家族の笑顔
私が産まれた時から両親は私を見てはくれなかった。勿論、赤子の頃の記憶がある訳じゃないけれど、どんなに自身の記憶を辿ったって、両親が私に構ってくれてる姿は一切無かった。
物心ついた時に両親が傍にはいてくれない事が淋しくて、専属メイドのサラに『何故、お母様もお父様もお姉様にしか会ってくれないの?』と聞いた事があった。
サラは少し悲しそうな顔をしながら『…マリア様のお身体が安定されないそうです』と教えてくれた。
それなら、私もお姉様の様子を見に行きたいと言えばサラは首を横に振るばかり。
時が流れ、漸くお姉様の容態が安定してからは、私も皆と一緒に食事を摂ることを許された。
--既に私が生まれて6年半が経っていた。
そして、ぎこちないながらも家族の仲間入りを果たし浮かれていた私は7歳になった頃…姉と仲良くなろうとした結果、姉に言われた言葉に傷付き、そして平穏だと思っていた日々が少しずつ狂い始めた。
1番最初が何だったかは覚えてはいない。
けれど、姉の大事な物が無くなれば私の部屋から見つかり、姉のドレスが汚れればその原因が何故か私であったり、沢山アレルギーを持つ姉に、何故かワザと私が食べさせようとしただの、近付けただのと…私の存在は両親の眼から見ればとんでもない悪魔に見えているようだった。
そのせいで私はまた、家族と一緒に食事を摂ることを禁止されてしまい、皆が食べ終わった後に1人ぼっちで冷めたご飯を食べている。
-そして、今日。
メイドの1人がお母様の大好きなお花だから育ててみては?と渡してくれた種に毎日毎日水やりをして、大切に育ててようやく花を咲かせた事が嬉しくてお母様にプレゼントしようと持っていっただけなのに…。
「…結局、お母様の笑顔どころか怒らせてしまった…」
…私が居なければお母様はきっとニコニコと毎日が笑顔なのだろう。だけど、私に…私にも、笑顔を向けてくれるお母様が見てみたかった。ただ、それだけだった。
何故、こうも上手くいかないんだろう。
いつもそうだ。
誰でも良い、家族のほんの少しでも私に向けられた笑顔が見たいが為に、一生懸命頑張っても姉を泣かせてしまったり、姉の体調を悪くさせてしまったり…。その結果、母や父を怒らせメイド達は私を軽蔑の眼差しで見る。
こんなのだから姉が何かあった時、私が何もやっていなかったとしても疑われ、犯人になってしまうのだ。
……私がいけないんだ。
1人ベッドの上で枕を濡らしながら悲しみにくれていた私は気が付けば眠りについていた。
そんな暮らしの中、数年が経ち…
とうとう15歳になった私は今日から王立学院へ入学する事が決まった。
--姉と共に。