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いつもありがとうございます。
僕はスマホから鳴り響くアラームの音に起こされて、布団から起き上がる。
「もう、こんな時間か。」
スマホを手に取り時間を確認すると、もう、バイトに向かう時間になっていた。
アパートを出て、いつものようにバイトに出かける。
「たしか……、今日はみゆちゃんと一緒だったよな。」
昨日見たシフト表を思い出す。
瑠唯とは、先日、バイトの後に別れて以降会ってはおらず、彼女が最後に言っていたように、次のシフトまで間が空くらしかった。
(家の用事かな? また危ないことしてなかったらいいんけど。 )
(たしか、瑠唯は家に関係する仕事って言ってたわ。まあ、今回は危ない仕事じゃないみたいよ。ただ、時間がちょっとかかるとか。)
(へえ、そうなんだ。よく知ってるね。って、いつ聞いたの?)
(この前、アキラと瑠唯が働いているときにね。すこし時間ができたら学校の帰りに寄るそうよ。)
(そんなに無理しなくていいのに。)
(はあ。前途多難ね。……瑠唯をもう少し焚き付けないと。)
心の中の相棒の言葉を聞き流しながら、バイト先に向かう途中、よく見る後ろ姿を見つけ、声をかける。
「みゆちゃん。」
彼女はこちらを向き、声をかけたのが僕と気づくと、結った髪を左右に振りながら、こちらに駆け寄ってきた。
「あきらさん、こんにちわ。 今からバイトに行くところですか?」
「そうだよ、みゆちゃんもだよね?」
「はい! 珍しいですね、一緒の時間になるなんて。いつもはあきらさん、ギリギリになるから。」
「ははは、まあ、今日は少し早めに家から出れたから。」
「へえ、そうなんですか。……あきらさんってたしか、この先をずっと行ったところに一人暮らししているんでしたっけ?」
彼女は僕が来た先を指差す。
「そうだよ。もう一年近くになるかな。親に無理言って始めたんだ。」
「そうなんですか。ご両親は反対したんじゃないんですか?」
「そうだね 。最初はすごく反対されたけど最後はなんとか許してくれたよ。」
「羨ましいな。うちじゃあ絶対に無理ですから。」
彼女は少し暗そうな顔をする。
僕は空気を変えようと、笑いながら話す。
「親は許してくれたけど、妹は最後まで反対していたよ。なんとか宥めて、月に何回かは戻ることにしてるんだ。」
彼女は顔を上げ、ばっとこちらを見た。
「えっ? 妹さんがいるんですか? こんど写真とか見せてくださいよ。私、一人っ子だから羨ましいです。」
明るさを取り戻した彼女を見ながら、他愛もない話をしつつ、コンビニへ向かうのだった。




