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少しだけですが更新。本日、2話目になります。ご注意下さい。
榊の様子は先ほどまでと明らかに違っていた。
彼女は目を閉じ刀をぐっと握るとともに、全身に力を入れる。すると、立っていた地面は徐々にひび割れ、彼女の髪は重力に逆らい、そして、風もないのに揺らぐ。
カッと目を開いた彼女の目は紅く染まっていた。
パンっと空気が裂ける音とともに榊の姿が消える。一瞬の後に横に現れた時、彼女は刀を水平に構え、そのまま首の高さで横に薙ぐ。
先ほどまでと段違いのスピードに虚をつかれ、一瞬反応が遅れるものの、その場になんとか屈む。
頭上から聞こえるヒュッという風切り音にヒヤリとしながらなんとかやり過ごし、彼女を見上げる。
すでに彼女は頭上に刀を構え、そのまま次の動作に移り、振り下ろすどころだった。
「くっ。」
しゃがんだまま、体勢を崩しつつもなんとか横に跳び、そのまま地面を転がった勢いで、しゃがんだ姿勢にもどり彼女の方を見る。
そこにはすでに姿はなく、背中からヒヤリと感じ、勘だけを頼りに斜め前に飛び込み、そのまま、くるりと前転した時、後ろにいた榊が刀を突き出す姿が見えた。
後ろを確かめることなく避けたことが功をそうし、なんとかやり過ごすと、榊は追撃を止め、こちらをじっと見る。
「先輩、ここまでとは思いませんでした。先程は万が一前に跳んだところで、串刺しにするつもりだったんですが……。」
僕は少し息を切らしながら、黙っていると、彼女は続ける。
「ただ、おかしいんです。先輩やご実家を調べても、そんな実戦経験をしたような経歴は出てこなかったんですよね。ねえ、先輩、どういうことなんでしょうか。」
そう言いつつも、紅く染まった目をした榊は無表情で、こちらの答えを期待しているような様子ではなかった。
僕は立ち上がると、何を言っても無駄そうな榊の様子に、いろいろ考えていた理由は無駄だったなと思いつつ、片手を前に出し、何もない空間を握るような動作をする。
空間が歪み世界が悲鳴をあげるような音とともに僕の手の中に光輝く弓が現れる。
「僕のことは前にも説明しただろ、榊。」
(何事かと起きてみたら、またおもしろそうな状況ね、アキラ。)
そう軽口を叩く相棒に、おもしろい状況なわけあるかと思うのだった。




