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創建3500万年 調査員の探求

ナレーション


朝日が,神社の尖塔にあたり、キラキラ光っていた。

小屋から、男が出てきた。



調査員「あの、お姉さん。ぼく、今日、研究所に戻ります。」

巫女姉さん「ああそうですか? 大発見の報告ですね。」

調査員「研究所で、大規模調査をするか、検討します。」

巫女姉さん「あそこには、何が、埋まっているとお思いですか。」

調査員「副葬品の数は、少ないのですが、ヒスイや金の宝飾品が、数点でてきましたので、なにか、あるのは、間違いありません。」

巫女姉さん「そうですよねえ。これで、大将軍塚が、有名になってしまいますね。」

調査員「大将軍塚ってなんです?」

巫女姉さん「あれ! あの山をラーマン神社では、呼んでいるんですよ。」

調査員「知らなかった。あの山は、ちゃんとした名前があったんですね。なんで、大将軍塚って、呼ばれているんですか?」

巫女姉さん「昔、昔、ずーと昔ですね。大将軍というのは、落ちぶれていたラーマン神社を、大神社に復興した伝説の人ですよ。」

調査員「大将軍というのですから、軍人ですよね。それが、ラーマン神社を復興したんですか?」

巫女姉さん「今のラーマン神社の繁栄があるのは、大将軍のおかげなんです。」

調査員「じゃあ、大将軍塚には、大将軍が葬られているのですか?」

巫女姉さん「いいえ。大将軍の墓は、ラーマン神社の境内にあります。」

調査員「じゃあ、大将軍塚にはなにかあるんです?」

巫女姉さん「塚の頂上部に、大将軍が月を眺めるための東屋があったんです。」

調査員「東屋ですか?大宮殿とか、大神殿とかはないんですか?」

巫女姉さん「大将軍は、大覚者。生きて如来になったと呼ばれた人で、大自然、大宇宙の全てと一体化したといいますか、体得された人といわれています。その体得された智慧を、多くの人に伝える場所として、ラーマン神社を全国、全世界に整備されたのです。それは、今から数百万年前の出来事です。しかし、その栄光は今も、ラーマン神社の繁栄の元になっています。」

調査員「じゃあ、大将軍塚を掘り返しても、大将軍に関する痕跡はでてこないのですね。」

巫女姉さん「大将軍に関するものは、なにもないですね。大将軍は、大覚者、生きた如来と言われた人で、その最大の魅力は、大自然、大宇宙に隠された智慧、法、仕組み、エネルギーの感得であったのです。それは、形のあるものではなく、感じることなんです。」

調査員「そうなんですか?私も、それを感じてみたいんですが?」

巫女姉さん「ラーマン神社では、研修コースを用意していますよ。初級、中級、上級、特級の4種類のコースがありますが、お勧めは、初級の3日間コースですね。」

調査員「初級コース 3日間ですか?やります。」

巫女姉さん「研修コースは、無料ではありませんよ。研修費の他、教材費、宿泊費、食費がかかりますけど、大丈夫ですか?」

調査員「無料じゃないんですね。高いんですか?」

巫女姉さん「この研修を受ければ、人類最高の悟りを得ることができます。ちゃんと研修を行えば、研修修了書をだすこともできます。あくまでも、研修修了書で、悟りのレベルを表すものではありませんけどね。悟れるかどうかは、あなた次第なんです。パンフレットを見て下さい。初級は、10万ラーマンです。中級は、100万ラーマン、上級は、1000万ラーマンです。どうします。」

調査員「10万ラーマンですか。そのくらいなら、なんとかかりますけど。」

巫女姉さん「じゃあ、やってみますか?」

調査員「ここまできて、やらないと、眠れなくなりそうです。やります、やります。」



研修1日目


巫女「あんた、セミナー受けるんだって。頑張りなさい。厳しいセミナーだからね。まずは、腹ごしらえをしないと、途中でバテちゃいけないからなあ。」

調査員「そんなに厳しい研修なんですか?」

巫女「100人中99人は、逃げ出すんです。まあ、99人はおおげさかな。95人ぐらいだったかな。」

調査員「どうして、逃げ出すんです。」

巫女「座禅を組んで、壁を睨んでいろって、言われたら、誰だって、やになってしまうでしょ。足もしびれるし、腰も痛くなるし。あれって、拷問よね。私なら、1分も持たないと思うなあ。」

