10
申し訳ありません。少し遅くなりました。
よろしくお願いいたします。
先ほどまで、眩いばかりに彼の身体の周囲を回っていた光は成りを潜めはしたものの、彼が手に持つ弓には喜びを隠しきれないように僅かに光が舞っていた。
一方、そんな彼の様子を見て、これまで彼の姿に見いっていた榊はようやく我を取り戻したかのように彼に問いかける。
「あの、先輩、その弓と矢はいったいどこから。それにさっきまでたくさんの光の線が先輩の周りを回っていましたよね。ほら、今もその弓の周りが光ってますよ。」
彼女は先程までの後継を思いだし混乱しているのか、矢継ぎ早に彼に問いかけた後、聞きたいことが多すぎる、どういうことですか先輩と叫び、頭を抱えていた。
僕はいつもの様子とは違う彼女にどう話しかけようか迷ったあと、とりあえず普段どおりのトーンで冗談混じりに声をかけてみる。
「まあまあ、榊、落ち着いて。榊はどんなときでも僕に冤罪を被せようとする冷静沈着さが売りじゃにないか。」
「これが落ち着いていられますか!というか、先輩は私のこと、そんな風に思ってたんですか!」
(あきら、落ち着かせるにしてもその言い方はどうかと思うわよ。)
心の中で聞こえるその声を無視して、売りになんてしてません、先輩ひどい、と少し涙目で睨み付ける彼女から目をそらし、僕はいつもの榊にもどってきかな、などと考えていた。
◇◇◇
僅かばかりの後、
「まあ、今はいいです。聞きたいことは後でまとめて聞くことにします、弓取先輩。」
それより先にあの男のことを片付けないといけませんし、そう言った後、先ほどまでの続きを再開しようと榊は手に刀をもったまま、今までほったらかしにしていた男の方を向きなおす。
一方、男の方はと言えば、何が起きたのか分からず混乱して、動けずに未だにその場にジッとしていた。
今、まさに男に切りかかろうとした彼女を僕は遮る。
「ちょっと待ってよ榊。ほら、さっき取引しようって言ったじゃない。あの男を代わりに倒すから、さっきまであったことをいろいろ見なかったことにしてよ。」
「いやいや、なしにはしませんよ。」
それに、別に取引するとも言ってないんですが、まったく、先輩は、と榊は続け、はぁとため息をついた後にしぶしぶ後ろ一歩下がる。
そんな榊を横目に僕が再び弓を構える。構える僕を見て、男は自身の置かれている立場を思い出したのか、僕を睨み付け、今にも飛びかからんとした。
「さて、待たせたね。」
(仕切り直しね、あきら。こんな雑魚、さっさと倒しちゃいましょ。)
心の中で彼女の声が聞こえるとともに、僕の身体の周りには、先ほどよりは激しくはないが、かといって少なくない量の光の束が幾重にもまわりはじめた。
一度目の更新です。朝までにもう一話更新したいと思います。




