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第2話 初めての奴隷生活

いわゆる日常回

第2話

初めての奴隷生活


「とりあえず治療だな」

ラルフが鎖を外す。そういえば体中擦り傷だらけだ。足の裏もなんかひどいことになっていた。

「痛っ!」

 傷があると気づくと途端に痛みが襲ってくる。結構痛い。

「ではお嬢さん、失礼」

 老齢の獣人が私の前に立ち手を掲げる。手が淡く光り出す。するとなんだか体がポカポカしてきた。痛みが退いていき傷が治っていく。

「わあ、すごい…」

 魔法だろうか、すごい便利だ。

「この老いぼれはこれくらいしかできませんがな」


「ありがとうございます、えっと…」


「ルーク、と申します」


「ありがとうございますルークさん」

 ぺこりと一礼してお礼を言うとルークさんは優しく笑った。

「さて、傷は治りましたが汚れは落ちません、風呂に入るとよいでしょう」

 私と女の子はバスルームに案内された。体を洗いながら自己紹介をする。

「私ミノリ、あなたは?」

 異世界だし苗字がないところかもしれないからとりあえず名前だけ名乗る。

「わたしはリリーです、ミノリさんは違う世界?から来たんですよね」


「うん、そうよ」

 ちょっとだけ私の世界の話をしてリリーのことも聞いた。リリーはが私を連れて逃げた村は元から廃村で1人で住んでいたらしい。かわいらしい見た目だけど逞しい子だ。

 話しているときにあることに気付いた。リリーの首には首輪がはめられてなかったのだ。私は買われてすぐに首輪をされたのだが彼女はされなかったのだろうか?

「ねえ、リリー、あなたはこの首輪してないの?」


「えっ、あ、隷属の首輪ですか、それならルークさんに外してもらいましたけど」


「外してもらった!?」


「は、はい…」

 この隷属の首輪というものは使用者の魔力に反応するアイテムで使用者が外したいと思えばいつでも外せるらしい。リリーには必要がないということで外してもらったらしい。

 なぜリリーは外してもらえるのに自分は外してもらえないのか。不公平だ! 文句言ってやろう。バスルームの扉を開くとちょっと寒かった。文句を言うのは温まってからにしよう。湯船につかる。

「ああ~、気持ちいい」

 疲れや不安などの感情が抜けていく。でも怒りは収まってない。

 湯船から上がり体を拭き服を……服がない! いや、どうせ今まで裸同然だったんだ

もう裸でもいいか。

「ラルフ!!どういうことよ」

 お風呂に行く前にラルフが入っていった気がする部屋の扉をバンッと開く。

 そこにいたのはラルフ……なのだろうか?

 銀色の毛並みは同じだった。服装も似たようなものだが決定的に違うものがあった。胸だ、おっぱいがあった。さっきまで見ていたラルフはすごい胸筋だった。でも今は柔らかなおっぱいがついていた。

「ラルフ、あなた女だったの?女体化?」


「何だこの失礼な奴は?」

 声も違う。完全に人違いだ。

「すみませんでした!人違いです」


「待て」

 部屋を出ようとしたところで呼び止められた。

「何でしょうか?」


「そうか、キサマが兄上の言っていた奴隷か」

 ぎろりと彼女が私を睨みつける。ものすごい圧力だを感じる。

 兄上……ってことはラルフの妹?