調査員「そんなすごいことやるんですか?」

巫女「事前の研修説明を聞かなかったんですか?」

調査員「だって、主任巫女さんが、勧めてくれたので、ついやるって言ってしまったんです。」

巫女「巫女姉さんの誘いに乗ったというわけね。それじゃ仕方ない。まあ、初級は3日間だけどね、中級は、1ヶ月、上級は3年、特級は30年ですからね。悟れるとか、如来になりたいとか、欲を出すと、ラーマン神社で一生を過ごすことになりますからね。よく考えなさい。でも、研修が居心地がよいといって、特級セミナーを楽しんでいる人も結構いますけどね。オタクに近いような気がするなあ。悟りオタクという感じかな。」


研修1時間目


指導員1「現在、特急セミナーを受講中のものですが、これより、初級者の指導をします。」

といって、指導員と調査員はテーブルを挟んで、コーヒーを飲みながら、クッキーを食べながら、雑談をし始めた。これといったテーマはなく、子供の頃の話や両親の話や学校の話、現在の研究について、聞かれるままに、話すままに時が過ぎていった。

気が付くと、なんと、夜中の1時だった。時間がいったい、どのように過ぎたのか、さっぱりわからなかった。お昼も、夕食も,食べなかった。

指導員1「もう、こんな時間だから、ベッドに潜り込んで寝ろ」といって、帰っていった。


え!、これが研修? 巫女のいったのと大分違うなあ。座禅はしなくてもよいかな。100人中95人は逃げ出すと言った研修は、どうなったんだ。


夢を見たはずだった。しかし、よく憶えていない。いやな夢では無かったが、と、いって、楽しい夢ではなかった。知らない町に居た。たしかに、知らない町だった。それしか、思い出せない。



研修2日目


巫女「ご飯ですよ。食べてください。昨日は、私が作ったお昼も夕食も食べないでどうしたんですか?今日の朝ご飯は、残り物です。ちゃんと、食べないと怒りますよ。」

調査員「だって、研究終わったのが、夜中の1時だったんですよ。どうして、そんな時間になったのか、まったくわからないんです。でも、気が付いたら、夜中の1時。それで、すぐ寝ろって、言われたんで寝たんです。」

巫女「そうですか?じゃあ、昨日やったのは、1時間目の授業だけ?。あの指導員さんは、時間をまったく無視して、今日は大丈夫かしら?」


指導員2「特別研修中の者だが、君を指導するように言われたぞ。昨日は、1時間目の授業しかしなかったそうだな。今日は、特訓をするぞ。でも、その前に、コーヒーとクッキーを食べながら、今日の特訓の予定について打ち合わせよう。」


そういうと、黒板に大きな紙を貼りだして、人間の感情、理性、知性、本能、霊感などについて説明し始めた。それを一通り話終えると、天体図、原子図、台風図などを次から次と見せて、全ては、同じ構造だ。と、言い放った。


調査員「一応、私も科学者の端くれなんだから、そんなことはみんな知っている」と思った。


すると、指導員2は、すかさず、感情も理性も、本能も知性も「渦だ」といった。渦は、エネルギーをもっているぞと、言った。


指導員2「感情も理性も渦だ。感情の渦、知性の渦、本能の渦、理性の渦は、外界からの刺激を受けて、台風のように凶暴になったり、暴風のように吹き荒れるのだ。また、ブラックホールのように、詰め込み、押しつぶすのだ。」


調査員「僕は、そんなに激高するタイプではないし、陰湿なタイプではありません。至って、普通のタイプです。」


指導員2「そうかな。」といって、調査員の思い出したくない過去を、ネチネチと弄りだした。どうして、この指導員2が、そんなことを知っているのだろうか。それとも、一般的な話題を使って、カマを掛けているだろうか。いや、そんなことを考えるものいやになるような、話題をネチネチと、じわじわを持ち出して、尽きる気配がなかった。


