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召喚祭その五

「お久しぶりで御座います、我が主よ」


 コイツは隠すつもりが有るのだろうか、魔力感知に劣る人間であっても近寄れば分かる程の多大な魔力、更にマントの端から爪やら尾をチラつかせている。


「久しぶりだな、ペルフェクトゥス」


 今のペルフェクトゥスはぎりぎり辛うじて人型をしているが、本来の姿は竜だ。真竜と呼ばれたかつての竜の長、過去の勇者達によって狩り尽くされた為に、今では最後の一頭。


 ちなみにペルフェクトゥスは、俺が弔いの為に訪れた竜の谷で見つけた卵を、俺自身の手で還し育てた竜である。先代の真竜が寿命を終える直前に、産んだ卵から生まれた転生竜で、先代の力と記憶ほとんどを引き継いでおり、育てる苦労は全く無かった。


 今は『壁』の中央付近にある竜の谷いて、眷族である翼竜や地竜達と共に『壁』を守っているはずの彼が、なぜ人間の街にいるのだろうか?


 問いかけようとした時、ペルフェクトゥスが先に口を開いた。


「我が主よ、お聞きしたい事がまず一つ、そのお答え次第で謝罪せねばならぬ事が一つ、最後に伝えねばならぬ事が一つ」


「聞きたい事って何だ?」


 ペルフェクトゥスが直接来るほどである、よほど重大な話であろうと身構えたその時、少々斜め上の答えが返ってくる。


「私が主の元から巣立ち、竜の谷に移り住んだ後に、主はどこぞのメスとつがいを成した事が有りましたでしょうか?」


 何を言っているのだろうかコイツは。


 俺は見た目はおっさんでも、中身は二千歳超えのジジイである。


 揺れるお胸にほんわかする事がたまにあっても、その手の欲は等の昔に枯れている。


「ある訳がない。もうそんな事に興味は無いし、もし何かの間違いで俺に嫁さんが出来たら、真っ先にお前に紹介しているよ」


「ふむ、ならば謝罪しなければ。主よ、私が今朝いつもの様に魔界の空を飛んでいた時、封界に近い草原の花が咲きほこる一角で、一人の幼子を見つけたのです」


 あぁ、聞きたくない、それ以上は聞きたくないと思いながら俺はペルフェクトゥスに話を促す。


「しばらくして眠り始めたため気配を殺して近寄れば、その幼子からは主ととてもよく似た匂いがしたのです。故に主の子だと勘違いした私は転移魔法を放ち、主の近くにその幼子を転移させてしまいました。主よ、迷惑をお掛けした、申し訳ございません。」


「匂いってのがよく分からんが、似た様な匂いのヤツなら他にもいるんじゃあ無いのか?それに今の俺の体臭はかなり臭いぞ」


「体臭ではありません、私が言う匂いとは魂が発するものです。たとえどれだけ体臭がきつくても、主の膝の上でその匂いを嗅ぎながら育ってきた私が、間違える事もありません。竜の谷から主の匂いを辿りこの場に転移したのがその証拠です」


 ペルフェクトゥスさんや、今フードの下はドヤ顔ですね、わかります。


 だけどね、主の俺は今のセリフにドン引きですよ、わかりますか?


 そして俺は答えのわかっている事をあえてたずねる。


「その幼児は黒髪の兎人だったか?」


「はい、そのとおりです」


 少々思うところもあるがそれがマーちゃんである事は間違いない。


「主よ、私は主と同じ匂いを放つ存在を知っているが、もしやそれが産んだ子と言う可能性は無いたでしょうか?」


「アレはアンデットだ、子を産むことは出来ない」


 いや、できるはずが無いと自分に言い聞かせる。


「まぁ、考えても仕方ない。明日、は括り罠の回収があるから無理か。明後日の朝、その子を連れて花畑とやらに行ってみよう。頼めるなペルフェクトゥス」


「承知しました、明後日の朝お迎えにあがります」


「それで最後の伝えたい事は何だ?」


「はい、勇者の封印が壊れかけております、どうすれば良いでしょうか?」


「アレはもともと時間が経てば壊れるように作ってある、予想より少し早いが問題は無いだろう」


 この後、承知しましたと言って転移魔法で帰るペルフェクトゥスを見送ってから、俺は宿への帰路についた。


 俺は魔王などと呼ばれていたが頭が良い方では無い、自分勝手にいきあたりばったりで大して考える事もせずに暴れていただけだ。


 だからこの時も、深く考える事はしなかった。


 この時、もう少し考えていれば、あるいは直ぐに行動していれば、後に後悔する事は無かったと思う。



 ◇◆◇◆◇



 翌朝、空が白みだした頃に目覚めた俺は、中庭にある井戸で水を汲み顔を洗って喉を潤した後、水筒を水で満たし宿を出る。


 大通りの屋台や見世物小屋が準備している風景を横目に見ながら、冒険者ギルドへの道を歩く。


 王都に長く留まり過ぎたかもしれない。


 ここは大都市故に選ばねば仕事はいくらでもある、安い宿や食堂もとても多い。必要な金だけ稼いでのんびり生きていくにはとても良い所だった。


 王都で過ごすのは今年で十年目になる、きりも良いしマーちゃんの件が済んだら出ていこうと思う。


 歩きながら次はどこへ行こうかと考える、『壁』に近くなる西は論外で、寒くなり雪が積もれば仕事がほとんど無くなる北は無理があるか、気持ち的には冬でも暖かい南に行きたいが、あそこはダンジョン都市の利権を巡って少々きな臭い噂が流れている、東へ行くか、海辺の街なら冬でも王都より少しは暖かいだろう。


 そう考えるととたんに海の魚が食べたくなり、朝食を取ってない腹が鳴った。


 そしてギルドに顔を出した後、その辺で軽く食べようと決めた俺は、遠くに見えてきたギルドの建物に向かってわずかに足を速めるのだった。







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