創建3500万年 古墳調査員がさがしているもの
ナレーション
朝日が神社の庭を照らし始める頃
神社の庭から、神社の食堂にむかって歩いている。
調査員「おはよう。お腹が空いた。なにか、食べ物ありますか?」
巫女「あら、調査員さん。食事は、自分で作るんじゃなかったんですか?」
調査員「でも、自炊すると、クマや山ネコがやってくるから、しないように言われたんです。でも、とても、おいしそうな匂いが漂ってきたので、つい、ふらふらと、出てきてしまいました。なにか、あります。私の
分。」
巫女「しょうが無いわねえ。ありますよ。あなたが食べる分くらい。これ食べなさい。」
調査員「よかった。助かります。明日もよろしくお願いします。」
巫女「お弁当も作っておきました。それに、これ、緊急用連絡装置ですから、肌身離さず持っていてください。クマや山ネコを、見かけた時は、かならず、連絡下さいね。」
調査員「ありがとうございます。助かります。」
巫女「いったい、何を探しているんですか?」
調査員「裏山は、人工的に作られた古墳です。きっと、素晴らしい副葬品が埋まっているはずなんです、古墳の規模からして、とんでもない、お宝があるように思うんですね。世紀の大発見になるはずなんです。」
巫女「そうなんですか。頑張ってください。いってらっしゃい。」
巫女「巫女姉様。いいんですか。勝ってに調査させて。」
主任巫女「大丈夫です。緊急用連絡装置を持たせたでしょ。彼の行動はみんな筒抜けです。そうだ。離れの掃除と洗濯してあげましょう。彼が何を探し、何を見つけたのか、ますます、わかっちゃうじゃありませんか。それに、あの古墳について、私たちはなにも知らないんですよ。彼の見つけたものを監視しましょう。」
巫女「彼は、学術的調査というより、宝探しの山師です、かれの本当の目的は、誰が埋葬されているかは、どうでもいいんです、副葬品というお宝を探しているんです。」
主任巫女「そうね。たしかに、あの調査員は、研究者よりは、山師という感じですよね。でも、大丈夫。クマや山ネコが出ると脅してあるから、緊急用連絡装置をもっているから、みんなわかってしまうから、大丈夫ですよ。」
巫女「そうですよね。ところで、クマとか山ネコはいるんですか?」
主任巫女「いるかもしれないし、いないかもしれrません。でも、いるんですよ。ただ、誰も、見ていない、出くわしていないだけですよ。」
巫女「そうですよ。絶対います。」
夕方
調査員「ただいま。」
巫女「成果はありましたか?」
調査員「クマの足跡、クマの糞をみつけました。やっぱり、いますよ。山ネコは見かけませんでしたけど。」
巫女「山ネコは、人にみつかるようじゃ、餌をつかめることなんてできません。忍者の100倍、いや、1000倍すごいんですよ。山ネコを見かけたら、食べられていますよ。隙をみせずに、山ネコが、あきらめるのを、辛抱強く待つことです。いいですか?くれぐれも慎重に対応して下さいね。」
調査員「はい。なにかあったら、連絡します。」
巫女「連絡されても、私たちは、なにもできません。せいぜい、あなたの屍を拾って、神社の片隅に葬ることぐらいですね。」
調査員「そんなことにならないように、気をつけます。では、ご飯をいただきます。」
翌朝
巫女「あの調査員、今日も出かけた? 元気がいいこと。きっと、エネルギーが有り余っているのよ。ギンギンにね。」
主任巫女「なに、バカなことを言っているんです?彼は何をしているのか、コンピュータで、行動を追ってみましょう。はやく、コンピュータを持ってらっしゃい。」
巫女「調査員のGPSの動きを追ってみます。えーと。たしかに、山のほうに向かっています。山の中を,ウロウロ歩いていますね。特に、不思議な行動はしていないようですよ。まあ、まずは、隈なく山を歩き回っているようですね。」
主任巫女「まあ、調査員が、真面目にやっているらしいですね。単に、調査しているだけのようですね。でも、本当に、あの山は古墳かな。なにか、埋蔵金とか、秘密の聖杯とか、三種の神器とか、なにか、とんでもないものでも、埋まっているのかなあ。そんな伝説あったかなあ。なにかあるか、調べてみてね。」
巫女「ねえ。ウフーン。ラーマン神社の神さまああー。ウフーン。あのさあ、古墳調査員が、裏山調査しているんだですけどお、あの裏山になにか、埋まっていますう?埋蔵金とか、聖杯とか、神器とかさあ。」
ラーマン神社の神さま「裏山かあ。大将軍塚ですか?あれは、大将軍の塚です。」
巫女「大将軍ってだあれ?」
神さま「大将軍ですか。そうですね。数百万年前に、ラーマン神社の復興をしてくれた大将軍ですよ。その頃のラーマン神社は、ラーヒラ神社という神社の末寺で、ほそぼそと生きながらえている状態だったんです。大将軍がやってきて、この神社で1ヶ月ほど修行したら、大悟して、観自在の力を得て、みるみるうちに、ラーマン神社をラーヒラ神社をしのぐ大神社にしてしまったんです。もう、数百万年前のできごとですけどね。いまでは、ラーヒラ神社は、ありません。」
巫女「じゃあ。大将軍のお宝が埋まっているんですね。」
神さま「どうでしょうね。何も,埋まっていないと思いますよ。」
巫女「じゃあ、なんで塚なんてつくったんです。」
神さま「あれは、大将軍が瞑想するために、つくったものなんです。確か、月見の庵といったかな。大将軍は、月を眺めながら、静かに瞑想するのが、大好きだったんです。それで、見晴らしのよい場所に、塚を作って、その上に小さな、庵をたてたはずはずじゃ。」
巫女「じゃあ、お宝はないですね。」
神さま「無いはずじゃ。」
巫女「調査員に教えた方がいいんじゃありませんか?」
神さま「埋蔵金を探しているものに、埋蔵金はないらしいぞ。と、言われて、やめるやつはおらん。放っておけ。諦めるまで、やめないものだ。だいたい、ここまで来る前に、何十人、何百人の人から、ありもしないものをさがすなんて、なんと、愚かしいと言われ続けてきたはずじゃ。」
巫女「巫女姉さん。ラーマン神社の神さまに聞いちゃった。」
主任巫女「で、なんて。」
巫女「あの山は、大将軍が月を見るために、小さな庵を建てたんですって。だから、なにも無いはずだって。お墓も、別にあるようですし。」
主任巫女「そうなんだ。じゃあ、期待しないで、調査員の行動を見守りましょう。」