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よろしくお願いします。
榊に注意を払いながらも、これまでの経緯を相棒に軽く説明する。
彼女はジッと弓を見ていた。
「ようやく本気になりましたか? 先輩。上の方々はその弓に非常に興味を持たれていまして、ついでなので、先輩を始末した後に持って帰ることにしましょう。」
相棒は、自分の認めない者に所有されることをものすごく嫌う。榊の、見も知らない者達が自分に興味を持ち、ましてや持って帰るとまで言われたのを聞いて、苛立ちを抑えきれないでいた。
(へぇ、小娘が言うじゃない。アキラ、分かってるわよね、返り討ちにしてやるわよ。)
(いやいや、落ち着けって。)
僕は心の中で宥めつつ榊を見ると、刀をもつ手を体の真横に伸ばして、刀を水平にする。
次の瞬間、彼女は僕との距離を詰め、その勢いのまま、刀を横に薙ぐ。
僕は相棒のおかげで先程より力が上がっているため、刀の切っ先を見極めながらしゃがんで避ける。
避けたのもつかの間に、彼女は勢いのまま振った腕をそのままに折り返し、斜め下に切り下ろす。
これを空中に跳び避け、そのまま宙返りして着地するとそのまま後ろに跳ぶと、一瞬遅れでその場にシュっと刀が風を切る音が聞こえた。
榊とは少し間合いがあき、彼女の連撃が一時止む。
「先輩、なんなんですかその動きは! さっきまでと全然違うし。」
榊は、無表情を少し崩し、少し苛立ちを見せる。
「それに、なんで攻撃してこないんですか。先輩、甘いこと考えていたら、私に殺されますよ。」
「……。」
「ちっ。」
答えない僕に、榊は舌打ちする。
彼女は両手で刀を持ち、先をこちらに向けと突きを溜めるように構える。
ザッという音とともに瞬時に間合いを狭めて、ほぼ同時に思える速度で数度突きが繰り返される。
僕は彼女が動くと同時に後ろに跳んでおり、弓を射つ構えとともに現れた光る矢を、少しタイミングを開け、威嚇程度に彼女に向けて放つ。
榊は体を横に反らして矢を避けた。
◇◇◇
そんなやりとりが何度続いたか分からない。周りはすっかり暗くなり、月明かりだけが僕と彼女を照らしていた。
「先輩、どういうつもり何ですか。やるのは牽制程度で、後は避けるだけなんて。」
「……。」
返答しない僕に、彼女は、はあ、とため息をつき頭を横にふる。
「ああ、もう! いいですか、先輩! 本気でやらないと……。」
そう言った時、榊の後ろからドスンという何かが落ちるような音が響く。榊の背には彼女より一回り以上大きな男が立っており、振り上げていた鉈のような刃物を振り下ろすところだった。
「えっ? 」
彼女の戸惑う声の後、ザクッと肉が深く切れる音と宙に血が舞った。




