を見ると、どこかのマダムが二人。


「あ、あの……それは本当ですか……?」


 突然話しかけたアラベルに驚いたものの、噂好きらしい二人はいろいろと教えてくれた。


「まさかあの眠り姫が目覚めるなんて驚いたわよね! もうみんな忘れてたのに」

「それがね、目覚めてすぐにヴォルテーヌ公爵にプロポーズされて、婚約したんですって」

「爵位を継いだばかりでまだ若い、素敵な方だそうよ」

「眠り姫は眠った時のまま、愛らしくて幸せそうだったって見た人が言ってたわ」


 その話を聞いたアラベルの胸の中はいろいろな感情でグシャグシャになった。リュシエンヌが目覚めてホッとした気持ち。マルセルがまた彼女を好きになるのではないかという不安。公爵と婚約しマルセルよりも更に上の玉の輿に乗ったことへの妬み。


(どうしてっ……! 私はリュシエンヌより幸せになったはずだったのに! 眠っていただけのあの子がどうしてまた私より上にいくの? 私が何をしたっていうのよ……!)


 すぐにリュシエンヌに会いに行った。大きくて豪華な公爵家に住み、あの美しいヴォルテーヌ公爵に愛され、16歳の瑞々しい肌と髪を持ったリュシエンヌ。きっとマルセルも再び魅了されるだろう。神は不公平だ。どうしてあの子だけがいい目にあい、私を踏みつけていくのか。

 ヴォルテーヌ家からの帰り道、アラベルは再び街を彷徨った。


(理不尽な神など信じない。リュシエンヌがもう一度不幸に落ちるなら、私はどうなってもいい。私の不幸の元凶はリュシエンヌなのだから一緒に堕ちていってもらう……!)


 そう思った時、突然目の前にあの路地が現れた。


「ああ……やっと……」


 アラベルはフラフラと入り口に向かって行った。




「いらっしゃい。また来たね」


 イネスは相変わらず顔にベールを被っていたが、鼻と口は見えるようになっていた。皺もなく艶もあり、若いように思える。手も、白く艶やかだ。あの時の老婆と同一人物とは思えない。


「ふふふ、あんたの考えていることはわかるよ。私が以前より若返ってるのが不思議なんだろう?」

「……あの時はよくも私を騙してくれたわね」

「騙してなんかないさ。あたしはちゃんと子宮と卵巣をもらうって言ったんだ。了承したのはあんただよ」

「それは……!」


 くっくっとイネスは笑う。


「あんたに卵巣をもらったおかげで、こうやって若返ったんだよ。ありがとうよ」

「……どういうこと?」

「あたしはね、体がなかったんだよ。昔はあったんだが無くしちまってねえ。こうして占い師をやって困った人の願いを叶えてやって、代わりに少しずつ体をもらってるのさ。あといくつか揃えば外に行けるようになる。そうすれば……」


 楽しそうに片方の口の端を上げニヤリと微笑む。


(私は子宮と卵巣を奪われたせいで妊娠もできないし身体の調子もずっと悪い。この女のせいで……悔しい……! でも)


「どうやらあんた、もう一度あたしを頼りたいようだねえ」


 見透かされているのだから取り繕う必要もなく、アラベルは話し始めた。


「あの時眠らせた友人が目覚めたの。しかも公爵に見初められて幸せになっているわ。そんなの許せない。私は二度と子供を望めない体だと言うのに……」

「では今度はその女から足を奪おうか」

「足を?」

「そう。足の機能をいただくから、見た目は同じだが歩けなくなる。若いままで一生車椅子さ」

「いえ、それより……あの子も私と同じ目に遭わせたい」

「ほう? 子宮を奪いたいのかい。あたしはもう子宮はいらないんだがね……じゃあその代わりあんたからは……と、……を頂くことになるよ」

「……いいわ」


(今よりももっと私は辛くなる。でも、それでもリュシエンヌを幸せにはしたくない)


 アラベルはリュシエンヌの髪が入ったペンダントをテーブルの上に置いた。


「これで」

「用意がいいねぇ。じゃあこれでまた薬を作ろうかね。あんたから代償をいただくのは、その女に薬を飲ませた時だ。……と……が無ければ薬を飲ませに行くことができないからね」


 アラベルは頷いた。もうどうでもいい。リュシエンヌが不幸になったのを見届けたら命を絶つつもりだ。


「では、いくよ」


 イネスが呪文を唱え、黒い靄が出始める。アラベルは今度は冷静にその様子を見つめていた。





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