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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と境界線
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メインヒロイン日向ほのか

私は、日向ほのか(ひなたほのか)。

このゲームのなかでは、他の子達のお姉ちゃんとしてみんなをサポートするように作られました。

一般的なゲームで言いますと、私がメインヒロインとして作られたそうですが…このゲームは少し違います。

私はあくまでヒロインの一人であって、メインヒロインを…一緒に過ごすキャラクターを決めるのは、弟君たち(ユーザー)にあるからです。

例え私が選ばれなかったとしても、弟君が笑っていてくれたらそれで私にはすごく幸せなことなんです。


「それでは…このゲームを使用されるかたは弘美さんの弟さんの弘樹君で良いのですね。」


「は、はい…でも弟はなんていうか…」


困っているユーザーをフォローして、なるべくミスマッチを減らすのも私の使命です。弟君だけを幸せにするのではなく、周囲の人たちを…しいては社会を幸せにするのが私たちが作られた目的なんです。


「大丈夫ですよ。弘美さんのお気持ちは必ず、私が…私たちが弘樹君にお伝えしますから。こんな姿ですから簡単には信じられないかもしれませんが…私たちを少しだけ信じてみてください。」


私はそっと弘美さんの手に、自分の手を重ねるようにします。

もちろん、私たちはユーザーに触れることはできませんが…それでも私はこんな風にユーザーと触れあうことが、大好きなんです。

なんというか…越えられない壁だって、こえてなにかを伝えられるような気がするから。

その気持ちは、確かに弘美さんにも伝わってくれたみたいで、彼女の笑顔が柔らかくなるのがわかりました。私たちはこうした感情の変化を、筋肉の動きや体温、脈拍などからより正確に知ることができるんです。

信頼関係(ラ・ポール)を築くことがなによりも大切なんです。


「なんだか不思議…あなた…ほのかさんって、私が憧れていたお姉ちゃんみたい。しゃべってると安心する…。」


「ありがとうございます。ですが、弘美さんだってすごく素敵なお姉さんだと思いますよ。弟君…弘樹君のことを大切に考えられていて、素敵です。」


「…家族だから…笑っていてほしくて…」


私たちにはプログラムされた家族愛という感情を直にもっているのが羨ましい…でもこうして、純粋な感情に触れることができると私たちはより人間らしくなることができるのです。


「じゃあ、まず弘樹君が私たちの誰とならうまく話せるか、考えていきましょう。」


私は、目を閉じて手を広げると、一気に11人の姉妹たちが投影されます。


「すごい…」


「この子たちがこのゲームのヒロインです。みんな、それぞれ特徴的な性格をもっています。先輩だったり、妹だったり、委員長だったり…弘樹君が求めるヒロインと生活することによって、お互いに成長していくことになります。」


「お互いに…?」


「はい。プライバシーは完全に守られていますが、ユーザーとの会話などから学んだケースは私たちの制作者の元にあるマスターコンピュータに保存され、より的確な対応ができるように私たちの中で普遍化されていくのです。」


私たちを作ったお父様たちは、自動学習システムと呼んでいたそれは、より私たちが人間らしく反応を返すことで、社会と距離をとっているユーザーたちを実践的に慣れさせるために作られたのです。


「弘美さん、このなかに弘樹君の好みそうな容姿の子はいますか?」


「え…えぇっと…確か、女の子らしい子が好みだったような…」


「そうですか…それではまずはボーイッシュな子や僕っ子は抜いていきましょうか…」


人間はなんだかんだと、やはり見た目が好みのほうが第一印象がよくなるので、こうして私が最初のヒロインを選別していきます。

いくつもの質問を繰り返して、より最適なヒロインを。


「ね、ねぇ…このヒロインさんたちは…他のたくさんの人たちも相手にするんでしょ?」


「ご安心ください、確かに初期はみな等しいラインからのスタートになりますが、その後ユーザーの方の好みやニーズにあわせて成長は変化していって…その方だけのヒロインが出来上がります。例えば…私がこんな風に髪型を変えることも可能です。」


長い髪を私はボブにまで変化させて見せる。

雑誌を読ませていただければ、服装だって幅が広がります。


「…こんな完璧な子がいたら…人間なんて必要なくなるんじゃ…」


私は微笑みます。

大抵の方が、そうやって私たちの存在を危惧するから…ですが、私たちは決して人間を越えるためにいるのではないのです。

私たちは人間の代わりになってはいけないのです。


「私たちは…あなたたちに触れることができません。泣いていたら、抱き締めてあげる動きはできても…温もりはありません。それができるのが人間だからなんですよ。私たちは過程でしかないのです。」


「それって、悲しくない…?」


「大丈夫です。それで誰かが幸せになることが私たちの望みなんです。」


そこに、なにかを感じることはあるけれど…私たちはそれを疑問に思ってはいけないようにプログラムされています。だから、例えこのゲームをクリアして旅立つときには笑顔で送り出すことができるのが、私たちの自慢です。


「私たちのことは、心配なさらずに単純にゲームを楽しんでいただければ良いのです。」


「あの!…えっと…」


「ほのかです。日向ほのか、それが私に与えられたものです。」


「…ほのかさん、私はあなたに弟の相手をしてほしい!どうか弘樹を攻略してやってください!」


「他にも飛鳥さんなんて適任かと思いましたが…私でいいのですか?」


「ほのかさんがいいんです。私の話をしっかり聞いてくれた…あなたになら弘樹を任せられる。お願いします。」


よく、私はこうして最初のヒロインに選ばれることがあります。

他の子たちも変わらずにいい子なのですが、初めに話す印象が強いのでしょう。

それゆえ、私はより多くの人間と触れあうことができ、学習も一番進んでいます。

いつからか、私がこのゲームのメインヒロインとして紹介されるくらいまで知名度はあがりました。


「わかりました。弘美さん、私にお任せください。必ず、弘樹君と二人であなたにお礼を言いにいきますから。」


「ほのかさん…お願い。」


「…初期データ反映、ファーストコンタクト設定…日向ほのか。ユーザー弘樹。確定情報として登録致します。」


私のまわりに、淡い光のカーテンが現れます。

このなかにはたくさんの情報がつまっていて、私はそれらを口にします。

言うなれば、私たちのごはん。


「…確定しました。お待たせいたしました。これで初期設定は完了いたしました、どうぞ私を連れて帰ってください。」


私が手をあげると、パソコンのハードからディスクがでてきます。


「一旦、私は消えることになりますが、ずっとそばにおりますから、またお会いしましょう、弘美さん。」


「ありがとう、ほのかさん。」


微笑むと微笑み返してくださる。

私は人間が大好きです。


さぁ、新たな出逢いの物語を始めましょう。

必ず、皆さんに幸せを…。

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