3話
私が国境付近の警備から戻ってから数刻の事。
エルシアが起きたと聞いて、私は急いで医務室へと向かった。エルシアが気を失った後の事を話す為でもあったが、個人的には自分を慕ってくれており、何度か手合わせをして育てた優秀かつ信頼における騎士だからだ。
しかし・・・巨躯なせいで他の兵士達から恐怖心と威圧感を与えてしまっていた私に対してよくフレンドリーに接してくれるものだ。エルシアを除いて私を恐れぬものは、他の強き騎士と我が主、アルトリス聖国国王であるコード・テイルズ陛下だけだ。
「エルシアは?」
「こ、こちらです騎士長・・・」
医務室へ着いた私は看護師にエルシアの元へと案内された。既に起きてはいたものの・・・
「酷い顔つきだな・・・どんな気分だ」
「察して下さいよ・・・」
最悪な気分だったようだな・・・
「着いたばかりで医師から何も聞かされて無いが、身体は大丈夫なのか?」
「ええ・・・まぁ・・・身体には異常は無いみたいで・・・強い疲労状態に近いって言われました・・・恐らく他の兵士の皆さんも・・・」
「起きてるのはお前だけだが・・・」
「多分私にされたのが弱かったから・・・あっ!そうだ!あの後どうなったんです!?てかどうして私・・・ここに・・・?てかアンダルシアさんは国境付近の警備にいたはずじゃ・・・」
こういう少し冷静をかいてしまう癖さえ治してくれればな・・・
「落ち着けエルシア。順を追って説明するが・・・少しややこしくてな・・・まだ立てるのは・・・」
「いいえ・・・大丈夫です。ちょっとフラつきますけど、歩く分だったらいけます」
「なら着いてきてくれ。話すよりも見る方が早い・・・」
「?」
ああ・・・今エルシアの頭に疑問符が浮かぶのが見えた気がするな・・・。とりあえずエルシアはベッドから立ち上がってフラつきながらも私に着いていった。
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連れてきたのはアルトリス聖国の陛下が暮らす城の地下の独房、それも最奥という危険指定された存在が送られる場所だった。このあたりは、微妙な均衡で保たれた平和の影響か、運よく今まで危険な存在が現れなかったのか、ここには今まで誰も送られた者は居なかった。今日までは・・・
「ここ・・・来たの初めてです・・・」
「安心しろ。私もだ。ここまで来る道中は何度が来たことはあるがな」
「なんでここに・・・?」
「すぐ分かる」
と、私は最奥の牢の扉の前までエルシアを連れてきた。
「一体誰が・・・え・・・」
扉の小さな鉄格子を覗いて、エルシアは驚いた。まぁ驚くのも無理はないな・・・
「あら、随分早く目覚めましたね」
そこに居たのは自分を襲撃した当の本人なのだったからな・・・
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「レイ・・・エルピス・・・」
私はその名を口ずさんだ。
「あら、覚えてくれてましたのね。はい。レイ・エルピスです。レイでもエルピスでも好きな方で呼んでください。私としては・・・レイの方で呼んで欲しいなぁ・・・なんて・・・」
なんと呑気な・・・
「とりあえず・・・レイ・・・なんで貴女がここに・・・」
「そうですね・・・私から説明するのもいいんですが・・・そちらの・・・」
「アンダルシア・オクテストだ」
「では・・・そちらのアンダルシアさんからも話したそうな様子ですし、まずはそちらからで」
「むう・・・」
小さな格子越しから見える情報だけでこちらの様子を察した・・・しかもアンダルシアさんの顔はあまり見えないはずなのに・・・魔術を使った感じもないのにどうしてアンダルシアさんの考えが読めたんだろうか・・・完全に相手のペースに乗せられてしまってる私達・・・
向こうのペースに乗せられてしまってる私達。
果たして彼女は一体・・・何者なのだろうか・・・
レイ・エルピス
イメージCV:佐藤聡美
容姿イメージ:閃刀姫ーレイ