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今回までが榊視点です。

「それで、あなたはこの弓で、所有者は先輩で、先輩は異世界で勇者をやっていたと……。あ、なんと呼べばいいですか? えと、ノーツさん?」


(呼び方はなんでもいいわ。それより、やけにあっさり信じるわね。)


「ここまで常識外のことが自分の身に起こると信じるしかないです。それに、そう思うと不思議に思っていたことがスッキリしますし。」


(あ、そう。)


「えと、あと傷を治してくださったんですね。ありがとうございます。」


(まあ、アキラがどうしてもあんたを助けたいと泣きついてきたからね、仕方なくよ。二度はないわよ。)


そう釘をさされるが、それより、先輩が私をどうしても助けたいと聞かされ、うつむいてニマニマしてしまう。


(そうですか、先輩が私を……、ふふ。)


(ちなみに、治癒力を高めるためにあなたと仮契約しているから心の中の声が私に筒抜けよ。)


「うそ? しゃべったことだけじゃないんですか!」


(違うわ。仮でも契約していれば、思ったことが通じるわ。)


(い、いつからですか! ま、まさか、さっきまでずっと!)


(ええ、そうね。あなた、もっと無感情かと思っていたけれど、思っていることはけっこう情熱的ね。アキラのために殺されても良かったなんて。)


と言うノーツさんの言葉を聞いて、頬が熱くなるのを感じ、他に余計なことを思っていないか、記憶をたどった。


(あ、終わった……。私のイメージが…。)


いろいろ思い出して、がっくり項垂れる。まだだ、ノーツさんを止めれば、そう思い直す。


(せ、先輩には秘密にしておいてくださいね! 絶対ですよ!)


(うんうん、分かったわ。)


面白そうに言う。もし、表情が分かるならば、絶対にニヤニヤ笑いだ、と思っていると、


(……あなた、ちょっと気に入ったわ。アキラも使い馴れない刀で苦戦しているみたいだし、私が力を貸してあげるから、アキラを助けてあげなさい。)


言われてそちらを見ると、先輩は私の刀を持って戦っていた。ただ、あまり巧く扱えているとは言えず、相手に避けられては反撃され、見ていてヒヤリとする。


(上手くやって恩に着せれば、またデートできるわよ。)


からかうノーツさんの言葉は無視して、先輩を助ける方法に耳を傾けた。

次回から主人公視点に戻ります。

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