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干物女と好男子 ~それぞれの諸事情~

作者: 鵺木たま

初投稿です。誤字脱字その他もろもろ、何とぞご容赦ください。

<Side 干物女>

干物女、枯女。


私のことだ。紛うことなく私のことだ。むしろ私ほどその称号に値するものはいなかろう。

だってしょうがないじゃんかー。

彼氏やら結婚やら、そもそも男というイキモノにさしたる興味はなく、縁遠かったし。

ご大層な頭やスキルもなく、容姿は平々凡々むしろ下。

そして何よりカツカツの底辺社会人。

このご時世に人生の苦悩をまた一つ背負うってどうよ!?って思ってしまう時点で

考え方からしてもういろいろとアウトな30代だよ。

行かず後家、行き遅れ、好きに呼ぶといいさ。


とはいえ決して悲観的になっているわけではない。

定職にはありつけているから毎月のお給料もあり、

仕事以外の時間はすべてまるっとつるっと自分のもの=好き勝手に楽しめるわけで。

むしろ謳歌中☆ やっほーい☆☆

概ね満足している生活の中で、唯一の不満事項は傍らに愛してやまない猫がいないこと。

くっ・・・せっかくペット可しかも猫可アパート(←ココ重要)を血眼になって探し、

入居を果たしたというのに、私は気付いてしまったのだ。

自分が家にいない間に愛しのにゃんこに何かあったら。

・・・妄想中・・・・更に妄想中・・・・・妄想が過ぎて泣けてきた。

飼えない。とても飼えない。リアルでorzになった案件です。


猫が恋しい。

猫はいいぞう。

あのもふもふ(もふもふじゃない子もかわいい)!

くりくりのお目々(じと目や困り目の子ももちろん素晴らしい)!!

ぴんぴんのおひげ(短くても長くても渦巻いててもオールオッケー)!!!

ぷにぷにの肉球(ピンクに黒、茶、あずき、まだら、猫の数だけどんと来い)!!!!

最高of最高(超真顔)

猫という生物をこの世に生み出してくれた神よありがとう。心からの感謝を。

五体投地の礼でよろしいでせうかマニ車まわしませうか。

でも滝行等の苦行は、行った瞬間に虹の橋を全力疾走で渡りきってしまいそうなので勘弁してください。


「ほんとうに猫が好きだな!」


そんな干物女かつ枯女で少々度が過ぎた猫好きなだけの私が世間様に何をしたというんだ。

担当者出てこいやゴルァ。小一時間問い詰めてやる。


「そんなに嘆かなくても。飼えばいいじゃないか。家政婦かペットシッターを雇ったらどうだ。」

「金持ち思考キタコレ。黙れリア充&マネー充!! 一般庶民にそんな金があるわけなかろうっっ!!!」

「なら、君が家にいたらいいじゃないか。」

「それができたら苦労せんわあぁぁぁぁぁ!!!!」

「はっはっはっ。難しいお年頃だな。」

「年頃は1ミクロンたりとも関係ないわ。それともあれか。私が更年期障害といいたいのか!! 

 ご期待に沿えず申し訳ないが、今の所はなんともないわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 ………う。げほげほげほ」

「まったくありえないことじゃない。外科的治療での疑似的な更年期障害もあるんだし。

 ………興奮して大声出したりするからだぞ?」


困ったような笑みを浮かべて背中をさすってくれるこの男。

ぱっと見は好男子。美形とは違うが顔は整ってるわ、高身長で筋肉もしっかりなイケメン。

ガチムチっぽいところが数多のおねえさま方だけでなく、

おにいさま方にもさぞかし秋波を送られているだろうことは想像に難くない。

なんならそのまま掘られてしまえ。


「ん?何か言ったか?」


怖ぇぇ。さわやかスマイルのはずが怖ぇぇぇ。

最初は全力でスルーしたいと思わせるオーラをまとってたけど、

最近はやけにのんびりしちゃって。

何?悟りでも開いたの??人間やめて光合成でもしてんの???


「何か言ったか??」


こ、怖ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ(Part2)

その一見さわやかな。実質うさんくさい笑顔が怖ぇ事半端ない。


「そんなこと思うのは君くらいだ。よく見てるな~(のほほん)。」

「思考を読むのはやめろください。」


・・・と実にくだらないやりとりばかりしているこの男は、今更ながら一体なんだ。

道を隔てたお隣の、超高級セレブなマンションに住んでいて、

両手に花、綺麗な蝶が常にまわりを飛びかっているウハウハな環境にいるくせに

何故か、事あるごとに人の家にあがりこんでくるのだこの男は。

たまたまかかった病院で診察してもらい、おまけにこのアパートに引っ越したら

お隣のマンションに住んでるから偶然顔合わせることだってあるし、挨拶はしたけどさ。

(世の中は狭い。悪いことはできないと、このトシになったら悟るものなのだ)

あまりの干物っぷりに担当医として心配になったとかほざいているが、勝手にあがりこむな。

まぁ女として興味がないのは明らか、というよりむしろ珍獣の扱いに近いし、

何より作ってくれるゴハンが美味しくて、追い返せないのが色んな意味でとてつもなく辛い。


でもな。

私と猫の愛の巣に無断で立ち入るのは断固拒否!!

猫をお迎えした暁には出禁にしてやるからな!絶対に!!!



