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創建3500万年 ラーマン神社の研修部屋

調査員は、修了証書を手に、山を下りていった。考古学研究所に、調査報告にするという。大将軍塚を発掘調査するかは、考古学研究所の会議によるようだ。


調査員の研修がおわり、指導員の3人は、その役目を終えて、慰労の酒盛りをしていた。ラーマン神社は、山の中にあるので、海のものは、非常に貴重で、こんなときにしか、食べることは出来ない。と、いっても、それは、魚の干物であった。その中に、イカやタコの干物があった。


指導員1「スルメを焼くぞ。」

指導員3「スルメ?なんだ?。」

指導員1「イカさあ。足が10本あるんだぞ。」

指導員3「これは、地上の生き物かあ?」

指導員1「あれ!。見たことありません?まあ。地上の生き物ではないといえば、ない。海の中の生き物だ。」

指導員3「海の中には、こんな生き物がいるのか?」

指導員1「イカは足が10本ですけど、8本足のタコというものいますよ。とにかく、たくさんいます。」

指導員3「足が10本に、足が8本。悪魔の生き物だ。あっちへもっていけ。」

指導員1「まあ、そんなことを言わずに食べてみなさいよ。うまいですから。美味しいというより、旨いんですよ。」

指導員3「うまい?うまいのか?」

指導員1「酒のつまみとして、最高ですよ。」

指導員3「つまみとして、最高?本当か?」

指導員1「堅いですから、ゆっくり、噛んでください。うまみが、ジワーと広がります。」

指導員3「ほんとうだ。旨い、旨いぞ。」

指導員1「いいこと教えましょう。次の断食修行の時に、このスルメやタコを、ポケットに忍ばせておくのです。どうしても、空腹に耐えかねた時に、このスルメをちぎって、口の中に、見つからないように放り込むと、どんな空腹にも耐えられます。他言無用の絶対秘密ですからね。」

指導員2「そんなことみんな知っていますよ。しらないのは、あなただけですよ。第一、イカやタコを悪魔の生き物だといっているようじゃ。どうしようもないですね。」

ーー

指導員2「悪魔の生き物といえば、身の丈10メートル、体重20トン、歯の長さ50センチにもなる恐ろしい生き物がいたのを知っていますか。恐竜というんです。」

指導員1「恐竜?しらないなあ。海には、巨大なサメもいるし、クジラもいるが、恐竜とは呼ばないぞ。」

指導員3「神社の柱に巻き付いている、龍か?それとも、ドラゴンか?あれは、空想の動物で、実際にはいないんだぞ。」

指導員2「もう何億年も前に、この星にいたんです。あまりにも昔なので、骨しか、残っていません。その骨も、石になっているんです。」

指導員3「それは、旨いのか?」

指導員2「あまりにも古いので、石になっているんです。」

指導員3「石か。鍋に入れて煮ると、うまみ成分が出てきたりしないのか?」

指導員2「しません。あなたも指導員なんですから、科学的、理性的に考えてくださいね。」

指導員3「ハイハイ。」

ーーー

指導員3「しかしだなあ。」

指導員2「しかしですなあ。」

指導員3「調査員は、ほんとうに、銀河の果てまで、いったのだろうか。」

指導員2「あなたは、その場にいたんでしょ。」

指導員3「まあ。10分とか、20分ぐらいの間だったでしょうか。私は、のんびり、大将軍塚の頂上から、景色を眺めていたんです。そのとき、コップと海の話、それは、心と宇宙の話をしただけなんです。」

指導員2「それで。」

指導員3「そうしたら、調査員さんの心が、宇宙の中に広がっていってしまったようなんです。私は、ほとんどなにも気が付かなかったんですけどね。」

指導員2「10分とか、20分で、宇宙の果て、銀河の果てまでいけるものか?光の速度でも、太陽系の果てまでいくのに、何時間もかかるんだぞ。10分、20分で行ける距離がじゃない。」

指導員3「心の速度は、無限の速さだ。光よりずっと早いはずだ。だから、10分とか、20分でも、銀河の果てまでいってきても、不思議じゃないはずだ。けれども、それを実証したものは、誰もいない。そのようにラーマン神社の経典に書かれているだけだ。」

指導員2「そんな経典あったか。俺は読んだことがないぞ。」

指導員3「たしか、大将軍の活躍を記録した経典の何かに、大将軍の意識は、自由に大宇宙に行けたと書かれている。」

指導員2「そうか、そんな経典があったのか。」

指導員3「しかし、大将軍以来、数百万年の間、そのことを体現した人はいなかった。しかし、なんの修行も、智慧もないような調査員が、コップの水の話を聞いただけで、大宇宙まで行ってしまうなんて、どう考えても解せない。納得できないんだあ。」

指導員2「それが、お前の悟りの限界、心の限界だな。」

指導員3「うるさい。うるさい。なんとでも言え。」

指導員2「お前は、上級指導員としての資格がないぞ。」

指導員3「おれは、このラーマン神社で、数十年の修行がしているんだ。小さな悟りでもいい。なにか、人類の秘密、宇宙の秘密に触れたいが為に、どんな厳しい修行にも耐えた。10日間不眠不休の修行もやった。1000日間の座禅もやり抜いた。すこしでも、人間の真実、宇宙の真実に触れたいための修行だった。なんらかの成功の手がかりがほしかったんだ。みんなに自慢できる資格、免許が必要だった。その一心で、修行したんだ。」

指導員2「あんたは、まだまだ、悟りは遠そうだな。おれに、追い抜かれるのも、時間の問題だな。」



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