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異世界で勇者をやっていた経験が功を奏し、なんとかうまく急所はかわしてはいるが、殴られる数がとにかく多い。
僕はダメージが蓄積し何度か意識を持っていかれそうになる。
ふと見るとみゆちゃんが悲壮な顔をしてこちらを見ていた。
「あきらさん、どいてください。このままじゃあきらさんが……。」
彼女の方をじっと見て僕は大丈夫というと、そのまま機を伺って耐えていた。
ただ、このまま打開策がないとまずいことになりそうだと焦りが募り始める。
向こうでは男が苛立たしそうに舌打ちする。
「ちっ、ナイト気取りか。まあいい、そのまま終わらせてやろう。」
そういうと影たちからの攻撃が止む
前を見ると後ろに下がった影逹の両腕が揺らめき剣のような形に変わっていった。
(あれはさすがにまずそうだ。)
「さて、その騎士さまを殺したあとにじっくりといたぶってやるよ、魅幽。」
「あきらさん、もういいです。これ以上はもう……。」
僕は彼女の声を聞きつつ、相棒に呼ぼうと考えていた。
「さて終わりにしよう。……やれ。」
そう言った男の声と共に影たちが飛び上がりその剣のように伸びた手を振り上げて襲いかかってきた。
シュン
音と共に光の筋が走り襲いかかってきていた影たちが上下に別れる。
見ると横には目を赤く光らせた瑠唯が立っていた。
その髪は以前見たときよりも紅く染まって。
「ふぅ、なんとか間に合いました。先輩、魅幽、大丈夫ですか?」
「るりちゃん。」
「大丈夫、とは言い難いかな。でも助かったよ。さすがにこれ以上はまずかった。」
「いえ、遅くなってすいません。」
そういうと瑠唯は手に持っていた刀を横手に構える。
「ちっ、榊の鬼姫か。足止めは役に立たなかったか。もう少しだったものを。」
「……。」
瑠唯は僕らを庇うように前に立つと、男を睨み付ける。
「今日はもう終わりだ、鬼姫も来たことだしな。魅幽、せいぜい日々怯えていることだな、まぁ、候補を降り私の下につけば可愛がってやるがな。」
「だれがあなたのところになんかいくもんですか。」
みゆちゃんが男を睨み付けながら即座に否定の言葉を返す。
「いまいましい女だ。」
そう言って背を向け歩いていく。
手をあげると、残っていた影たちがいっせいに襲ってきた。
瑠唯が刀を振り、みゆちゃんが手から出した炎で焼き消滅させる。
影たちをすべて倒したときすでに男は姿を消していた。
みゆちゃんと瑠唯が僕によってくる。
「先輩」「あきらさん」「「だいじょうぶですか?」」
「ちょっと大丈夫じゃない。」
僕は危機が去ったことに気が緩んだのか、壁の方によってしゃがみこむ。
彼女たちの慌てる声を聞きながら意識を閉ざしたのだった。




