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説明回になります。よろしくお願いします。
榊と別れてから、なんとか自分の暮らすアパートまで歩き着いて、部屋に入る。
そのまま敷きっぱなしにしてある布団の上に倒れ混むようにうつ伏せになった。
ふと気が付けば、手に持っていた弓はいつの間にか消えていた。
「痛っ。」
戦いの最中続いていた興奮もようやく冷めてきたのか、いまになって、体中に痛みが押し寄せてきた。
「ふぅ、今日はいろいろあったな。」
始めは偶然だった。榊によく似た影を見つけて、興味本位で追いかけた。
昨晩、榊と会ったときの状況から、何もないとは思っていなかったけれど、追いかけた先の出来事は斜め上どころか別世界のような出来事だった。
いま無事にここにいられるのは、異世界での戦いの日々の大半を一緒に過ごしたあいつのおかげと思い、ふと気づく。
(あれ、そういえば、あいつの声が聞こえない?)
(はぁ、やっと気づいたわね、アキラ。久しぶりの現界なのに、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったわ。だから、ちょっと休んでたのよ。)
(えっ、大丈夫なのか? )
(ええ、一年以上おとなしくしてたんだから、ちょっとやそっとじゃ眠りにはつかないわよ、心配しなくていいわ。)
彼女は武器として力を発揮するときには魔力と呼ばれる力を使う。
彼女自信にも魔力はあり、それを使うこともできるが、なくなると彼女は魔力が回復するまで眠りについてしまうため、異世界では、基本宿主である僕の魔力を使っていた。
ただ、異世界ではトップクラスと呼ばれていた僕の魔 力は、この世界に戻ってきたとき、ほとんど感じ取れないくらいに小さくなっていたのだ。
(まあ、この世界はあっちの世界みたいに常時危険は無さそうだし、私は普段は寝ておくわ。)
あとは、と彼女は続ける。
(アキラに、昔ほどとは言わないけど力が戻れば、私も楽ができるんだけどね。)
(いやいやいやいや、この世界はあの世界と違って魔力なんて……、あっ。)
そう言って気づく。
(そう、今日アキラが会ったあの娘は間違いなく魔力を使っていた。つまりこの世界には魔力を使う術、魔力を鍛える技があると言うことよ。)
(じゃあ、また、あっちの世界みたいに力が使えるということ?)
(そうね。まあ、この世界は、あの世界ほど大気に魔素が満ちていないから、全盛期ほどには戻らないでしょうし、あっちの世界に置いてけぼりにしたあのちっこい魔法使いや聖女みたいに大魔法は使えないと思うけれどね。)
あの二人は、ろくに挨拶もできずに別れることになって、カンカンでしょうね、といった、後半の言葉はあまり聞こえない振りをしつつ、力が戻る可能性に胸を踊らせていた。




