プロローグ
地球人と呼ばれる人々が太陽系第三惑星地球以外の太陽系惑星に居住出来る様になって数百年。
――宇宙光速航法。
通称ワープ航法を手に入れてから飛躍的に宇宙への進出が行われた。
太陽系を離れ
他の星系の生物を見つけたり
他の銀河系知的生命体に見つけられたり
小競り合いを起こしたり
和平交渉を行ったり
協定を結んだり
敵対が確定してしまったり。
と、色々な事態が起りつつも、地球人は銀河系の生命体の頂点に立つ事ができ、銀河帝国アポロニアを創設した。
初代皇帝は当時の地球人類の中に設けられていた敵性宇宙人防衛軍の大将で、本人の絶大な能力と任務執行の際に手に入れた地球外の物品や情報を掌握、周囲の有能な人物を取り込みつつ己の地位を確立した。
現在の皇帝は初代から数えて六代目になる。
帝国制は完全に浸透確立し、銀河帝国人は皇帝と選ばれた官僚で構成された政府によって、完全管理されているといって良い状態になった。
無論、例外も少数あり、帝国制に反発し他の銀河系に亡命したり、帝国領内に隠れ住んだりしつつ反旗を翻す時期を伺っている反乱分子もいるが表には一切出て来ていない。
帝国民は出生を管理され、優秀な人材を遺伝子レベルで判定、相性等を精査して行われる受精は人工子宮で行われ、そのまま成長していく。完全管理の人口子宮はかつて人類が数ヶ月に及んで体内で育てていた胎児を九十日で育て上げ、その後は健康診断の結果と遺伝子情報に則り最適とされる教育機関に送り出していく。
大昔にあった、なりたい将来などというものは無い。進んだ機関で習得した職業につくのだ。
その際、卒業時の能力ランクによってその後の人生が決定する。これを決めるのは全ての情報を入力されたマザーコンピューターだ。現在の帝国の領土全ての情報を管理、データ処理をし、どこに誰をどのいう立場で配置するのかを指示する。
ランクが高ければ軍部の中枢に採用されるし、低ければ底辺の仕事に着くしかない。帝国への貢献が少ない者は領地の端、辺境惑星他星系からの侵略に備えて心理的なストッパーの役割を果たしつつ、するかしないか不明ではあるが領土拡大の為の前線基地住人とされている。
どの職業教育機関でもこのシステムに疑問を持た無いように教育されるので、不穏思想を持った者が生まれる事は滅多に無いが、そのような者が発覚した場合、静かに速やかに処理される。これによって、帝国という巨大な組織の歯車が効率よく生み出されていく……。
例外として、初代皇帝の側で尽力した者達の直系子孫や、皇帝達のお気に入りが特権階級の貴族とされているが、皇帝の気分一つで潰す事が可能となっている。
とはいえ、幾ら従順な民が数多いても皇帝一人で帝国を保つのは無理であり、皇帝は側近や官僚を抑えられる能力を維持する為に自己研鑽を続け、皇帝を囲む側近達は己の実力を常に磨き、優秀な子供を次代に送り続けるよう研鑽を続けている。遺伝子や能力を測定されるのだから、表面を取り繕っての日和見や媚びへつらいやお為ごかしは通用しない事を誰もが理解していた。