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よろしくお願いします。
「先輩がここに来た理由は分かりました。遠くから私の姿が見えたとか、にわかに信じがたいところはありますが……。」
それでその弓はなんなんですか?、と説明のつづきを促される。
「えーと、この弓は……。その……、そう僕は異世界から来た勇者で、これは選ばれし者が使える由緒正しい弓なんだ!」
意を決して話してみた。
「……。」
榊は先ほどまでの無表情とはうって変わって、痛々しいものを見るように、ジト目で僕を見てくる。
(……まあ、ほんとうの事なんだけれど、信じてもらえなかったみたいね、この娘には。)
気まずい沈黙が続き、僕はこの時をどう乗りきろかと思案していると、
「まあ、分かりました、今はそれで良いです。どうせこれ以上は無駄になりそうですし。それに合って問い詰めるタイミングはいくらでもありますし。」
センパイの中二病に付き合うほど、私は暇ではありませんしね、と続けて言う彼女の言葉に僕は心を抉られて倒れそうになりつつも、一先ずはなんとか見逃して貰えたようだと安心する。
少しして、彼女の口撃からなんとか復帰し、気になっていたことを確認する。
「えと、あの男はそのまま放っておいていいの?」
というと、彼女は家のものが対処するので問題ありません、そう言って、周りをチラリと見るのだった。
◇◇◇
彼が去ったあと、道の真ん中に立ったままの榊の側に般若の仮面をつけた人影が近づいてくる。
その体には男性にふくよかさが見られることから女性と思われる人影は、榊の隣に立つと彼女にそっと確認してくる。
「お嬢様、あの男、そのまま行かせて良かったのですか? 必要であれば今から手の者に追いかけさせ、始末させますが。」
「止めておきなさい、さっきの様子だと、追いかけたところで貴女たちには手に負えないでしょう。それに、素性も住んでいる場所も分かっているんだし、後でどうとでもなるわ。」
それよりあの男を片付けておきなさい、そう指示をした後、彼女は持っていた刀を軽く振るう。
いつの間にか側にいた別の者から、刀の鞘を受けとると、それから数度振るったあとに刀を鞘にしまった。
彼女は自身の家のある方に向かって歩き出しながら、さっきまでのことを思い返していた。
彼に会うまでは、いつものつまらない仕事だとおもっていた。
それからは彼を見つけた時には、どうしてやろうかと思い、どこからかか弓を出し構えたときには不覚にも見惚れてしまった。
彼について聞きたいこと知りたいこといっぱいあった。
「つまらない仕事だと思ってたけど……。いいおもちゃが見つかったわ。ふふ、明日から楽しみね、覚悟しておいてくださいね、先輩。」
そういうと、彼女は、彼が帰っていった方向をチラリと見ると、コンビニで彼をからかうときのように、ニヤリと笑った。




