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よろしくお願いします。

ふと壁に目をやり時計を見ると、みゆちゃんのシフトが終わる時間になっていた。


「みゆちゃん、そろそろ終わりの時間だよ。」


「あっ、ほんとうだ。あきらさん、ありがとうございます。それでは、ちょっと奥に行ってきますね。」


みゆちゃんは小走りに店の裏に入っていった。


◇◇◇


まばらにやって来る客の対応をしていると、茉莉さんとみゆちゃんが一緒に出てきた。


みゆちゃんは来たときと同じ学校の制服に、茉莉さんはコンビニの制服に変わっていた。


「あきらさん、それじゃ、私はこれで帰りますね。」


「うん、お疲れさま。それじゃあ気を付けてね。」


僕は手を挙げて、みゆちゃんに挨拶する。


レジ打ちの準備をしていた茉莉さんがこちらを見る。


「アキラ、今日ずっと働きっぱなしでしょ。気分転換に魅幽を送って行ってあげなさい。」


「いやいや、まりさん。あきらさんに悪いですよ。」


みゆちゃんは手を横に振る。

茉莉さんは僕の方に手を向け、行ってきなさいとひらひらと振る。


「ほら、アキラ。こっちは大丈夫だから行ってきなさい。」


「分かりました、ちょっと行ってきますね。みゆちょん、少し待ってて、準備してくるから。」


「あっ、あきらさん、大丈夫ですって。」


みゆちゃんの声を後ろ背に聞きながら、急いで店の裏に向かった。


◇◇◇


店の外に出ると、みゆちゃんが入り口の端で待っていた。


「おまたせ、それじゃあ行こうか。」


「あっ、はい、それじゃあよろしくお願いします。」


声をかけると、みゆちゃんもこちらに気が付き寄ってきた。


二人並んで道を歩いていく。


辺りは既に真っ暗になっており、道行く人もほとんどいない。


「ここら辺は街灯も少なくて暗いよね。」


「そうですね、もう少し先に行けば住宅も増えるんですけど……。」


「これだけ暗いと危なくないかな。例えば、変質者とか……。」


「いえいえ、大丈夫ですよ。こんな田舎町だからそんな人が住んで居れば直ぐに噂になりますよ。」


僕はそんなものかと思いながら歩く。

みゆちゃんは、はっと思い出したような顔をして、こちらを見る。


「何回も送ってもらってすいません、あきらさん。」


「構わないよ。それに茉莉さんも言っていたように、気分転換にもなるし。」


「ははは、それなら良いんですが。ええっと、初めて送ってもらったのはエリザさんがシフトのときでしたっけ?」


「たしか……、そうだったね。少し前なのに、かなり昔のような気がしてたよ。」


「あはは、そんなお爺さんみたいですよ、あきらさん。」


「いやいや、いろいろあったからね。ほら、瑠唯も急にバイトを始めるし。」


僕はそう言い、以前、この道を通ってみゆちゃんを送っていった帰りに、瑠唯と会ったことを思い出す。


「そう言えば、初めてみゆちゃんを送った帰りがけに瑠唯と会ったんだよ。あの時は暗がりから突然声をかけられて驚いたなあ。」


「……へえ、そうなんですか、るりちゃんと……。」


いつもの明るい声とは違う少し無機質な声色に驚く。


「え? みゆちゃん?」


「あきらさん、どうしました?」


こちらを怪訝な顔をして覗き込むように見せた彼女の顔はいつもと変わらず、さっきのは気のせいかと思い直した。

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