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「へえ、こんなところにゲームセンターがあったんだ。気がつかなかったよ。」


そこは表通りには面してはいたけれど、駅から少し歩いた場所にあった。


そうは言ったものの、異世界から戻ってきて、バイト先と実家以外に遠出して出歩くこともあまりないので、僕としてはそもそも気づく以前の問題ではあるのだけれど。


「はい。駅から少し離れているので、なかなかここまで来ることはないですよね。」


「そうだね、瑠唯は来たことあったの?」


「はい。学校の友達と数回だけですが……。」


僕は少し驚きだった。


彼女の家は聞いていた限り、家柄的に厳しそうで、こんなところで遊んでいるようには見えなかったからだ。


「ちょっと驚いたよ。家から遊んじゃダメって言われているのかと。」


そんなことを言うと、瑠唯は一瞬目を大きく開け驚いた様子を見せた後、口に手を当てて笑う。


「うふふ、そんなわけないじゃないですか、先輩。私だってゲームセンターで遊びますよ。それに友達とカラオケだって行きますし。数が少ないのは家の仕事と部活で忙しいからです。」


言われて、僕は彼女が陸上部であったことを思いだす。

最近の夜に出会った印象が強すぎて、そのことをすっかり忘れていた。


「そういえば、陸上部だったよね。」


「はい、そうですよ。部活ではこんな感じで走っています。まあ、家の仕事と掛け持ち? なので毎日部活に行っているわけではないんですけどね。」


彼女は今は真っ直ぐに下ろしている髪を、両手で束ねて見せつけてきた。


「……えと、部活ではポニーテール?」


「そうですよ、先輩。……えと、どうしました?」


僕は髪を束ねただけでいつもと違う雰囲気になった瑠唯にドキッとする。


少しして、彼女はハッと何かに気づいたような顔を見せた後、すぐに表情を変えてこちらを横目で見ながら、にまにまと笑い始めた。


「ふーん、そうですかぁ。先輩はこれがお好きと……。」


瑠唯は手で髪を後ろに束ねた格好のまま、僕の目の前に立つ、さっと距離を詰めてきた。


「ほらほらどうですか、先輩。」


「……ほら、瑠唯、早く中に入ろ。」


距離が近くなったこともあり、少し頬が熱くなるのを感じる。


僕は顔を見せるのが恥ずかしくなり、彼女から顔を反らすと、彼女を置いて店の中に入る。


「あっ、待ってくださいよ、先輩ー。」


彼女は慌てて僕の後を追ってくるのだった。

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