「女子が肌を晒して歩き回るものじゃない」

 そう言って私を部屋に置いて部屋を出ていった。

 ちょっとして戻ってきた彼女が持ってきたのは白いワンピースだった。

「ほら、お前の服だ」

「あ、ありがとうございます」

 差し出されたワンピースを着る。ちょっと大きめだけどこの人のってわけではなさそうだ。尻尾を出す穴もないし人間用のワンピースだ。

「兄上の部屋は反対側だ」

 グイグイと背中を押され部屋を追い出された。名前を聞きそびれてしまった

 いや、それよりもラルフだ! 危うく怒りを忘れかけていた。反対側の部屋の扉をバンッと開く。

「ラルフっ!」


「なんだ、奴隷のくせに失礼なやつだ、ノックくらいしろ」


「それよ、奴隷の件よ!あなたこれ外せるんでしょ」


「ああ、外せるぞ」

悪びれもせずにそういうラルフにさらに腹が立つ。

「外しなさいよ!」


「断る」


「理由は?」


「前世虐められた仕返しってとこか、お前を奴隷として置いておきたい」

 ラルフがにやりと笑う。殴りたくなるような笑顔だが殴るのはやめた。

ラルフが仕返しだなんて考えていないってわかるからだ。前の私と同じ、好きな子に意地悪したくなるアレだろう。

 そうとわかれば怒りなんてほとんどなくなった。

「いいわ、じゃあよろしくね、ご主人様♡」

 媚びるような声でそう言ってやった。

「な、なんだよ、ホントに調子狂うな」

 またラルフが顔を赤らめた。ラルフをいじめるSな感じの私とのギャップに照れているんだ。やっぱりかわいい。


 食堂で改めて自己紹介を済ませ食事をとる。

 食事に関しては元の世界と大して変わらなかった。ただ魔獣の肉とかよくわからない材料が使われていることだけの違いだ。

 獣人…イヌビト?であるラルフたちは器用にフォークやスプーンを使っている。見た目以外は人間と大差ないみたいだ。

 ところで私は白いワンピースを着ている。つまりソースとかが跳ねると非常に目立つ。

 私は何とか零さないようにと緊張しながら食事をとることになった。その様子をラルフの妹レイアがまたニヤリ笑いながら見ていた。このために白のワンピを着せたのか。

 ラルフも私をいじめたい様子だったし兄妹そろってS気があるのだろうか。何とも微笑ましい。そのうち仕返ししてあげよう。



「おやすみなさい」

 リリーと同じ部屋でベッドに入る。食事を終え早々に就寝することになった。今日は色々疲れているだろうから働くのは明日からでいいとラルフが言っていた。奴隷の仕事が何なのかわからないけどひどいことをされるということはないだろう。



翌日

 まぶしい朝日と小鳥のさえずりに目を覚ます。

「おはようございます、ミノリさん」

 起き上がるとリリーはすでに着替えてベッドを整えていた。リリーが着ているのはメイド服。彼女は今日からこの屋敷のメイド見習いとなるからだ。

 私は奴隷なのでそういう制服はない。クローゼットの中に服は用意されているのはどれもこれも黒か白のワンピース。奴隷が着る服に似ているからということらしい。昨日は白だったから今日は黒を着ることにしよう。

 コンコンと扉がノックされルークさんがやってくる。

「おはようございます、2人とも用意は済んでいるようですね」

ルークさんは感心したようにうんうんと頷く。

「ではリリー、行きますよ」


「あれ?私は?」


「ミノリ様は待機でお願いします」


「ええ…っていうかミノリ様って、私奴隷なのに」


「いえいえ、主の奴隷というのはこう、ペット…いえ、ご友人的な意味ですので

 使用人風情が失礼な口はきけません」

確かにラルフは私を労働源として連れてきたわけではない。かといって性欲のはけ口にしたいわけでもなさそうだ。普通の奴隷とは扱いが違う。

 でもせっかくだし何か手伝いたい。

「あの、流石にタダ飯ぐらいというのは…」


「大丈夫ですよ、主のお世話でもしてもらいますので

 とりあえず主の起床時間までは待機でお願いします」


「あ、じゃあ、ミノリ様…」


「いや、リリーは様付やめて」


「はい、ミノリさん、またあとで」

 行ってしまった。待機と言われてもやることがない。向こうの世界ならスマホを触って時間をつぶすけど森ですべてを失ったから向こうのものは何1つもってない。まあそもそも財布しか入ってなかったけど……

 とりあえず2度寝? いやいや、せっかく起きたのにそれはない。そうだ、外に出てみよう。

「うわあ…」

 気持ちいい風が吹いている。草原の草が風に揺れていい音を奏でている。ところどころに可愛い花も咲いていい匂いがする。元の世界の景色とは比べ物にならないほどいい景色だ。

