第四回:レッドちゃんぽくないレッドちゃん?
やっと下船出来たヘカテの宇宙港は、高級リゾートにふさわしく、大理石やキラキラのステンドグラスや生花などで飾られていた。
到着カウンター周辺の待合スペースにはふかふかソファーや、気持ち良さそうなロッキングチェアーが配置してあって、ゆったりと過ごせそうな感じ。
そんな快適空間に存在からして似合わない青が、鋭い目付きで辺りを見回しつつ「無駄と死角が多すぎる」などとぶちぶち言っているが放っておく事にする。余計な事を言うと藪蛇にしかならない。
「手続きして来ますけど、ピンクさんはどうします?」
「ここで待ってても良いの?」
「構いませんよ。僕達三人で行ってきます。あちらのカウンターに行くと飲み物とデザートのサービスがありますよ」
「サービス?ただ?無料?お好きなだけ?」
「はい。空港使用料に入っていま……」
「いってらっしゃーい」
あたしは即返事をしてぱたぱたと手を振った。
少なくとも空港内であたしの仕事が出来るとは思えないし、レッドちゃんと少しの間別れていても、あたし達の愛に問題は無いだろうし、何と言ってもケーキ食べたいし、手続きとか面倒そうだし、ケーキ食べたいし。
グリーンとレッドちゃんが並び、後ろに目つきの悪い護衛がついた状態で、到着カウンターから去っていく。
「さって、やっと、楽しい楽しいリゾートタイムの始まりよぉ」
無料サービスでのリゾートタイムというのもちょっと情けない気もするけど、先立つものが無いのは事実だし、高級リゾートのサービスなら期待出来るしね。
実際、サービスカウンターにあったケーキやチョコレートやゼリーや焼き菓子はどれもこれも美味しそうだった。
食べ切れて、かつ悔いの無い選択の組み合わせをっ!
「悩むぅ」
「現在の一番人気はこちらのキャラメルシーブストです」
カウンターのお姉さんもゆったりとした微笑みでお勧めや説明をしてくれる。
あれやこれや悩みつつも、何とかお皿に満足出来そうな組み合わせを選び、紅茶と一緒に休憩スペースのテーブルに運んでもらって一息。
「たーのしー。これでおしまい、お帰り、ならいいんだけど。まあ、ありえないわよね」
あたしは厳選したケーキを一口。
「おーいしいっ! 幸せぇ!」
美味しいものを食べると、笑顔になれる。
感想を口に出せば余計嬉しくなる。
脳で幸せな物質が出されて、ストレスが解消される。
良い事ずくめなのだ。
自然に湧き出る笑顔と感想や味の分析を、一人楽しんでいると……。
「あれっ?」
ちょっと離れた所をレッドちゃんが歩いて行く、んだ、けど?
えと……レッドちゃん、だよね?
でも。何か違和感……。
違和感だけじゃなくて、連れも目つきの悪い青とにやにや緑じゃなくて、見た事も無い男性三人だ。
一人は確実にあたしと同職。ドクター専用の救急キットを二の腕につけている。邪魔にならず、かつ即取り出せる場所で、ドクターの基本装備。
残りの二人はゴツいのとかなりゴツいの。
「えっと」
声をかけようと腰を浮かしたその時、
「お待たせしました」
振り向くと緑がにやにや笑顔で立っていた。
後ろにはレッドちゃんと青。
「あれっ?」
「たくさん食べたんですね。もう少し食べます? まだ少し時間がありますから、お茶もご一緒できますし」
コーヒーや紅茶を追加で頼み、四人でテーブルを囲む。
「さっき、レッドちゃん知らない人と歩いてなかった?」
あたしの問いに首を斜めに傾げる緑。
レッドちゃんは無表情でコーヒーに大量の砂糖を入れている。入れすぎ入れすぎ、飽和するから飽和するから……。あ、そのまま飲んだ。しかも平気な顔で……。もしかして脳にエネルギー補給中?
「ずっと僕達一緒でしたよ」
「でもね、何かレッドちゃんっぽいけどそうじゃないっぽいレッドちゃんが歩いていたのよ」
「頭、おかしいんじゃねぇの」
青、うっさい。
「気のせいですよ」
にこにこにこにこ。緑はお気楽。
「気のせいじゃないんだけど……」
「さて、そろそろ時間です、行きましょうか」
グリーンが席を立って話もおしまいになった。
あれ、何だったのかしら……。
軍事機密とやらに関係がある、とか?
とりあえず、今は追求しない方が良いのかも……。