創建 4500万年 スタジアムの建設開始
「アイタタ」
ケンは、突然の頭痛に唸り声をあげた。「アイタタ」
いつも、元気いっぱいで、カゼもひかない。病気をした記憶がなかった。なのに、頭痛がする。なにか、どこかが、壊れてしまったのか。
急に、不安がこみあげてきた。けれども、死んでしまうほど、強烈ではないようだ。
だんだん、頭痛も収まってきた。
すると、少年たちが、サッカーに続きをやろうといった。大きな広場で、みんなでサッカーとやっていた最中だった。急に、ケンの動作がとまり、隅のベンチに、座り込んだが、サッカーは、佳境になり、だれも、ケンの面倒をみる余裕がなかった。
相手方に、得点を入れられて、前半戦が終了すると、少年たちは、ケンが離脱したことに文句をいうつもりでやってきたが、ケンが、変な顔をしていたので、文句をいうのをやめて、後半のサッカーをやろうと言い出していた。まあ、すこしは、走れるかもしれなかったが、「頭が痛いので、休ませてくれ」といった。
そうなると、ケンのチームは、メンバーが一人足りなくなってしまう。しかも、前半は、負けているのだ。しかし、ケンは、走れそうもなかった。
ケンが、もたもたしているうちに、試合は終わり、今回は、ケンのチームの負けだった。
ケンは、家に戻って、ベットにもぐりこんだ。頭痛は、なかなか取れなかった。ケンは、機嫌が悪かった。しかたない、頭痛なのだ。周りの声にきちんと反応することができない。
もう、あの広場でのサッカーも最後だった。あの場所は、この市による巨大スタジアム建設が始まるからだった。明日から、工事のための塀で囲まれてしまうことになっている。
ケンには、どうすることもできない。サッカーの試合といっても、子供同士の草サッカーだ。どうということこともない。
明日も、いつもとなにか、変わるわけじゃない。
ケンのポケットには、奇妙な石が入っていた。大きさは、3センチほどで、なにか、鳥のような形に作られていた。石だと思うのだが、人間が加工したものに違いなかった。自然にできたといえば、いえるかもしれなかった。
机の上に出して、眺めていると、妹が、それをかっさらって逃げていった。妹は、それをお母さんにみせて、ケンをからかっていた。
お母さんは、それをしげしげ眺めて、ケンに、これをどうしたのか聞いた。
ケン「広場で、サッカーしている時に、拾ったんだよお。」
お母さんは、「そう」といって、「これは、預からせてもらうわよ。」といった。
広場に巨大スタジアムを建設するための測量をはじめるころ、奇妙の噂が、広がり始めた。
この広場には、重力の異常があるとか、空間が歪んでいるとか、さらには、古代の宝物が埋まっているとか、さらには、巨人の墓があり、そこには、呪いが込められているとか、ほとんど、根拠のない噂だった。途方もないのは、巨人の墓で、この広場を中心に広がる丘自体が、巨大古墳か、巨大ピラミッドで、人の手で作られた丘というのか、山だという説だ。
そこで、文化庁も、半信半疑で、調査をしてみることになった。なにもないことはわかりきっているし、ここに、なにか、遺跡があるはずもないのは、明らかだった。しかし、なにも、調査もせずに、スタジアムを作ってしまうと世間がうるさいので、形だけも、掘って、なにもないことを証明しておけばいい。まだ、測量している最中だ。
どうせ、建物を作る前には、地質調査をしなければならない。
すると、ほんとうに、とんでもない大きな骨が出てきた。なんだ、これは。この星に、こんな巨大な生き物がいるわけがない。
それは、どうやら、巨大動物の全身骨格が石化したものらしいことが判明してきた。
年代測定をすると、数百万年前の動物らしいということになったが、この星に、そんな動物がいた記録がない。すると、それは、いったい、なんなのだろうか?
あまりの出来事に、スタジアム建設は延期になり、それらの骨を展示する巨大なドームが建設され、骨の組み立て作業が開始された。かつて、天をつくような大きさの動物がいあるらしい。スタジアムをつくるための用意された巨大クレーンの大きさにも匹敵するという。
それぞれの骨をくみ上げると、ほんとうに、巨大クレーンと同じ大きさの動物がいたことが判明して、世界中で大騒ぎになった。
そして、スタジアム建設は中止になり、巨大生き物が、ほかにもいるのではないかと、どんどん掘り進んでいった。
お父さんが家に戻ってくると、テレビのスイッチを入れた。
ケン「おとうさん、大きな生き物の骨が、今日もたくさん、みつかったんだって。」
おとうさん「そうか、あまり、たくさん出てくると、展示できないぞ。どうして、そんなにたくさん、骨がでてくるんだあ?」
お母さん「私が思うに、きっと、骨の捨て場だったのよ。」
ケン「それって、昔の人は、そんなに大きな動物を捕まえて、食べていたのかあ。大きなクレーンくらい大きな動物なんだよ。人間なんて、あっというまに降り飛ばされて、みんな気絶しちゃうに違いない。大砲とかミサイルがないと、絶対倒せないと思うなあ。」
お母さん「ケン、そんな物騒なことをいうんじゃありません。軍隊や戦車を持ち出して、やっつけたというんじゃないでしょうね。」
ケン「お母さん、そうだよ、絶対、軍隊で捕まえたんだよ。」