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少し分けました。次回でこの章は終わりです。
それではよろしくお願いします。
榊が僕の横に立ち、心配そうな顔をして覗き込んでくる。
「先輩、大丈夫ですか、怪我はありませんか?」
「うん、なんとか無事だよ。それより、榊は大丈夫?」
「あ、はい、えとノーツさんのおかげで。」
ノーツってだれ? と思ったけれど、榊が手に持った弓をこちらに見せてきたので、記憶をたどり相棒の名前を思いだす。
(ああ、アグール・ノーツ……だからノーツさん?)
(アキラ、もしかして私の名前忘れてなかったでしょうね?)
突然、心の中に響く彼女の声に、ドキリとさせられる。
もう大丈夫と思ったのか榊の手から消え、相棒は僕の方に戻ってきた。
突然、手から弓が消え、オロオロしている貴重な榊を横目で見ながら、まずは相棒にお礼をする。
(ありがとう、それにいろいろ榊をサポートしてもらったみたいで。)
(まあね。と言っても、あの娘は面白かったし、けっこう楽しめたわ。)
本当に楽しかったのか、機嫌良さそうにそう言うのだった。
◇◇◇
「せ、先輩、ノーツさんが消えてしまいました。」
「ああ、こっちに戻ってきただけだよ。それより、あの男どうしようか。」
そう言って、男の方を見る。榊も同様に目をやり、真面目な顔をすると、顎に手をやり考える。
「……先輩、あれのことは気にしないでください。こちらで処理しますので。」
「……分かったよ。えーと、僕とあの弓のことは……。」
「それも気にしなくていいです。先輩の事情はノーツさんに聞きました。こちらで上手くやっておきます。」
問題ないと言う風に榊は胸を張る。僕は夕方の榊の表情を思いだし、心配になる。
「それじゃあ、榊の負担が大きいし、僕もなにか……。」
彼女はその言葉を遮る。
「あ、先輩、瑠唯です。」
「へっ?」
「瑠唯って呼んでください。魅幽のことも名前で呼んでますよね。」
「え、いや、でも……。」
「分かりましたね、先輩。それじゃ話は終わりです。早く行ってください。」
よく見ると、榊はまだ先程の戦いの興奮が覚めないのか顔を少し赤らめ僕を睨み付ける。
彼女は矢継ぎ早にそう言って、僕の背中を押して、さっさと帰れと僕を追い払った。
僕はその有無を言わさない榊の雰囲気に圧され、家の方に向かって歩き始めた。
(ふふ、まあ、せいぜい頑張りなさい。)
(え? 何をがんばるの?)
(あなたじゃないわ、気にしないで。)
そう言うと、彼女はそれ以上は何も言うつもりはないのか口を閉ざした。




