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「それにしても、ほんとうに奇遇ですね。ねえ? あきらさん、それにるりちゃんも。」
みゆちゃんは笑顔で僕らを見ていた。
「……あはは、そうだね。ええと。」
なんとなく気まずい雰囲気が漂う。
僕はなんとか雰囲気を変えようと、言葉を探す。
「そういえば、みゆちゃんも街に遊びに来てたの?」
「ええ、そうですよ。私“も”ってことは、あきらさんもですか? それに、るりちゃんと?」
「え?」
思いがけない返しに言葉に詰まる。
意図せずに、僕は二人で遊んでいたことをしゃべっていたらしい。
横目にちらりと目に入った瑠唯はジト目で僕を見ていた。
「それにしても、あきらさんが誰かと遊んでいるのなんて、私、初めて見ましたよ。」
「そうかな? 僕だってだれかと遊んだりするよ。」
「そうですけどー、あきらさん、そんなにるりちゃんと仲良かったでしたっけ?」
みゆちゃんはその場から動いていないにも関わらず、プレッシャーを感じて僕は後ろに下がりそうになる。
あたかも、浮気現場を抑えられた夫のように……。
ていうか、疚しいことなんてないんだけど、そう思い、
「それはみゆちゃんには……。」
「なんですか?」
関係ないんじゃ、と言おうとして、彼女に睨まれ口を紡み後ろに下がる僕。
横の瑠唯がため息をつくと一歩前に出て、
「先輩が誰と仲が良いかなんて、魅幽には関係ないでしょ。」
今まで黙っていた瑠唯が言い放ち、二人は僕の目の前で相対するような形になる。
みゆちゃんはこんどは瑠唯のほうを見て
「るりちゃん、どういうつもり? この前までは、あきらさんとそんな仲じゃなかったよね?」
「……。」
「しかもコンビニでバイトまで始めて。るりちゃんはそんな暇ないはずでしょ。」
「それは仕事の一環みたいなものよ。家の許しも出てるわ。まあ、私にとっては願ったり叶ったりだけれど。」
「……それってどういうこと?」
みゆちゃんの目が、昨晩見た冷たい眼差しに変わる。
「仕事のこと? 魅幽に知らされてないってことは、知らなくても良いってことよ。」
「な!」
どんどん険悪になっていくふたりに僕はそろそろ止めた方がいいと思い、二人の間に入る。
各々を見て、
「まあ、二人とも仲良くしよう……。」
「あきらさんは、」「先輩は、」
「「黙っていてください!」」
「……はい。」
僕は再び、一歩下がるのだった。




