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5:臣下


 ね、眠い……。


 さっきから誰よ!

 コンコンコンコンとうるさい、ドアホは!


 私はイライラしながら目を擦る。


 ん?!

 な、なんで私、自室で寝てるのよ!


 周りを見ると多くのお医者さんが私の周りを(せわ)しなく歩き回っていた。


「えぇと……」

「マリー!」


 うっぷ!

 ア、アミラお姉様……いきなり飛び込んでこないで欲しいです。


 私が死にかけていると、セドリックお兄様がアミラお姉様を猫のように、襟元を掴んで離してくれた。


「いきなり、飛び込むな。アミラ」

「うぅ……だってぇぇ」


 アミラお姉様は綺麗な顔をくしゃくしゃにしていた。


「どうしたんですか?」

「覚えてないか?」


 セドリックお兄様はお医者さんと顔を合わせながら私に聞いてきた。


「うーん。森に行って……あっ! ウィルはどうしましたか?」

「はぁ……記憶障害はないようだな」


 記憶障害?


 私が疑問符に襲われていると、お医者さんに口を開けられたり眼球の動きなどを見られていく。


「お前がゴブリンに命名したらいきなり気絶したからな。大急ぎで帰ってきたんだ」

「そ、そうだったんですか?」

「お父上も血相変えたからな。当分、部屋から一歩も出れないと思うぞ」


 えぇ……パパン過保護すぎない?


「でも……私は命名だけで気絶を?」

「命名、そうだね。太古の言い方では別の言い方だが、今は命名としよう。その命名によって魔力がゴブリンへの中へ大量に入っていったんだよ、マリー」

「パトリックお兄様……」


 ドアから入ってきたパトリックお兄様が説明をした。


 あ、相変わらず陰気ね……。


「まぁ、マリーは無尽蔵にある魔力のおかげで、死に至ることはなかったけど……次からは気をつけるように」


 パトリックお兄様は口ではちょっと棘がある言い方をしながら私の頭を撫でた。その後ろからひょっこりとツノが見える。


 なんぞや?


「マ、マリー様!」


 誰?


「命名したゴブリンのウィルですよ。マリー」


 さすが陰気同盟のパトリックお兄様! 心を読んで教えてくれるなんて!

 というかなんかちょっと成長してない? もっと小さかった気がするんだけど……。


「マリー様……」


 私はベットに横になりながらゴブリンのウィルを呼び寄せる。


「おいで、ウィル」


 ウィルはビクビクしながら背を丸めて私の近くへやってくる。


「ウィル、シャンとしなさい。背を丸めちゃだめよ、それじゃ他の魔物に舐められちゃうわ」

「マ、マリー様ぁぁ……」


 私が(げき)を入れるとウィルは涙ぐんでその場でポロポロ涙をこぼす。


「あらあら。身体は大きいのにまだ幼いのね」


 セドリックお兄様に言われたことをウィルにそっくり言うと、セドリックお兄様が苦笑して頬をかく。


「セドリックお兄様」

「おう。わかってるよ」


 セドリックお兄様が私の秘蔵の隠し剣を取り出した。


 違いますけど。

 ……え? というかなんで隠し場所を知ってるんですか?


 動揺している私を横にウィルがハッと我に返り、片膝をついて跪いた。


 あの、え?

 これ私のとっておきなんですけど……。

 頑張って雷の魔法付与をした特別の特別なんですけど……。


 そんなのを他所にお兄様、お姉様たちが強い眼差しで見てくる。


 な、泣きそう……。


 私まで泣きそうになったが精一杯我慢して、渋々……剣をウィルの肩へ叩いた。


 うぅ、ちくしょうめ!

 ウィル! 魔王に対抗できるまで強くなれよ!


 私が願ったせいか、また体から大量の金色飛び出たが、今度は意識は失われず部屋にあふれる。


「わぁ!」

「ほぉ」


 アミラ姉様とセドリックお兄様が声を上げ、パトリックお兄様は試験官らしき物にそれを入れていたのは気のせい……気のせいだ!


 それがゆっくり回転するようにしてウィルに入ると、ウィルの身体は一気に成長してセドリックお兄様ぐらいの身の丈になってイケメンになった。


 だ、誰ですか?


「我が命は永劫にマリー様の物です」


 おどおどしていたウィルは落ち着いた低い声で私に言った。


 重いわよ!


「いいえ。あなたの命はあなたの物です」

「……ありがたき」


 ウィルは顔を伏せてポツポツと地面にシミを作った。



 数十分後、お父上がやってきたから「ウィルを傍に置きたいんですの……」とうるうる光線を発したら「うむうむ。いいぞ」と許可した。


 ふふん。

 パパン、ちょろすぎねって思ったのは内緒よ。

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