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よろしくお願いします。
男の鉈が縦に横にと縦横無尽に振るわれる。
「くっ。」
思った以上に速い動きで、鉈が体のすぐ横を通り抜ける度にヒヤリとする。
振り下ろされる鉈を避け、そのまま横に回ると、刀を男に切りつける。
ギャっという音と人を切ったとは思えない抵抗を受け、思わずたたらを踏み、後ろに下がる。
男は気にした風もなく、横凪ぎに鉈を振るってきた。
ブンっと目の少し先を鉈が通過する。
一歩間違えれば、顔が二つに別れていたところだった。
馴れない武器とあまり得意ではない間合いに何度か危ない目に合いながら、なんとか対応する。
(このままじゃいつか当たりそうだ。)
時間を稼ぎ、相棒が榊の傷を癒し、手元に戻れば状況も変わる。
そう思い、一度距離を開けようと、相手が大振りしたのを見計らい、後ろに大きく跳ぶ。
跳んで前を見ると、鉈を振り下ろしていた男の姿がない。横からゾクッとした気配を感じて、とっさに刀を向ける。
ギャリっと金属同士が当たる音がするや否や、僕は仰け反るように体を逸らすと、刀を折り鉈が通りすぎた。
僕は瞬時に距離を開けた。
男はさすがに避けられると思っていなかったのか、追っては来ずに、話しかけてきた。
「まさか、今のを避けられるとは思っていなかった。ふむ。どうだ、我々の元に来ないか。」
勧誘に乗るわけもなく断る。
「お断りだね。」
「我々の元に来るのであれば、そのくたばりかけの女をくれてやってもいいと思ったが……。まあいい。そろそろ止めを刺してやろう。」
いよいよ不味いと思いつつも、榊の様子を見るために男から目をそらすと、真っ二つにされる未来が見える。
男は今にも飛び掛からんと構える。
その時、ヒュッという音が僕の斜め後ろから通りすぎる。男に向かい矢が放たれたのだった。
矢は男の足下に刺さる。
男は矢の飛んできた方に目をやるのを見て、僕もちらりとそちらを見る。そこには榊が弓を放った格好で立っていた。
「ふむ。起き上がれるような状態では無かったはずだが……。まあいい、再び切り裂いてやろう。」
そう言って榊を睨み付けた。
次回から榊視点です。




