表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/201

105 : それはいわゆる、両片思い - 01 -


 三ヶ月ぶりのラーゲン魔法学校では、帰省を終えたばかりの学生がひしめきあっていた。


 校門を抜けたすぐ先にある広場には、久々の再会に沸き立つ学生達が、寮の自室に戻ることもせずに立ち話をしている。

 そんな生徒達の合間を抜けながら、食堂に向かおうとしていたオリアナ達は声をかけられた。


「おーい! オリアナ、ヤナ、アズラクー! 元気してたか?」


 荷物を足下に置いたまま、広場で男子生徒と話していたルシアンが、大きく手を振っている。ルシアンの横にはカイもいた。二人とも、長期休暇前と大して変化は無い。

 オリアナも手を振り返し、ヤナ達と共に近付いていく。


「ルシアン、長旅お疲れ様」

「まじ疲れたわー。うち、辺鄙なところにあるからさぁ。あ、これ土産。ヤナも」

「お、ありがと」

「ありがたく頂くわ」


 王都に居住を持っているオリアナやカイと違い、領主の息子ルシアンは長期休暇は必ず領地に戻る。


「アズラクも」

「ヤナ様と一緒でかまわない」

「何言ってんだよ。ほら」


 ん。と差し出されたお菓子を、アズラクは苦笑しつつお礼を言って受け取った。ルシアンはこういうところがあるから、日頃無神経なことを言いまくっていても、可愛がられるのだ。


「あー皆ー! いたいたー!」

「エッダ……引っ張らないで……もぉ無理。酔った……」

「あとちょっとですわよ、ハイデマリー! 頑張ってくださいな!」


 エッダ、ハイデマリー、コンスタンツェの姦し三人組も到着したようだ。

 魔船路(ませんろ)の到着時間によって、ラーゲン魔法学校に押し寄せる生徒がどっと増える。そろそろ次の生徒の波が来る時間だ。


「ハイデマリー大丈夫?」

「魔船路で本読んでたら、酔った……」

 千鳥足でよろよろと歩いてくるハイデマリーを、オリアナが支える。男爵家の娘であるハイデマリーもまた、領地から長旅をして帰ってくる。


「ありゃりゃ。医務室行く? 荷物、私が持ってってあげるから、休んでるといいよ」


 ハイデマリーとオリアナの寮は、棟が違う。二つ離れた棟だが、何度か遊びに行ったこともあるため、部屋の場所も覚えていた。


「いやいい……ちょっとここに座る」

 自分の荷物を抱え、へたりこんだハイデマリーの腕を、カイがぐっと引いた。


「わっちょっ……」

 突然立ち上がらされたハイデマリーが、よろめきながらカイについていく。


「ねえ。ここ空けて。病人」

「あっ、はい。すみません」


 すぐそばにあったベンチに荷物を置いて立ち話をしていた生徒が、カイに話しかけられて慌てて荷物をどかす。下級生だったのだろう。かわいそうなぐらいに急いでその場を離れた。


 カイは自分が持っていた荷物をベンチに置き、ハイデマリーを座らせた。


「それ、枕にしていいから」

「あんがとー」


 ハイデマリーはベンチに横になり、カイの荷物に顔を埋めると、ひらひらと手を振る。


 エッダとコンスタンツェは顔を見合わせると、ルシアンに言う。


「わかった? あれが、モテよ」

「あれが出来ないから、ルシアンはいつまでも童貞なのですわ」


「お前らな!? カイだって童貞だからな!? 俺はそう信じてるからな!? なあ?! カイ」

「始業日から大声で何言ってんの……まじ引くんだけど……」


 ドン引きしたカイがルシアンから離れる。


(あー……これ見ると、帰ってきたなって感じするなぁ……)


 ほのぼのとした気持ちで皆を見ていたオリアナは、こことは違う意味で一際騒がしい一団を見かけた。


 ここから少し離れたところで、男子生徒が二人、女生徒に囲まれていた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
六つ花Twitter 六つ花website

死に戻りの魔法学校生活を、元恋人とプロローグから (※ただし好感度はゼロ)
書籍情報はこちらから(イラスト:秋鹿ユギリ先生)


コミカライズ情報はこちらから(漫画:白川蟻ん先生)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