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ー時間は少し戻りー
ゲームセンターでお目当てのものを手に入れた瑠唯と店を出て駅に向かって歩く。
辺りは日も沈みかけ、夕方から夜に差し掛かっていた。
「遊びすぎちゃいましたね、先輩。」
瑠唯は手にぬいぐるみを持ち、ニコニコとしてこちらを見る。
「むきになってたから最後にそのぬいぐるみが取れて良かったよ。」
そう答えつつも、これから食費を切り詰める必要があるほどに手痛い出費ではあった。
実家にご飯を食べにもどろうかと思い悩む。
「どうしました? 先輩。」
瑠唯は少し先に出て、こちらを覗き込む。
「何でもないよ。……いや、少し前まで瑠唯とこんな風に出掛けるようになるとは思わなかったなって。」
僕は素直にそう思う。
立ち止まると彼女は目を閉じ、口元に笑みを浮かべる。
「……そうですね。私もそう思います。」
「でも、良かったなって思います。」
「そうだね、僕もそう思うよ。」
そう言って、二人並んで歩いていった。
◇◇◇
駅に近づくにつれ、人通りも増えていく。
僕は歩きなが周りを見る。
「まだまだ人が多いね。」
「そうですね。でも、みんな駅に向かってますから、帰るところなのかも。」
確かに、道行く人の多くが駅に向かう方向に歩いていた。
ふと歩く人の中に、バイト先でよく見かけるサイドテールに髪を束ねた女の子が目に写った。
「どうしました? 先輩。」
声をかけられ、瑠唯の方を見て視線を戻したときにはさっきの女の子は見失っていた。
良くある髪型なので気のせいかと思い、「いや、なんでもないよ」と返す。
すると、後ろから声をかけられ、
「え? あきらさん?」
「え?」
振り向くと、そこには私服姿のみゆちゃんが立っていた。
◇◇◇
「やっぱり、あきらさん。」
「みゆちゃん、えと、奇遇だね。」
「あはは、そうですね。」
僕は特に疚しいことはないのにも関わらず、背中に冷や汗をかいていた。
みゆちゃんは僕の隣にめをむけて、少し驚いた顔をする。
「え? るりちゃん? あぁ、あきらさんとお出掛けだったの?」
「えと、うん、そうだよ、魅幽。」
瑠唯は魅幽から少し目を反らしつつ答える。
「へー、そうなんだー。」
みゆちゃんは笑顔を見せた。
僕は彼女の目を見て、後ろに下がりそうになる。
みゆちゃん、目がわらってないよ……。




