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(二人息がピッタリって、仲良いんじゃないの……。)
そう思いながら、僕は一歩下がった位置で瑠唯とみゆちゃんに目を向けると、二人は再び向き合う。
じっと睨みあい、みゆちゃんが少し目をそらし、閉じた後にため息をつく。
「はぁ。」
「……。」
「やめよ、るりちゃん。別にるりちゃんとけんかしたかった訳じゃないし……。」
瑠唯も気分を切り替えるためか、目を一度閉じる。
「そうですね、私も魅幽とはけんかしたくはないです。」
そう言った瑠唯にみゆちゃんは一つ頷くと、こちらを見る。
「あきらさんもごめんなさい。せっかく遊んでいたのに、雰囲気を台無しにしちゃいましたね。」
申し訳なさそうにうつむいた彼女に、僕は手を前に出して横に振る。
「いやいや、気にしないでよ、みゆちゃん。ちょっとおどろいたけど、あはは。」
明るく振る舞って、雰囲気を変えようとする。
「……分かりました。それじゃあ、改めて。るりちゃん、今日はあきらさんと遊んでいたの?」
「ええ、あきらさんがお休みだったから、私から誘って。」
「そっか。……羨ましいなあ。もう、あきらさんもひどいですよ。私とは遊んでくれたことないのにー。」
みゆちゃんは、笑顔のまま僕の方を見た。
「え? バイトの同僚とはいえ、さすがに僕から誘うのは気が引けるよ。」
「あはは、そうですね。それじゃあ、機会があれば誘いますね。」
僕はなんと答えればいいか悩み、とりあえず、笑って誤魔化す。
彼女は僕を見て、仕方ないなぁと笑ったあと瑠唯の方を向く。
「それで、……るりちゃん。」
「魅幽、どうしたの?」
「さっきの話、私に関係のあること?」
そう言ったみゆちゃんは、いつも明るい彼女らしくもなく、少し怯えているようにも見えた。
二人はじっと見つめ合い、今度は瑠唯が息をつく。
「はあ。分かりました。詳しくはいえませんが、魅幽に不利なことではありません。幼馴染としてはっきり言います。」
みゆちゃんはじっと瑠唯を見たあと、目を閉じる。
「……分かった。ありがとう。」
彼女は瑠唯の言葉に納得したのか、こちらを見た後、
「それじゃあ、あきらさん。……今度は私とも遊んでくださいね、」
彼女は僕と瑠唯に手を振ると駅の方に歩いて行く。
振り返る寸前に見えた彼女の顔は少し寂しそうに見えた。




