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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と非現実的存在
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壊れた愛と傍観者

私はため息をついた。

弘樹君がお昼になっても学校に来ない。

朝、通学路でいつものように待ち伏せをしていたら、危なく遅刻をしそうになった。

お姉さまが弘樹君について弘樹君が学校に来るようになってから、弘樹君が遅刻をすることはなかったし、無断でお休みをすることもなかった。

もしかしたら体調が悪くてお休みなのかもしれないと、弘樹君のクラスに探りを入れてみたけれどそうではないみたい。本当に本当に「無断」の欠席。

休み時間のたびに様子を見に行ったけれど、全然来る気配はない。


ーどうしたの?体調悪いのかな?みんな心配しているよ。-


ラインをしてみたけれど、返事が来ない。既読にすらならない。こういう時のラインくらいイライラさせられるものはない。なんなんだろう。スマホも見れないくらいに忙しいとか、具合が悪いとか、はたまたスマホを壊したとか?水没させたとか?なんでもいいから既読にならない理由が欲しくて仕方がない。

…不安になる。

むしろ、ラインをしてしまったことによって不安が倍増されていく。

もう一回メッセージを送ろうか悩んだけれど、これで返ってこなかったらこの気持ちをどこにぶつけていいのかわからないのでやめておくことにした。


「…お姉さまの連絡先…知っていたらなぁ…。」


お姉さまなら、弘樹君がこんな風に無断で休んだりする不良行為を見逃したりなんかしないはずだから、これはお姉さまになにかがあった可能性がある。その結論に至った瞬間に居ても立っても居られない思いにかられた。

お姉さまは美人だ。

なんでもできるし、気は効くし…もしかしたら入社した会社でセクハラをされていたり、いやそれよりもストーカー行為にあったりとかしてなにか自由を奪われてしまっているのではないだろうか。

お姉さまのことを気に入った人がお姉さまのことを監視したり、もしかして家に…はいりこんだり…そんなことがあったとしたら弘樹君だって学校に来ている場合ではないし、なによりもお姉さまを守らなくてはならない。


「どうしよう、どうしよう…お姉さま、本当になにかあったんじゃ…。」


この場合なら弘樹君の心配はいらない。

弘樹君のことはお姉さまが必ず守るから。

そうしたらお姉さまのことは誰が守るのかと言われたら…ワタシ、相沢みどりしかいない。

いないんだ。私以上にお姉さまのことを思っている人なんて。いてはいけない。

たとえ会社の人だったとしても、出逢ってまだ一週間弱の人に思いの強さで負けるわけがない。

お姉さまが魅力的過ぎて、人を惑わせてしまうのはよくわかっているから…私がフォローして邪魔なくずは排除しなくちゃならないのに。


ため息をつきながらもう一度とラインを見ると新着のメッセージが入っていた。

飛びつくように開く。


ーしばらく、学校を休みますが元気なのでダイジョウブデス。-


…?

ちょっと文章の意味が分からない。元気なのに学校を休む、無断で?

感が告げる。何かがおかしいと。


ー返事が来て安心したけどなにか、親族の方にご不幸でもあったの?-


弘樹君がスマホを置く前にメッセージが届いていることを祈るしかない。

幸い、返事が来る。


ーそんな感じかな。とても大事な用事ができたんだ。-


ひっかかった骨が取れない。

親族に不幸があったなら学校に連絡くらいするはずだ。親やましてやあのお姉さまがいるのだからそのあたりをぬかるとは思えない。

それならば…とても大事な用事とは何だろう。

わからない。私たち学生にとってなによりも優先すべきである学業を行う場である学校を無断で休むほどの重要な用事。


ー良かったら、相談に乗るよ?-


祈るような思いで、答えを待つと、頭を下げた猫のスタンプが押されて返ってきた。

スタンプを押されてしまうと…これ以上会話を続けることがしにくい…そこを意図してやったのだとしたら策士だ。

私の提案は目の前で棄却されてしまった。


こんなんじゃいけない。ここでめげちゃいけないんだ。

弘樹君の身になにかしらのトラブルが起きていることは確かなのだから、お姉さまだったら絶対に弘樹君のために行動を起こす。私も弘樹君のお姉さまになるんだから…それならば、弘樹君が安心して頼れる存在にならなくてはいけない。


ー本当は、なにかお姉さんにも相談できないことで困っているんじゃないの?それなら、私が力になるよ。-


だって私は、弘樹君のことを…お姉さまくらい大切に思わなくてはならいから。

そうすることで、私はお姉さまに近づくことができるんだから。


「返事…無理かな…。」


無理だとしても、諦めたりはしない。

弘樹君が語りだすまで何度でも何度でも問いかけるつもりだ。

そう決意を新たにしているとスマホが震えた。


ー…それなら、帰りに俺のうちに寄ってくれる?-


続いてメッセージが表示された瞬間、私は息をのんだ。


ー姉ちゃんもいるから。-


その意味は下心はないから安心してほしいということなのか、お姉さんがいるから変なことはできないという意思表示なのか…普通ならそこまで親しくもない、これから親しくしていこうという男の子からいきなり家に誘われたらそう考えるのかもしれない。

でも、私には違う意味が見えて仕方がなかった。


お姉さまになにかをしたのはもしかして…弘樹君なんじゃないのか?

妙な胸騒ぎが私の心を支配して離さなかった。


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