気が付くと、今日も午前1時だった。今日も、お昼も夕食も食べなかった。最初に、コーヒーとクッキーを食べただけだ。


コーヒーとクッキーには、なにか、不思議な物が入っているのかもしれない。


研修3日目


巫女は、昨日もお昼と夕食を食べなかったと怒っていた。それで、今朝の朝食も、残り物だといって、朝ご飯をだした。


調査員「あのー。研修の出てくるコーヒーとクッキーは、なにか、特別なものですか?」

巫女「どうかな。もしかしたら、指導員さんたちの手作りですよ。きっと。裏山にはいろんな植物が生えていて、植物には、いろんな効能があるといっていましたら、きっと、それぞれの指導員が、自分特性のコーヒーとクッキーを作っていると思います。なにか、へんな味でもしましたか?」

調査員「別に変な味はしないのですが、あのコーヒーとクッキーを食べたせいで、夜中まで研修をすることになっているんじゃないかと、思ったものですから。」

巫女「調査員さん。もしかすると、あんたは、見込みがあるのかもしれませんよ。だから、指導員さんも夢中になって指導しているのかもしれません。見込みのないやつは、はやく諦めさせた方がいいって、長い時間座禅を組ませて、放っておくといっていましたら。調査員さんは、きっと、見込みがあるんです。もしかしたら、悟れるかもしれませんよ。」

調査員「え!。私が悟れるんですか?」

巫女「私は、指導員ではありませんので、わかりませんけど。とにかく、ご飯を食べてください。食べないと、残り物を出しますよ。私は、料理は得意なんですよ。」


指導員3がやってきた。今日は、将軍塚を登り、その後、ラーマン神社の本殿で礼拝をして、研修を終わるという。

指導員3「さあ、出発するぞ。お昼を持って行ってくださいね。巫女さんのつくるおにぎりは、天下一品ですよ。」

調査員「今日は何をするんです?」

指導員3「今日は、良い天気だから、お散歩でもしようかな。」

調査員「私は、研修費用を払っているんですよ。教材費も払っているんですよ。教材もなにも貰っていませんけど。」

指導員3「ラーマン神社の中興の祖の大将軍の悟りの痕跡をたどってみようかなと思いましてね。」

調査員「大将軍の悟りですか?」

指導員3「伝説によれば、大将軍は、月を見るのが大好きだったそうです。月を眺めながら、宇宙に果てまで、思いをはせていたそうです。」

調査員「私は、将軍塚は、隈なく歩き回り、地図まで作りました。もしかすると、指導員さんより詳しいかもしれません。」

指導員3「では、今日は、地面をみないで、空や景色を楽しみましょう。そして、月や宇宙におもいをはせましょう。」

調査員「あのー。昼間には、月や星はみえませんけど。」

指導員3「じゃあ、景色でも楽しみましょう。準備はいいですか。シュッパーツ。」


調査員「あの、休憩しませんか。相当上まできましたよ。」

指導員3「そうですね。調査員さん。あなたの人生の夢はなんですか?」

調査員「古代遺跡の大発見することです。」

指導員3「どうして、古代遺跡は存在するのでしょうか?」

調査員「歴史が解明できないいろいろな文明があり、忘れられたもの、未知の技術など、とても不可思議なことがあるんです。その秘密を見つけ出したいんです。」

指導員3「この星は、とてもとても昔、巨大な生き物がたくさんいました。人類が、まだ、この星に居なかったほど昔ですけどね。」

調査員「なんです。その巨大な生き物って。聞いたことがありません。」

指導員3「その大きさは、20mとか、50mにもなったんです。」

調査員「そんな大きな動物は、この星で生きていけるわけがありません。重力に押しつぶされてしまうはずです。」

指導員3「でも、岩の中に、巨大な骨が埋まっているんです。一つ、それが見つかると、それから、たくさんの恐竜の骨が見つかっているんです。人類登場以前の話ですけど。」

調査員「その骨を見る限り、私は信用しませんよ。」

指導員3「まあ、そのうち、視る機会もあるでしょう。歴史博物館で展示するという話を聞きましたjから。きっと、すごい恐竜が復元されるそうですよ。」

調査員「そうなんですか?」

指導員3「古代の文明って、いったいなんでしょうね。」

調査員「古代文明は、現在知られていない人類の文明の痕跡ですね。」

指導員3「どうして、知られていないのでしょうか?」

調査員「どこかで、歴史が途絶えてしまったということでしょうか。災害とか、他の民族による支配とか。繁栄していた文明が、うまく説明できない。だから、私たちが、全国を調査して、古代の痕跡をさがしているんです。」

