7月 ― 誘惑の色
誘・惑、さ・れ・て、みませんか?
市内のあちこちの公園で咲いているような花なのに、
実はこの花を撮るのはとても大変です。
夜明け前、日の出頃、朝日が当たる頃、お昼前。
太陽の動きに合わせ、同じ花でもどんどん色が移り変わります。
以前、知り合いの方がとても深い紫がかった花色の写真を撮られていたので
「何時頃に撮られました?」と聞きましたら、
さらりと「(午前)2時半頃」と言う答えが返ってきました。
この花に魅了されると、文字通り夜討ち朝駆け、になるのです。
もう一つこの花を撮る時に大変なのは、目、です。
ここにあげた写真は大体が開きかけの蕾の中を撮影したものです。
大きな花を一本の茎が支えているだけなので、ちょっとしたことですぐ揺れます。
揺れるとピントも外れます。
そこでピントをマニュアルにして、身体を小刻みに動かしながらピント位置を調整します。
目を凝らしてファインダーを覗き込み、ピントが合ったと思った瞬間シャッターを切る。
長時間撮影するなら、眼薬・サプリ必携です。
それでも、1時間も続けると涙が勝手に出てきます。
そんな想いをしながらシャッターを切り続けた成果は、
………10枚に1枚成功してくれればいい方なのです。
にも拘らず、毎年毎年開花を心待ちにする。
開花した、と聞いてから花期が終わるまでの午前中は、
この花のためだけにあると言っても過言ではありません。
本当に、どんな花よりも罪深い華、だと思います。