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『荒木飛呂彦の漫画術』


 これは「本」といいますか、新書なんですけども。

 「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ作者として知られる荒木飛呂彦先生が語る、「漫画を描くときに心がけておくべきこと」がまとめられた本です。


 漫画にとって一番大事なものは? まずは絵だ!

 世界観、ストーリー、キャラクター。その造形も大事ではあるけれど、一番はやはり「絵」。もっと詳しく言えば「表現力」ということになるのでしょうか。作品を「絵」で伝える、それが漫画であると述べられています。

 小説では「絵」のノウハウはあまり参考にはなりませんが。伝える手段が絵なのか文章なのかという違いはあれど、「漫画術」は執筆にも役立つハウツー本だと言えるでしょう。




 最近、YouTubeで書籍化なろう作家さんの配信動画を見つけまして。時々見たりしてるんですよね。

 でもなんかなぁ。


 知りたいのは、そういうことじゃないんだ。


 私が知りたいのは「手っ取り早く数字を稼ぐ手段」じゃないんだ。

 どうやったら読者をつなぎとめておけるのか、ページを捲らせられるのかってことなんですよ。



 執筆仲間()と交流を持ってた時期もあったけど、アマの人もセミプロの人も。どこにもその、私が知りたいことを語ってくれる人はいなかったですね。誰も彼もが「投稿時間はどうするか」とか「後書きをどうするか」とか、小手先のテクニックの話ばかりしている。件の動画もそんな感じ。

 こういう話をするとギャオられるんだけど、まあぶっちゃけなろうとかカクヨムで数字稼いでる人の小説読んでも、あんまり面白い!って思えたことないんですよね。1話から設定解説とか、謎ポエムとか。10万字読んでも話が一向に進まないとか、ただの子供向けなぞなぞを初心者向けミステリとして開陳している人とか。「ノンプロットで書いてます!」って自慢することじゃないだろ。「私はストーリー描けません!」って宣言してるようなもんじゃねーか。

 本気で理解できなくて「これ何が面白いの?」って言うと「俺の才能に嫉妬してるんだろ!」と返ってくるから、正直会話もしたくない。聞きますけど、「足は速いし壁も登れるし、空まで飛べてずるいなぁ!」ってゴキブリに嫉妬する人間がどこにいますか?

 他人から嫉妬されるほど自分には才能があると思える、その頭のホンワカさが羨ましい。嫉妬しちゃう。



 この本では、荒木先生が連載を勝ち取るまでの苦労話が語られています。いわゆる「ジョジョ立ち」のルーツがイタリアで見た彫刻にあった話とか。でも、私が一番「読んでよかった」と思ったのは、読者を惹きつけるテクニックについての試行錯誤が述べられている点です。

 「1ページ目に謎を作って読者の興味を引く」というのは手垢のついた創作論の話ですが、どう「謎」にするかという部分が一番大事なんですよね。謎が謎すぎてただ謎なだけだと、意味の分からない話になってしまう。


 たとえば、ミステリでよく扱われるヴァンダインの二十則に「起きる事件は殺人事件でなければならない」というルールがあるんです。これを受けて、以前「わたしは人の死なない優しいミステリが書きたい!」って豪語する作家さんがいました。ツラでは「いいんじゃないですか」と答えてあげましたが、内心「この人にミステリは書けないだろうな」と思いました。

 なぜ起きる事件は殺人事件じゃないといけないのか。それは、殺人というのはおおよそ一個人の能力の範囲で起こせる犯罪の中で最も凶悪で、最も読者の恐怖を煽るものだからです。読者は死体が転がっていると「犯人は誰なんだ」、「犯人にはどんな罰が下るんだ」とか、そういった期待をするわけですね。

 そして、それがページを捲る理由になる。犯人はどうやって犯罪を犯したのか。探偵はどうやって犯人を追い詰めるのか。犯人に情状酌量の余地はあるのか。それを楽しみに、読者は解決編まで突っ走るのです。


 それを自分で気づけない人にミステリは書けません。

 たまに適当に死体発見シーンを冒頭に入れて「トキハサカノボリ」する作家さんもいますが、それはヴァンダインのルールを表面上なぞっているだけに過ぎないんですよ。読者が死体発見シーンを読んで「犯人は誰なんだ⁉」と思わなかったら、死体が出てくる意味なんかまるでない。謎が謎に謎なだけです。それならいっそ、解決編の「犯人はお前だ!」から入ったほうがマシでしょう。



 ……話が逸れました。

 この荒木先生の漫画術では、読者の興味を惹くためにどんな工夫がされているのかが述べられています。すべては「ページを捲る」意欲を掻き立てるために。

 ただ、先生は工夫のレベルが高すぎて、凡人にはまるで真似ができません。いやいや、いくら主人公が岸辺露伴だからって「漫画を描くための準備運動としてヘンテコな動きをさせよう!」とか思いつかないって!


 ただ、その謎の作り方についてもしっかりヒントを与えてくれています。

 漫画にとって大事なのは世界観、キャラ、そしてストーリー。それを絵で効果的に伝えること。だから読者を惹きつける謎もそこに忠実に作ればいい。つまり、読者に伝えたい世界観の重さ、美しさ、精密さ。キャラの魅力。そしてストーリーの予感。それを「謎」として提示すればいい――――まあ、言うは易し行うは難しって感じでしょうか。それが出来たら苦労はしないんだよねぇ!!

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