指導員3「この星の過去には、素晴らしい文明がいくつもあったとお考えなのですね。素晴らしい。大将軍塚の名を遺す大将軍は、何百万年前ですからね。この星の歴史の中でも、偉大な聖人の一人と言えると思います。」

調査員「大将軍は、そんなに偉い人だったのですか?」

指導員3「さあ、大将軍塚の頂上につきましたよ。大将軍は、ここからの眺めがとても気に入っていたようです。特に、月を見るのが大好きだったと伝わっています。朝焼け、夕焼けも、素晴らしいですね。」

調査員「今、気が付いたのですが、大将軍の記録は、どこかに残っているんですか。どこにも、そんな痕跡すらないのではないかとおもうにですが。どこかに、そんな記録はありますか?」

指導員3「調査員さんが知らないのは無理はないかもしれない。なろうに、ラーマン神社1億年史というものがあって、ラーマン神社の1億年の歴史が書かれている。まだ、途中だが。そこに、今から200万年前の歴が書かれいている。スマホを持っているだろう。そうしたら、読めるぞ。」

調査員「そうなんですか。」

指導員3「せっかくなので、この頂上で、大将軍の世界を感じてみましょう。」

調査員「どうするんです?」

指導員3「心は、3次元の存在ではないんです。肉体にとらわれることはありません。どんどん大きくしていくことができるんです。すると、自分がすべて、すべてが自分になるんです。すると、そこには、善と悪、成功と失敗、私とあなた、私と他人という概念も消滅してしまうのです。ここにコップに入った水があります。この水を川に流せば、海まで流れていき、海と一体となります。すると、コップの水と海の水は、分けることはできませんが、コップに入っていた水は、元の水のまま、海と一体化してしまうんです。

 心と大宇宙のエネルギーは、コップの水と海の水と同じようなものなのです。大宇宙に、広がって同化することが可能なのです。心は、形のない、しかし、意志という個性のあるエネルギーなんです。それは、大宇宙のエネルギーと同じエネルギーなんです。」

調査員「はあ。」

指導員3「この東屋のあった場所に立って、周りの景色を見、空を見上げ、宇宙を感じて、コップの水が、海の水に同化するように、心を肉体の入れ物から解放して、大宇宙の中に広げなさい。」

調査員「はあ。」

指導員3「心を落ち着けて、息を大きく吸って、ゆっくりはいて、息を大きく吸って、ゆっくりはいて、心を大きく、大きく、大空の中で広げていきなさい。風を感じ、雲を感じ、月を感じ、火星、土星、木星、そして、銀河系を、大宇宙を感じなさい。」

調査員「はい。感じます。感じます。月が見えます。火星が見えます。土星が見えます。猛スピードで、広がっていきます。天の川銀河を超えました。大宇宙になります。」

指導員3「まさか、こんなに簡単に心が拡大するはずがない。きっと、催眠効果が効きすぎちゃったにちがいない。」

調査員「ーーー」

指導員3「はーい。戻ってきなさい。ゆっくり、ゆっくり、心を、ここに戻しなさい。急がなくていいですよ。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりですよ。」

調査員「ふー。戻りました。ちょっとびっくりしました。こんなことが、あるんですね。」

指導員3「めったにないけど。たぶん、数百万年に1度の出来事です。もしかすると、大将軍以来の出来事かもしれません。」

調査員「そうなんですか。なんだか、凄いことになってきたのかなあ。」

指導員3「でも、単なる錯覚かもしれませんけどね。では、ゆっくり、のんびり、下って、ラーマン神社の本殿にいきましょう。そこで、この研修は、おしまいですよ。そこで、研修会終了証書をお渡しいたします。」












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