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「そう言えば、みゆちゃんが住んでいる辺りって何か危なかったりするんですか。」
少し客足が途絶え暇になってきたので、同じように少し暇そうにしているエリザさんに、なんとなく聞いてみる。
「ん?どういうこと?」
不思議そうに聞いてくるので、みゆちゃんを送っていった後のことを彼女に説明する。
彼女は少し難しい顔をした後、あそこら辺りは夜は街灯も少なく暗いし、大きな家も多いから泥棒が狙いやすいんじゃないかな、と教えてくれる。
そうなんですか、と僕が返すと、エリザさんは、そうそう、それより仕事仕事と、話を切り上げた。
◇◇◇
あれから時々やってくる客に対応していると、ようやくバイトの終了時間が近づいてきた。
「おはよう、そしてご苦労様。霧島さん、弓取くん。」
いつものように店長がやってくる。おはようございます、と店長に返した後、店の裏に行き、引き継ぎのために必要性な情報を報告する。
それからバイト終了時間になると着替え、エリザさんと途中まで一緒に帰ると、お疲れさま、と挨拶をして一人で家路に着いた。
◇◇◇
あれから何事もなくバイト先とアパートの往復を繰り返す日々が続いていた。
また、あの日、みゆちゃんを送って行った日の後に、榊とも何回か会うことがあったが、とくに変わった様子もなく、普段通りに僕をからかっていた。
今日は珍しくバイトもなく、夜の食事のために(バイト先ではない)近くのコンビニへと弁当を買いに出る。
アパートの階段を降り、コンビニへと続く道に出る。周りはすっかり暗くなり、人とすれ違うこともほとんどなくなっていた。
そのコンビニは普段向かっているバイト先よりは近いとはいえ、歩いて片道30分はかかる。こんどバイト代がでたら自転車でも買おうかなどと思いながら道を歩いていると、かなり離れた先に二つの影がちらりと見えた。
異世界での経験は、こちらの世界に戻ってきても幾つかは引き継がれていて、目の良さもその一つだ。
普段であれば見ないことにするのだけれど、影の片側が姿形と服装が、榊と先日夜に見た私服に少し似ていたこともあり、気になって、影が消えた方に向かうことにした。
◇◇◇
「たしか、こっちのほうだったよな……。」
そう呟きながら、影がきえていった方へ歩いていく。
道を幾つか曲がりながら進むと、袋小路に差し掛かる。ふと道先に目をやると人の形をしたものがうずくまっていた。
暗がりであまり気がつかなかったが、うずくまっている人の周りの地面が赤黒く染まっていた。
「えっ?だ、だいじょうぶですか?」
背格好と男ものの服装から榊ではないとは思いつつも、確かめようと近づいていく。
近づいて見てみると、それは目を見開いたまま事切れている、男性だった。非日常的な光景に出会した僕は直感的にまずいと思い、急いで道を戻り袋小路から出る。すると、
「あれ、だれかと思えば先輩じゃないですか。」
奇遇ですね、と先日と同じような感じで偶然出会ったかのように話しかけてくる榊が暗闇の中に立っていた。ただ、以前に出会ったときには布にくるんでいたであろう刀を右手に持って。