 風を感じながらラジオ体操をする。まだ仕事は始まらないがどんな仕事が待っているかわからないから体を動かしておくに越したことはない。

「いっち、にー、さん、しー」

 体操を終え少し散歩。馬車が通るように開けた道以外は見渡す限り草原。遠くに森が見える程度でホントに何もない。

 あんまり遠くへ行くと心配するだろうから近場だけを歩く。でも景色が全然変わらないから飽きてすぐに屋敷に戻った。

 屋敷に戻るとちょうどルークさんに会った。

「ちょうどいいところに、これを主の部屋に持って行っていただけますか?」

 ティーポットとティーカップの乗ったトレイを渡された。

「モーニングティー、ですか?」


「はい、主を起こしてください、主は少々寝坊助なところがございますので」

 トレイを両手で持つ。高そうなカップだから落さないようにしないといけない。ちょっと緊張する。

 ラルフの部屋の前に着いた。そーっと左手をトレイから離しドアノブにかける。右手だけだとちょっと震えるけど持てないことはない。なんとか扉を開ける。

 中に入るとラルフが気持ちよさそうに眠っていた。かわいらしくて、意地悪したくなる、そんな寝顔だ。

 さて、どうやって起こそうか

 鼻と口をふさごうか? でも口が大きいから押さえづらい。

 ベタではあるがベッドにもぐりこんでみようか。下半身の方からシーツをめくってみる。

「わぁお…」

 男性特有の現象が起きていた。思わず顔が赤くなってしまう。これはいけない、私の方が持たない。

 ではどうしようか。当たりを見渡し使えそうなものは……紅茶? これでいこう。

「ラルフ、起きなさい」

 ゆっくりと揺する。

「ん、んん~、まだ早いだろ…」

 嫌そうな顔がまたかわいい。ここからがいたずらの始まりだ。

「はやく起きてくれないと、私、おしっこ漏れちゃうわ」


「はいはい、言ってろ言ってろ…」


「あっ、出ちゃう…」

 私はカップを床に置き腰の位置から紅茶を注ぐ。

 チョロチョロ、ビチャビチャ

 なかなかいい水音が出せた。

「えっ、ミノリ!」

 ラルフがガバッと起き上がりこっちを見る。驚いて何とも間抜けな顔だ。

「おはよう、私のおしっこ、飲む?」

 にやりと笑って紅茶を差し出す。

「お前………」

 ラルフはハァっとため息をつきティーカップを手に取る。

「おいしい?私の……」


「やめてくれ」

 ラルフは少し笑った。紅茶がおいしかったのだろうか。それとも私に振り回されてた昔を思い出したのだろうか。

「それより、あれ、なんとかしろよ」

 ラルフが床を指さす。紅茶が跳ねて床を汚していた。

「ラルフ、舐める?」


「誰がやるか!!……そうだ、ミノリ、その床舐めてふき取れ!」

 体が勝手に動き出す。四つん這いになり顔が床に近づいていく。

「ちょ、やめなさい、ラルフ!!」

 あと数ミリで舌が床につきそうになる。

「やめろ」

 体の自由が戻る。私は慌てて立ち上がり布巾で床を拭く。

「これにこりたらいたずらはやめるんだな」

 勝ち誇ったようにラルフが笑う。これはフリということだろうか。だって本当にやめてほしいなら2度とするなと命令すれば済む。きっと本能的に私に弄られることを望んでいるのだ。

 これからもちょくちょくイジってあげよう。

 目が覚めたラルフの身支度を手伝い食堂へ向かう。ラルフとレイアそして私が席に着く。

「兄上、なぜこの者も共に食事をするのですか?昨日は客人ですが、今日から奴隷として扱うのでしょう」

 もっともな意見だ。

 奴隷だろうがペットだろうが主人と一緒に食べるのはおかしい。

「フン、俺は他のやつとは違うからな、食事を共にするくらい気にしない」


「……兄上がそういうのなら」

 渋々という感じでレイアは引き下がる。どうやら私はレイアに嫌われているらしい。

嫌われているというか目の敵にされているというか、どうも居心地悪い。

 食事を終えラルフの部屋に戻るとラルフはなにやら書類仕事を始めた。

「ねえ、手伝おうか?」


「読めるのか?」

書類を1枚渡される。そこに書いてあるのは見たこともない文字だった。指輪でわかるのは話してる言葉だけで文字まではわからないようだ。

「じゃあ何してればいいの?」


「立ってても疲れるだろ、座ってたらどうだ」

 ベッドに腰かけラルフをじーっと眺める。

 改めて見るとラルフはかっこいい。犬だった頃はどっちかというとかわいい系だった。今のイヌビトの姿は強そうで頼りがいのあるアニキ肌のような顔だ。

 だからこそ時々見せる恥じらった顔とか焦った顔が以前以上にかわいい。

「……あんまじっと見ないでくれ」

 やった! 照れ顔ゲット!!

