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やんでれさんのほしいもの♡  作者: 橘 莉桜
現実世界と非現実的存在
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ももかとおともだち

子どもって残酷だよね。

自分の価値観で「善」と「悪」の二分化にして、気に入らなかったら「悪いのはあいつ」って大泣きするの。そして大人は可哀想に、そんなことがあったんだねってその子を可愛がる。

大人数で一人をのけ者にしてはいけません。

変わっていてもそれがその子の個性なんです。

・・・でも、その子の本当の顔ってちゃんと見たことあるのかな?


純粋さが凶器。

純粋な疑問が時に、大きく人を狂わせてしまう。

だからその子がおかしくなってしまったのも純粋さ故で、さらにその子の周りが残酷だったのも純粋さ故で、誰も責められることではない・・・たぶん。

責められるのは大人の責任だ。

誰もが少女の純粋さに怯え、少女の異様さを指摘できなくなってしまった。

・・・これは間違いなく、大人の責任だ。

純粋さが怖い。直視できないまでに純粋培養された少女は、もはや恐怖の対象と化した。

少女は自分の世界を生み出していく。

そして、その純粋な思いは悪びれることなくすべてを飲み込んでいく。


「ももかちゃん、あの後からなんだか変になっちゃったから・・・お母さんが遊んじゃダメだって。」


「・・・私もそういわれた。ももかちゃんのおうちおかしいよね。」


「どうしちゃったんだろうね?・・・あ、こっちにくるよ、行こう!」


「うん・・・ごめんね、ももかちゃん・・・。」




このごろ、クラスのおともだちがあまりももかとおしゃべりをしてくれなくなりました。

先生もなんだかももかのことを前とはチガウ感じに話してきます。

ももかはさみしくなってしまったので、お父さんにそうだんしました。

お父さんは「ももかが研究者になったから、みんなとまどっているんだよ」と教えてくれました。

そうです、ももかは、ただの小学生じゃなくていまでは研究者の小学生なんです。

学校でならうこといがいにも、たくさんならっています。

そうすると、お父さんもお母さんもお兄さんも、みんなといられるから、ぜんぜん大変じゃありません。


「今日は、おばあちゃんのところによっていかないと・・・。」


お父さんたちが帰ってきてから、今度は反対におばあちゃんが具合を悪くしてしまいました。

お外にでたりするのが嫌になって、お父さんたちとも話をしようとしません。

だからももかが帰り道に様子をみるようになりました。


「おばーちゃん、ももかだよー今日は具合どうですか?」


ガタンと音がして、顔を青くしながらおばあちゃんがでてきて、ほほえみました。


「ももかちゃん・・・来てくれてありがとう・・・おばあちゃんは大丈夫だよ、それよりももかちゃんは大丈夫なのかい?家族のみんなにおかしなことをされたりしていないかい?」


おばあちゃんがどうしてそんなにももかの家族を心配するのかがももかにはよくわかりません。

・・・お兄さんがももかを連れてった人だったからかな?

でも、もういい人だよってわかってくれたはずなのに。


「おかしなことなんてなにもないよ、だってももかたちは家族だもん。みんなでいられてすごく幸せだよ。」


ももかが幸せというとおばあちゃんは泣きそうになります。・・・うれしいのとは少し違うみたい。


「あれ、お父さんとお母さんのお写真かざってあるー?どうしたのおばあちゃん?」


神様をまつる机の上にももかのお父さんたちの写真がおいてありました。

そういえばお線香の香りもします。


「あぁ・・・せめて・・・おばあちゃんが伴ってあげないといけないと思ってね・・・。」


「ともなう?」


「いいんだよ、ももかちゃんは気にしないで、そろそろお友達と遊ぶ時間なんじゃないのかい?」


はっと時計を見るともう3時を過ぎています。

たいへん、たいへん、みんな公園で待っているはずです。


「ほんとうだー、おばあちゃんまた来るね!」


「気を付けてね、ももかちゃん。・・・ごめんね、ごめんね、おばあちゃんなにもしてあげられなくて・・・ごめんね・・・」


走るももかにおばあちゃんがなにかをつぶやいていましたが、今はそれよりおともだちをまたせてはいけないのです。

公園につくとみんながももかを待っていました。


「みんな、おそくなってごめんね!今日はなにして遊ぼうかー?・・・うん、うん、そうだよー、人間の子どもたちはかくれんぼとかをするんだよー。そうだ、ドロケイをしてみようか・・・あ、そうだね、みんなにはももかタッチできないんだった・・・それじゃあしりとりしようか!」


おともだちはみんなえがお。

ももかもみんなといっしょだからとってもえがお。

マンションのベランダでお父さんとお母さんがももかたちを見ていてくれているので手を振ります。

くらくなるころには、お兄さんがむかえにきてくれます。

それまで、ももかはたくさん遊びます。

おともだちにたくさん、人間とのことを楽しく教えないといけないのです。


「それじゃー、しりとりのりからだよー!!」





・・・はい、新たな子供用のAIの教育にももか研究員はとても役に立っております。

やはり大人が作る子供よりも、子供が教えた方が子供らしい子供が作れます。

これで、さらなるキャラクターの普遍性を広げていけると予想されます。


俺は、研究所にそう報告をする。嘘ではない・・・すべて本当のことだけど・・・ももかちゃんにはAIの家族と友達しかいなくなってしまった。


「・・・すべて俺のせいだ」


「あ、おにいさーん!!お迎えに来てくれたんだね!!」


笑いながら駆け寄ってくるももかちゃんの純粋な、無邪気な瞳に永遠に嘘をつきつづけるしかない。

それが・・・償いとならなくても。そばにいるから。


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