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手段は選ばない

 誕生日パーティーからは少し離れますが、私が侍女になるまでと、あいつを貶めたいと思った経緯をお話しします。


 私がブライアン家に見習い侍女として行ったのは6歳の時。理由は、当時の私は取り柄がなかったからです。両親がこのままでは王子との婚約を破棄された場合、この子は生きていけないと判断しました。そして、侍女に入れることを、ブライアン家の両親と私の両親は旧知の中のため、快くそれを承諾してくださりました……。


 っていうのは建前で、まぁ、両親曰く子爵から伯爵の位にしてやるから娘入れろって言ったらしいけど。もはや脅しですね。


 最初は突然きた同い年の知らない女の子に戸惑っていたユリアン様も段々慣れて、私も侍女と騎士と学業を両立するのに慣れていきました。そいして12歳のお嬢様の誕生日パーティーの時です。事件は起こりました。ユリアン父がロビーに来いというので二人で行くとそこには知ってる老男と知らない男の子がいたんです。


「ユリアン、こちらがロバート侯爵の嫡男のアシヌス様だ。彼はお前の婚約者だ。これから侯爵の婚約者ということを忘れず行動しろ」

笑顔でユリアンは父彼を紹介した。


誰あのブス男……おっといけない。ってかあんなやついたっけ?


私はとっさに紹介された男を見て思った。顔に出てたのだろうか、ユリアン父がおいという目で見てくる。


「初めまして、ユリアン嬢。僕はアシヌス・ロバート。これからよろしくね」

 彼は汚らしい手をお嬢様の目の前に差し出す。


は?なにこいつ。よろしくって、え?婚約者になるつもりなの???お前の分際で?なに言っちゃってんの。


お嬢様は寛大なお心なのかそういう顔が好きなのか知らないが少し頬が赤くなる。


うそでしょ?そりゃ、私の目が肥えてるだけってのあるかもしれないけど……。こいつだけは!!


「は、は、初めまして。私はユリアン・ルイ・ブライアンです。こちらこそよろしくお願いします!」


はにかみながらその手をとり、自己紹介をした。

はにかんでるお嬢様ちょー可愛いー。でもそんな奴にミドルネーム教える必要ないですよ。


「ところでブライアン殿。そちらの侍女はユリアンさんとどのような関係で?」

片眼鏡をしたおっさんがこっちを睨む。対して私は能面のような顔をしている。


「ただのしがない侍女です。何か気に触るようなことがありましたか?」

「いや、なにもないが…。ふむ。そういえば、なぜお主は伯爵の位になったのだったっけなぁ?」

「ロバート侯爵、それは婚約成立を破棄なさりたいという意思と汲み取っていいでしょうか?」

「ははははっ。すまない。くっくっく……成立の方向でお願いしたい。なぁにそんな怒るでない。どうせもうすぐ私は死ぬ。さっきの発言は老人の戯言とでも受け取ってくれ」


あの変人ロバート老人が笑ってる!!きしょくわっる…いえお口が悪いわ、アリス。お嬢様のために心を落ち着かせるのよ。ふぅ。


「じゃあ、私はこれで失礼するよ。婚約者二人で話したいことあるだろう?おい、アシヌス、粗相のないようにしろよ。あぁ、あとブライアン殿、ウェルート第一王子様によろしくな」


 そしてあの老人は去っていった。毎回会って思うがあいつは嵐を呼ぶ男だ。私が誰かやっぱバレたな。完全に。


「お父様、殿下によろしくってどういうことかしら?」


 お嬢様は首をこてんと傾げながら聞く。可愛い。そのまま彫刻家を呼んで像を造りたい。


「さぁ、わからないなぁ。ロバート様は風来坊と呼ばれてるぐらい気ままな方だから、私に挨拶がわりをしろということじゃないかなぁ。あ、二人でどこか庭に遊びにいったらどうだい?ここにいるだけじゃあ退屈だろう?」

「ブライアン伯爵卿、お気遣いありがとうございます。ユリアン嬢、一緒に行こう?」

「わかりました。アリス、大丈夫だから。では行ってきます」


 二人は手を繋いだままお互いの顔を見て楽しそうに扉を開けて出て行く。


「……ティタニー様、露骨に嫌そうな顔をするのやめてください」

「ブライアン伯爵、ここでは侍女のアリスなのでそのような発言はお控えください」

「わかった。じゃあ、アリス。侯爵の嫡男に対して苦虫を噛み潰したような顔をするな。相手の機嫌を損ねる」

「承知しました」


 そして月日は経ち、この前の冬休み明けすぐに先生が私に体育館裏にある倉庫の鍵を閉めてきて欲しい、と頼み事をされた私は周りの声に耳を傾けることはなく進んでいたのですが…。


「アシヌス様……」


 突然女の子の艶かしい声と嫌悪が伴う名前が聞こえたので足が止まる。周りには一見誰もいないように見える。しかしあいつが近くに居るのがわかる。


「リリアン嬢…俺はあなたのことを愛してます……。婚約者がいますが、あんな絶壁で可愛くない女、いつか社交パーティーで振ってやるますよ」

「嬉しいわ…」


そこからは胸糞悪すぎて聞こえなかった。

はああああ????なにあのこのクソ虫!!………絶対に許すものか。こんな輩にユリアン様が傷つけられてたまるものですか!!あの手この手で消してやろうじゃないかよ…。ブス男に気を取られたけど、リリアン嬢って誰?何様のつもり?こいつらまとめてあの世に送ってやろうかしら。



――――



「というわけで今に至ります」

「ずいぶんと行動が早いな……。あと口が時々悪いな」

「行動が遅かったら、私の愛しいお嬢様が壊れてしまいます!口の悪さに関しては目を瞑ってください」

「まあそうかもしれないけど。アシヌスってはそんなに最低なやつだったのか…。これは王子としても見過ごせないし、罰せないといけないなぁ」

「だからパーティーをやって極刑を命じて差し上げようと思いまして…。私が主催者なら誰にも迷惑かけないと思うのですがどうでしょうか?」

「ティタニーの願いでも即刻極刑は無理かな。ん~…あ、いいこと思いついた。極刑よりももっと面白い方法があるよ」



ウィルはニヤリとあくどい笑顔になる。

それを見た私は「どんな手ですか?」とさらに悪い笑顔で応えた。



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