「そうね、じゃあお話しましょ、なんで私の事買ったの?」


「そりゃあ知り合いが他人に売られたらなんか嫌だろ」


「リリーを買ったのは?」


「お前の知り合いかも知れなかったからだ」


「私のことどう思ってる?」


「そりゃあ好……」

 ラルフは好きって言いかけて口を覆った。

「ただの奴隷だ」

 一旦唾を飲みゴクンと喉を鳴らしてからしゃべった。相当焦ったようだ。

「一瞬違うこと言いかけなかった?ねえ、なんて言ったの?」


「言ってねえ、何も言ってねえ、もうお前部屋から出ろ!」

 照れ隠しからの命令で追い出されてしまった。もう少し遊びたかったけど仕方ない……と思ったけど命令は部屋から出ろ。じゃあ入り直せばいい。何とも間抜けなご主人様だ。

「ねえ、ラルフぅ……」


「仕事終わるまで出てろ!!」

 今度こそ追い出された。ラルフに呼ばれるまで何をしていようか。

 リリーはルークさんの手ほどきを受けて掃除している。何とも楽しそうだ。邪魔しちゃ悪いから別の場所に行こう。

 とりあえず外に出る。庭にあるベンチに誰か座っている、といっても他の3人が家の中にいる以上可能性は1人しかいない。

 レイアは何をしているのだろう。こっそりと様子をうかがってみる。

「兄上は私のことを好き、嫌い、好き……」

 どうやら花占いをしているようだ。なんて乙女チックなんだろうか、思わずからかってみたくなる。

 私はベンチの後ろに回り込み。

「何してるの?」

 声をかけた。

「っ、ああああ!!!」

 レイアはビクッとしてベンチから跳びあがった。

「キ、キキキ、キサマ!何をしている」


「散歩、で、そっちは何してたの?」

 レイアは花をポイっと捨ててきりっとして見せた。

「奴隷風情が質問とは、身の程を知れ!!」

さっきも思ったけど、レイアのこの態度、私が奴隷だから嫌だという嫌悪感ではない。どこか私を敵視している、そんな感じがする。さて、なぜ彼女が私を敵視するのか。それは明白だ。

「ねえ、回りくどいのやめたら」


「何?」


「私がラルフと仲良くしてるから気に入らないって言えばいいんじゃない?」


「キサマ…そうだな、私はお前が嫌いだ!いきなり現れて、兄上と楽しそうに……

 前世の主だか知らんが今世では私の方が付き合い長いんだぞ!」

 そんな風に張り合おうとするなんて、なんてかわいいのだろう。

「じゃあ告白したら?」


「こ、告白だと!?できるか!!」

 顔を真っ赤にしながらレイアは言う。

「私は実の妹だ、兄上と結婚なんてできるはずもないだろう、常識だろう!」

 結婚とは言ってないのだが、まあ同じことか。それにしてもレイアは血のつながりを気にしてるのか。なんとなく、背中を押してあげよう。

「レイア、あなたの愛はその程度なの?血のつながりが何?種族の違いが何?

