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よろしくお願いいたします。
「はあ、あんたたち、何やってるの? 仕事中でしょ?」
声の主に気づいたみゆちゃんは、茉莉さんに近づく。
「どうしたんですか? まりさんのシフトの時間にはまだ少し早いですよね。」
彼女は壁に架かっている時計を見て、首をかしげ不思議そうにした。
「ええ、そうなんだけどね。少し早く用事が済んだのだけれど、中途半端な時間だったから、こっちに来て時間を潰して待とうと思って。」
「そうなんですかー。それじゃあ、時間まで奥で休んでますか?」
「ええ、そうさせてもらうわ。」
そう言って茉莉さんは、僕とみゆちゃんに手をあげて軽く挨拶すると店の奥に入っていった。
みゆちゃんは茉莉さんが入っていった方を見ていた。
「はぁ。まりさん、いつ見ても綺麗ですよね。」
「ははは、みゆちゃんは茉莉さんに会うと毎回言ってるよね。」
「それはそうですよ! まりさんは私の憧れですか。大人の女性って感じで、はぁ、いいなぁ。」
みゆちゃんは再度ため息をついていた。
鷺ノ宮茉莉さんは僕より2つ年上の大学生で、背の高さはみゆちゃんよりも頭一つ分以上高い。
髪は腰辺りまであり長く、バイトに来るときはいつもストレートに下ろしており、バイトが始まると、髪をあげている。
茉莉さんはシフトに入ることも多く、僕ともよく一緒になる。
シフトに入る数が多いのは、店長を除くと、僕が一番でその次がエリザさん、そして茉莉さんの順番になる。
ただ、茉莉さんはシフトの変更が多い。
急に外せない用事ができるみたいで、みゆちゃんやエリザさんに代わってもらっている。
そんなこんなで、みゆちゃんと接する機会も多い茉莉さんに対して、背も低く、顔付き童顔の部類に入るみゆちゃんには憧れもあるようで、彼女を慕っている。
「はいはい、みゆちゃん。そろそろ休憩は終わりで仕事の時間だよ。」
「はーい、分かりました。時間もあともう少しですし。そう言えば…… あきらさん、まりさんに助けられましたね。」
みゆちゃんの追及から上手く逃げれたと思っていた僕は苦笑いしながら、レジの方に向かった。