***********************************************

<Side 好男子>

できる男 いい男。


自分から言ったことはないが…周りからはそう言われる事が多いな。

男からは羨望と嫉妬、女からは熱と媚の入り混じった視線と共に。

当然、そんな人間ばかりではないが、一定数そんな輩がいるのは事実だ。

幸い、いろいろと…そういろいろと融通が利く立場であり金もある。

肉体的にも恵まれている方なので、前者で手を出してきた者には容赦なく社会的、精神的、物理的にも握りつぶしつつ、

後者はあくまで合意のもと、いただいてきたが。


なぜ自分が彼女に興味を抱いたのか、今もまったくわからない。

通常ならば、眼中にも入らないはずだから。

とはいえ、今まで寄ってきた女性にしてきたような事をしようとも思わない。

劣情を含む恋情とも愛情とも、また友情とも違う。でも恐ろしく心地よい空気。


初めて会ったのは、彼女が体調不良で俺の勤務する病院にかかったときだ。

会社を早退してすぐ病院にきたものの、ロビーで診察を待っている間に

どんどん顔色も悪くなり、倒れる寸前だったらしい。

緊急ということで、夜勤のために出勤したばかりの俺が診察したわけだが。

思えば診察時、カルテの生年月日を二度見したのは初めてだったな・・・。

見た目の幼さに、俺より年上という事実に驚愕した。これは一緒にいた看護師も同様だ。

本人は、担ぎ込まれた処置室でしばらく休んでいたせいか、やけに清々しい表情をしていた。


「念のため、血液検査はしましたが、特に問題はありません。

 疲労と睡眠不足が原因と言っていいでしょう。十分な睡眠をとるように心がけて下さい。」

「うーん…6~7時間は確保してるんですけど。8時間必要ってことですかね…」

「・・・・・そうですか。人それぞれ適正な睡眠時間は違いますからね。

 なるべく自分にあった睡眠時間をとるようにしてください。

 あと、飲酒量はどうですか?毎日召し上がっていますか?」

「一切飲みません」

「即答ですか。・・・・・お差し支えない範囲で結構ですが。

 お仕事をされていますよね?お付き合いなどおありでしょう。どうなさってるんですか?」

「あー。。飲み会とかは途中で抜けるか、もしくは行きません。 

 もともとお酒は飲めないし、翌日の仕事に差し支えますから。」


なんとも色気のない・・・いやいや枯れ果てた・・・・・いやいやいや真面目な社会人の回答である。

こちらも医師という立場上、話を続けてはみたが。聞く限りでは大きな問題点は見当たらない。

だが、ある意味女性としては問題点ばかりといっていい。

あっけらかんと答える内容に頭痛を覚えると共に、他人事ながら心配になった。


曰く。家事は適当。(汚部屋にならない程度に清掃)

曰く。料理は下手でまずい。何より面倒くさい。(臓器が活動するのに必要な栄養素が取れればOK)

曰く。休日は家でまったり(と言えば聞こえがいいがゴロゴロしている)

曰く。酒、たばこは嫌い。(でも酒が呑めないのは人生の半分を損をしていると本気で悔しがる)

曰く。猫がいれば、特に掃除はがんばる。猫のごはんは絶対に最低週半分は手作りする。

結論。猫はすばらしい。

・・・・・・・・・・・・診察をしていたはずだが、どこから湧いて出た猫。

この生活態度も猫がいれば改めるのか。すごいな猫。てか、今すぐ飼えよ猫。


「・・・・・そうですか。では念のため、来週、診察に来てください。」

「ハイ。来週ですね。お騒がせして申し訳ありませんでした。

 ありがとうございました。」


意外にも礼儀正しく一礼し、振り返ることなくしっかりした足取りで診察室を出ていく彼女を

なんともいえない脱力感に苛まれながら見送った。

あの時の診察室に漂う微妙な空気は今も忘れられない。

もっとも看護師は後で笑い転げており、その後の再診では嬉々として迎えていたが。



そうして今、勤め先からの帰宅早々パソコンの前にかじりついて

某SNSのタイムラインを全力で追っている彼女に声をかける。


「こらこら。食事もとらずに猫動画ばかり追ってるんじゃない。いつでも見られるだろう。」

「何をおっしゃるか。あと最低20回は閲覧しないとこの溢れる欲情は抑えられない。ぐふふ。」

「・・・・・そうやって栄養不足と睡眠不足で倒れたのは誰だ。

 サラダだけでも食べなさい。」


彼女のアパートに入り浸りはじめて知ったことだが、彼女は生来、体が丈夫な方ではない。

本人もわかっていてギリギリラインでの無理かつ堕落した生活を送っているので、始末におえない。

見かねて食事を作って食べさせるようになってしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・普通は逆だろう。


まぁ、無事に胃袋を掴んだ事が、無条件に俺を家に入れる理由になっているようだが。

ちなみに果物や野菜を好む彼女にサラダは必須だ。

・・・・・・・・・・・・・・・俺はオカンか。自分で自分にびっくりだよ。


それにしても欲情ってなんだ。

男に対しては干物のくせに、猫にはガンガン攻める肉食女子か。

思わず溜め息がこぼれる。


「それにしてもさー。いつも思ってるんですけど。どうやってウチに入ってるんですか。」


この今更感が君らしいな。

このアパート管理の親会社はうちの実家でな。どうとでもなるんだよ。

わざわざ隣のアパートを猫と同居ができる物件に改築し、セキュリティも万全に整え、

信用できる人間を集めてアパートに住まわせるとか、散々手をまわしたっていうのにな。

・・・それにしても猫好きな者は案外いるものだな。

入居希望者を募ったところ、その倍率が異様に高かった事に正直驚いたものだ。


他人からみたら爽やかな、でも彼女にとっては胡散臭い笑顔で答える。

「ん~~~。人徳と人望の為せる技だな!」

途端に顔をひきつらせて後ずさった彼女にうっそりと微笑んだ。



お読みくださり、ありがとうございました。<(__)>

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