 本当の愛は常識なんて超えるのよ」

私もそうだ、犬のラルフに恋して愛してしまった。でも後悔もしないし誰に恥じることもない。

 愛とはたぶんそういうものだ。同じ相手を愛するものとしてレイアにもそれは知っておいてもらいたい。

 まあラルフを頂くのは私だけど。

「お前は、兄上が好きなんだな?」


「っ……」

 そうだと言いたいのに言葉が出ない。他人にもこの気持ちは伝えられないのか。何とももどかしい。

「恥ずかしくて言えないと?はん、キサマの方がその程度か、と言ってやる」

 レイアはにやりと勝ち誇ったような顔をする。

「私は兄上が好きだ!キサマには負けん!」

 そう言ってレイアは屋敷に戻っていった。これはもしかしてラルフを取られる可能性が出てきた? 余計なことを言ってしまったかもしれない。

これは気合入れてラルフを勝ち取りにいかなければ……そして私が勝った暁には2人そろって虐めてあげよう。

 昼ご飯を食べ終えるとリリーが休憩時間だと言うのでリリーとおしゃべりすることにした。

「リリー頑張ってたね、疲れてない?」


「いいえ、森で食べ物を探すよりずっと楽ですので

 それに、ルークさんが優しく教えてくださるので」

 なんか顔が赤い。

「もしかして、ルークさんの事…」


「は、はい…」

 結構なお歳のようだけど、枯れ専? それとも今まで1人で生きてきたから父性を求めているのだろうか。なんにせよ恋することはいいことだ。

 それにしてもこの屋敷の女性は私を含めて全員恋しているじゃないか。やっぱり女生とは恋に生きるものなんだな。

「ルークさん、お優しくて、格好よくて、気品に溢れて、本当に素敵な方です」


「そっかぁ…」

 メチャクチャ熱弁してくる。

「ミノリさんは?ラルフ様の事、お好きなんですか?」


「………」

 また言葉に詰まってしまった、この首輪め!

「きゃああ、そうなんですね、主人と奴隷、禁断の恋、なんて、きゃああ!」

 この子こういうキャラだったんだ……

「頑張ってください、応援してます!!」


「う、うん、リリーも頑張ってね」

 休憩を終えラルフの部屋の前に戻る。

「ラルフ、もう入っていい?」


「ああ、構わん」

 許可を得て部屋の中に入る。ラルフはぐったりと椅子にもたれかかっている。

「仕事は終わったのね、何する?」


「疲れたからな、寝る」

 そう言ってラルフはベッドに横になった。寝たら朝のようにいじられるとわからないのだろうか。それともそんなこと気にならないくらい疲れてるのだろうか。

それならゆっくりと寝かせてあげようか。でも寝たら私が暇だ。

「ねえラルフ、マッサージしてあげようか」


「マッサージか…下手じゃなければやってもいいぞ」

 ラルフがうつぶせになる。私はその上に座り背中を指で押す。服の上からでも感じる毛皮の感触その下に硬い筋肉。

「んっ、ふっ!」

 結構指が疲れる。

「あんまり効かんな…」

 不満そうな声が聞こえる。こっちも正直楽しくもないし……踏もうか。

 私は立ち上がり右足を背中に乗せる。右足に体重をかけ踏み込む。

「おお、いいぞ!」

 さらに左足も背中に乗せる。

「っ、ほっ」

 うまくバランスを取るのが難しいがラルフの背中に乗ることができた。そのまま体重を左右交互にかけ足をずらし背中を順に解していく。バランスボールみたいで楽しい、そしてラルフを足蹴にしているというのが楽しい!

 ちょっと上の方に移動して、右足を頭に……

「って、これ手じゃなくて足か!乗ってんじゃねえ!」

 ラルフが態勢を変えようとする。

「きゃあああ!」

私はバランスを崩した。仰向けに変わったラルフの顔にぶつかりそうになったところをベッドに両手を突きギリギリで留まる。

「あ、危ねえな!」

 もう少しでキスをするところだった。そう思うとちょっと恥ずかしくて顔が赤くなってしまう。胸がドキドキしてしまう。

 ラルフも同じようで顔を赤くしている。

「ラ、ラルフが急に体勢変えるからでしょ」


「俺は昼寝するからミノリは好きにしてろ」

 そういってラルフは反対を向いて寝た。

「………」

 まだ胸のドキドキが収まらない。いたずらする気も起きない。

 だから私は、ラルフの傍で一緒に寝た。


 夜になって思い返してみると今日はほとんど仕事してない。仕事らしいことと言ったらラルフにお茶を持って行ったくらいだ。

奴隷とはいったい何なのか、謎が深まる1日だった。


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