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主人公視点です。
よろしくお願いします。
時間は少し前に戻る。
◇◇◇
「いいから、これを握ってろ!」
僕は榊に相棒を握らせ彼女に榊を任せる。
(榊を頼んだ!)
(はいはい分かったわ。この娘は任せときなさい。)
落ちていた榊の刀を拾うと、男に向き合い刀を構える。
よく見るとその男は真っ赤な髪を逆立て牙を剥き出し、鬼のような風貌をしていた。
こちらを見て男はニヤニヤ笑う。
「なぜ、立ちはだかろうとする。その女には襲われていたように見えたが。なに、そいつを片付けるのを邪魔しなければ見逃してやる。」
そう言って男は片手にも大鉈を数度振るう。
「なぜ、榊を襲ったんだ! 」
「なぜ? ……おまえはその女が何者か知らないのか? 襲われていたからてっきり知っているものと思っていたが……。」
無言でいると男は馬鹿にした風にこちらを見る。
「その女は、この地の管理者を気取っている鳳家の犬に成り下がった榊の裏切り者だよ。」
「……裏切り者?」
「そうだ、この地は我ら榊の血を引くものが治めるのに相応しい故、鳳家を皆殺しにするべくあらゆる手を尽くしてきた。」
男は目を見開き、声を荒らげる。
「にも関わらず、その女と家族に悉く邪魔をされ、手の者が殺されてきた。さあ、そこをどけ! 今ならまだ見逃してやる。」
「断る!」
「ふん、その女に媚を売っても良いことなどないものを、可哀想なことだ。まあいい、いっしょにあの世へ送ってやる。」
男は手に持った鉈を大きく振り上げる。
ドンっという衝撃音とともに、男はその体の大きさからは信じられない速さで前に飛び出す。
あっという間に目の前に現れ、と同時に鉈が振り下ろされる。
鉈の大きさと速度から刀では受けきれないと判断し、咄嗟に体を反らして避ける。
バンっという音が響き、土が巻き上がり鉈が地面を裂いた。
その衝撃と破壊力に僕はゾッとする。
(これは当たるだけでもひとたまりも無いな。)
そう思い、相手を撹乱するべく、止まることなく動き続けた。




