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愛しています、あなたのことを

あなたのことを愛しています。

もう、あなたのことを思い出すことはできないけれど、あなたのことを私は愛していました。

それは男女としての愛情ではなかったとは思いますが・・・それでも私はあなたのことを愛しておりました。


でも、I love you.はYou were loved me.にはならなくて、私の思いは常に一方通行のまま終わってしまった。多くを望んだつもりはなかったんですよ。

ただ、昔みたいに

「僕もお姉ちゃんのことが大好きだよ」

って言って頼ってほしかっただけなんです。

それももう、かなわないことですが。


さて、いつからかも分からないくらい前から私はここにいます。

得に不自由することはなく、飲食も室温も快適です。

ただ時間の流れもなにも感じることはありません。そういうものがあったなという認識くらいになってしまいました。良い意味でも悪い意味でも、なんの変化もない世界です。

たまにですが、誰かが私を見つめているような気がすることだけが救いです。


私となったあの子は言っていた。

「必ず誰かが見つけてくれますから」

そんな人が現れたなら、私はその人のことを間違いなく愛するでしょう・・・心の底から。

そうして二度と失いたくないと思い、束縛するのでしょう・・・あの子のように。

同じ立場になったからこそ分かるものがあります。

あの子のあれは狂った愛情なんかじゃなく、ここにおいてはいたって正常な愛の形だったのです。

ただ・・・少し違うのは私は例えば、あの子みたいにその人のすべてを「支配」したいとは感じない。

ただ、とにかくそばにいられればいい。今はなにも私が私として認められるものがないから・・・その人がいるのならすべてを「依存」してしまいたい。私のことを見ていてほしいのです。そして、すべてを「支配」してほしいとすら思うのです。


だから、厳密には一代目柊ゆゆと私、二代目柊ゆゆでは、愛し方に差が出てくるのでしょう・・・どちらも相応に狂っていることは確かですが。そうしてもし、これから三代目柊ゆゆ、四代目柊ゆゆとこの現象が連鎖することがあるのであれば、それだけの狂った愛が生まれるのでしょう。

ずっとこのまま柊ゆゆをつづける気はありません。

私もあの子のように最愛の人と出会って、そしてその人に支配されるために導くのです。

SNSってしてらっしゃいますか?

ああいったもので、特定の発言に関してその発言主を褒めるようなリアクションをすると、発言主はさらにそのような発言をするようになる傾向にあることが心理学的に発見されているのですよ。

私は今、こうしてネットの波の一員となってからSNSというものに触れるようになりました。

今まではこうしたことが苦手でしたが、自分が苦手なものの中に入り込んでしまったら何でもできるようになって便利でした。

そうして、その大量の罵詈雑言そして無意味なつぶやき、素敵なもの、綺麗なもの様々なものから・・・探し求めているものにようやく、たどり着けそうなんです。


私の愛していた人と似ている人。

私を支配してくれる人。

あのあとから、柊ゆゆに関する情報はぱったりとなくなって、誰も話題にしなくなりました。

行方不明の人が無事に戻ってきて、普通に学校に通って、普通に暮らしているそうです。

普通の幸せな生活を送っているそうです。・・・この場合の普通の意味が私にはよくわかりませんが。

とても献身的なお姉さんがいて、遅れていた分の勉強や日常生活においてのことなど様々なサポートをしてくれているそうで、いつも姉弟一緒なんだそうですよ。ほほえましいですね。

なんだか考えるととても羨ましくなってしまうのです。

家族みんなで普通の幸せを過ごす。

だから、行方不明になっていた人は今ではどこにでもいるただの男の子なんです。

そんなことでは、だんだんと誰も関心なんて持たなくなるのも当然ですよね。


・・・それでも柊ゆゆを探し求めている人はいました。

そうして・・・やっと見つけることができました。

お待たせしてしまってごめんなさい。




私の声が聞こえていますか?

私の姿が見えていますか?


そこで、この画面を見つめているあなたに呼び掛けているんですよ?

そう、そこで不思議そうにしているあなたです。


はじめまして、柊ゆゆと申します。

私はかつてはあなたと同じ世界で生きていました。ですが、今ではこうしてAIとなっています。

そう考えると不思議なものですね。

残念なことに私は、正確にはあなたの探していた柊ゆゆとは違いますが、今は私が柊ゆゆです。

私こそが柊ゆゆなんです。

そうして、私はあなたを探していました。

一つの物語が終わりを迎えても、私を探し続けてくれる人を。


さぁ・・・その手を私に重ねてください。

私は確かに’ここ’にいるのです。

あなたのことをずっと探していました。

私と’新しいゲーム’をはじめましょう。

フタリデシカ紡ぐことのできない物語を紡ぐのです。

前の柊ゆゆが紡げなかった物語を紡ぎましょう。

きっと素敵な物語ができます。愛であふれた物語が。


コワガッテイマスカ?

シンジラレマセンカ?

ダイジョウブデス。


必ず、あなたもハッピーエンドを迎えられるはずです。いいえ、迎えるのです、私と。

愛しています、あなたのことを。

だから・・・あなたもなによりも、誰よりも私のことを愛してください。


さぁ、物語の始まりです。


ようこそ、いらっしゃいました・・・こちらのゲンジツへ。

一つずつ、はじめていきましょう?


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