11話
なんと腹立たしい事だろうか…。我が娘を愚弄するとは…。この中立領域、そしてカゲツがいなければ即首を切り落としてやっているのに…。
「さっさと議題に入ろう」
「ええ。ではレイ・エルピス様。円卓の中央へ」
レイ・エルピスはカゲツに言われ我らが囲む円卓の中央へと移動させられた。
「では早速ですが本議題である【レイ・エルピスの処遇】についてを」
「ああ。まずは僕から彼女についての現在までの情報を公開させてもらおう」
「頼むぞ。」
コードの説明が始まった。彼自身が聞いた事、レイ・エルピスの戦闘の様子まで全てを語った。まぁある程度はシキの情報と使い魔のカラスの目から見たものと同じだったな。情報に差がないあたり、コードは正直に話してくれたようだ。まぁ信頼に足りなければ同盟など結ぶ事など無いが…
現在ルファとアルトリスは同盟関係を結んでいる。その要因はツキノメ帝国への対抗措置としてだ。帝国というよりツキヒメ・センラにだがな…。彼女の能力によって我々は戦力を削られている。それを補う為に二領土は同盟を結んだのだ。
「以上が私からの全てです」
「分かりました。レイ・エルピスさん、話の内容に何か誤りはありましたか?」
「いえ。ありません。ああそれから私の事はフルネームで呼ばずに気軽にレイとでも呼んでください。あまり堅苦しいのは好きではないので…」
「分かりました。ではここまでの話に関して他の二領主、意見を」
そうだな…
「私としては異世界の帰還は協力しよう」
「私の意見も同様です。彼女の異世界帰還をお手伝いさせていただきましょう」
……意外だな。奴なら何かしらの反対意見でも出してくると思ったが…
「ですが…」
やはり何が来るな…
「どのようにしてお帰りになるのか…その手立てはありますか?コード国王陛下?」
「いや…現状彼女を返せる手立ては無い…」
「でしたら彼女を私の国に置くというのはいかがでしょうか?私の国であればアルトリス聖国とルファ以上の魔術技術が有ります故、異次元という未知の領域へ介入する魔術を作成も可能かと思いますが?もちろん丁重におもてなしさせてもらいますよ」
悔しいが領土全体的な魔術に技術に関しては私という存在を除けば帝国の方が上だ。個人の力としては私が強いが…そして…恐らく奴は帰還に関してなどどうでもいいのだろう…レイをコレクションに加えたい…それだけなのだろう。我が娘達が至高なのは当たり前だが、レイもそれなりに可愛らしさがある。実力も十分との事。なら自らのコレクションに加えるのは当然、という訳だな。そうはさせんぞ。
「聞く限りでは彼女は改造人間らしいではないか。しかも彼女の世界には魔術というものが存在しない。故に魔術からのアプローチはオススメしないと思うのだが…」
「で、それで?」
「我が社カルシファーとルファの企業の科学技術を総動員し、科学技術からのアプローチを行う方が効率的と判断するが、如何かな?それに魔術に関しては私の力を使えば問題ない」
「ほう…しかしレイ様は未知の技術を使っていますのよ?果たしてそちらの技術で解明できるのやら…それに魔術方面に関してですが、貴女が彼女に力をお貸しできる時間もあればの話ですが…それはどうでしょうかね?雑務でお忙しいでしょうし?」
「心配いらん。雑務なら優秀な部下がいる。そちらに任せておけるからな。心配はいらんぞ、ツキヒメ・センラ?」
センラは余裕を見せてるが、恐らく内心イラついているだろう。私もだがな。
「コード様は如何でしょうか?とはいえ、同盟関係を結んでいる国だ。だいたいの答えは察せますが…」
カゲツは質問した。
「コード様。同盟関係を結んでいますがここは中立領域。贔屓は許されませんよ?」
「…僕からはルファでの帰還の研究を推奨する。彼女は科学が絡む存在だ。なら科学技術が発達しているルファに任せるのが適任だ。が…それでも解明が難しいとなれば、魔術方面からの解明が必要になってくる。故にある程度期間を設け、その期間内に解明が出来なければツキノメ帝国で解明を行う。これが僕としての回答だ」
中立領域故に公平な判断をせざる得ないが故の回答だな。分からなくもない。
「成程。私からの意見としてもコード様の意見と同じですね。レイ様、あなたはどう思われてますか?自分の処遇について」
「そうですね…私としては特に意見はありません。ルファの科学技術も、ツキノメ帝国の魔術技術に興味はありますしね。まずは私と関わり深い科学からのアプローチが先に良いかとは思いますね。コード国王陛下と同じで」
「本人がそのようならばそうしましょうか…。しかし一つ、お聞きしておきたいことがあります」
またか…今度は何だ…
「確かにルファで研究を行うのは同意しますが、期間はどれくらいに致しましょうか?結果を出すなら、それに見合った期日をつけるべきかと」
「ふむ…三月程」
「一月。貴女ならそれくらいでわかるものでしょう?」
「未知の要素が絡むのだ。時間は欲しい」
「それでも長すぎでは?」
「十分だと思うが?」
「長すぎです。一月で」
「三月」
「一月」
互いに譲れない状態になってしまったな…。
「もう間をとってふた月にしては?長過ぎず短すぎずの期間なので…」
むぅ…仕方ない。それで妥協するか。ホントはもっと長く期間が欲しかったところだが…。センラのやつもムスッとしながらも妥協したようだが…奴はやつで早くコレクションに加えたがってるだろうな…。ならこちらも早く彼女の解析を急ぐ必要があるな。
「コード様もそれでよろしいでしょうか?」
「ああ。それでいい。だが彼女は現状アルトリス聖国の所属の人間扱いとしている。なのでお目付け役として一人私の国の騎士をつかせてもらう事を条件とさせてもらうが、構わないか?」
「ああ」
「仕方がありませんね」
「して誰を?」
「エルシア・ラグレイを付かせてもらう。うちの右腕も認める騎士だ」
「わかりました。では議論はこれにて。一度休憩を挟んでから再び円卓にて契約の方を…」
ようやくか…長いようで短かったな。コードには申し訳ないが、今回の会談も私とセンラの二人の口論になってしまったな。
こうして一先ずの問題解決への一歩へ踏み出せたが…果たしてそう上手く行くだろうか…。