表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/62

21

よろしくお願いします。

榊に注意を払いながらも、これまでの経緯を相棒に軽く説明する。


彼女はジッと弓を見ていた。


「ようやく本気になりましたか? 先輩。上の方々はその弓に非常に興味を持たれていまして、ついでなので、先輩を始末した後に持って帰ることにしましょう。」


相棒は、自分の認めない者に所有されることをものすごく嫌う。榊の、見も知らない者達が自分に興味を持ち、ましてや持って帰るとまで言われたのを聞いて、苛立ちを抑えきれないでいた。


(へぇ、小娘が言うじゃない。アキラ、分かってるわよね、返り討ちにしてやるわよ。)


(いやいや、落ち着けって。)


僕は心の中で宥めつつ榊を見ると、刀をもつ手を体の真横に伸ばして、刀を水平にする。

次の瞬間、彼女は僕との距離を詰め、その勢いのまま、刀を横に薙ぐ。


僕は相棒のおかげで先程より力が上がっているため、刀の切っ先を見極めながらしゃがんで避ける。


避けたのもつかの間に、彼女は勢いのまま振った腕をそのままに折り返し、斜め下に切り下ろす。


これを空中に跳び避け、そのまま宙返りして着地するとそのまま後ろに跳ぶと、一瞬遅れでその場にシュっと刀が風を切る音が聞こえた。


榊とは少し間合いがあき、彼女の連撃が一時止む。


「先輩、なんなんですかその動きは! さっきまでと全然違うし。」


榊は、無表情を少し崩し、少し苛立ちを見せる。


「それに、なんで攻撃してこないんですか。先輩、甘いこと考えていたら、私に殺されますよ。」


「……。」


「ちっ。」


答えない僕に、榊は舌打ちする。

彼女は両手で刀を持ち、先をこちらに向けと突きを溜めるように構える。


ザッという音とともに瞬時に間合いを狭めて、ほぼ同時に思える速度で数度突きが繰り返される。


僕は彼女が動くと同時に後ろに跳んでおり、弓を射つ構えとともに現れた光る矢を、少しタイミングを開け、威嚇程度に彼女に向けて放つ。


榊は体を横に反らして矢を避けた。


◇◇◇


そんなやりとりが何度続いたか分からない。周りはすっかり暗くなり、月明かりだけが僕と彼女を照らしていた。


「先輩、どういうつもり何ですか。やるのは牽制程度で、後は避けるだけなんて。」


「……。」


返答しない僕に、彼女は、はあ、とため息をつき頭を横にふる。


「ああ、もう! いいですか、先輩! 本気でやらないと……。」


そう言った時、榊の後ろからドスンという何かが落ちるような音が響く。榊の背には彼女より一回り以上大きな男が立っており、振り上げていた鉈のような刃物を振り下ろすところだった。


「えっ? 」


彼女の戸惑う声の後、ザクッと肉が深く切れる音と宙に血が舞った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